【軍事】米宇宙軍とSpaceX 軌道データを交換 スターリンクで宇宙監視を強化

2026/09/28
更新: 2026/09/28

アメリカ宇宙軍とSpaceXが、軌道上の物体に関するデータを交換する協定を結んだ。SpaceXは高精度の軌道データを利用し、スターリンク衛星を活用した「Stargaze」の観測データを米側に提供する。衛星や宇宙ごみの衝突回避に役立つ一方、民間の衛星網を安全保障にどう生かすかも焦点となる。

大国間の宇宙をめぐる競争でも、軌道上の情報を早く正確に得ることが、いっそう重要になっている。

米宇宙軍とSpaceX、軌道データ交換で合意

2026年9月23日、アメリカ宇宙軍の当局者は、SpaceXが宇宙軍の統合商業運用センター(JCO)と協定を結んだことを明らかにした。

協定により、SpaceXはアメリカ宇宙軍司令部(SPACECOM)が保有する「高精度カタログ」(HAC)のデータを利用できるようになる。これは、軌道上にある物体の位置や動きに関する詳しいデータである。一方、SpaceXは、自社の宇宙追跡システム「Stargaze」で得た観測データをJCOに提供する。

政府から提供されるデータは、現時点ではSpaceXの社内でしか利用できない。商業的な利益を得るために使うことも認められていない。それでも、SpaceXの衛星による観測データと政府の高精度な軌道データを直接交換するのは初めてであり、両者の連携が進むことになる。

これに先立つ2026年8月28日、宇宙産業の調査会社Quilty Spaceは、SpaceXが「Space-WATCH」計画に関連する技術開発で、政府から総額約1億770万ドル(約170億円)の契約を獲得したと分析した。

Space-WATCHは、アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)が2023年に始めた計画である。比較的安価なセンサーを軌道上の多くの場所に配置し、その観測データを自動でまとめる。地球に近い軌道にある物体を常時追跡し、異常が起きた場合には運用担当者に知らせることを目指している。

スターリンクの「Stargaze」は何を観測するのか

今回の協定は、アメリカ軍が民間の宇宙技術をより重視する動きの一つである。

アメリカ軍は、政府の設備やデータだけでは、現在の宇宙での任務に十分対応できないとみている。このため、多数の衛星を運用する民間企業の技術を軍事分野に取り込もうとしている。大規模なスターリンク衛星網を持つSpaceXは、その協力相手となる。

Stargazeは、スターリンク衛星を使って宇宙空間の状況を調べるシステムである。衛星に搭載された数万台の「スタートラッカー」を利用し、近くを通る物体を光で捉える。スタートラッカーは、本来、星の位置を手がかりに衛星の向きを調べる装置である。

Stargazeは、物体が衛星の近くを通過する際の観測情報を、1日3000万件以上処理する。現時点では、公開されているレーダーの一覧に載るすべての物体を追跡できるわけではない。ただ、地上のレーダーより頻繁に観測できるという。

SpaceXによると、同じ物体を繰り返し撮影できることが、Stargazeの強みの一つである。観測を重ねれば、軌道の変化を捉えやすくなる。ほかの衛星が不審な動きをした場合、アメリカ軍が早く気づく助けにもなる。こうした早期の発見は、自国の衛星を守るための判断に役立つ。

Stargazeは、DARPAのSpace-WATCH計画とも技術面で関わりが深い。Space-WATCHは、民間や政府の衛星に取り付けた多数のセンサーで物体を常時追跡し、観測データを自動でまとめる構想である。SpaceXは、スターリンク衛星のスタートラッカーを使うStargazeを、この構想に沿ったシステムとして発展させている。

民間での主な用途は、衛星同士の衝突を防ぎ、宇宙での活動の安全を守ることである。地球に近い軌道では混雑が進んでいる。使い終えたロケットや運用を終えた衛星、衝突で生じた破片も増え続けている。破片は秒速数キロで飛び交い、小さなものでも宇宙機を傷つけるおそれがある。従来の地上レーダーでは、一定の大きさより小さい物体を捉えることは難しい。

衛星と宇宙ごみの衝突回避に期待

Stargazeは、広い範囲を頻繁に観測できる。軌道データを更新し続けることで、物体同士が危険な距離まで近づく可能性を予測し、衝突が連鎖する事態を防ぐための情報を提供できる。その用途は、衝突の警報だけではない。アメリカの安全保障システムと連携すれば、軍事面でも重要性が増すとみられる。

対衛星兵器や、軌道上でほかの衛星の活動を妨げる装置、極超音速兵器などの開発が進んでいる。アメリカ国防総省は、地球に近い軌道を昼夜を問わず広く監視できる情報網を必要としている。SpaceXの衛星網は、そのために利用できる既存の設備である。

SpaceXは、観測したデータをまとめ、軌道上の状況を判断するための情報として提供する仕組みを整えつつある。Stargazeは衛星のスタートラッカーから観測データを集める。また、宇宙軍とのデータ交換によって、SpaceXはより精度の高い軌道情報を得られる。

宇宙軍とSpaceXの協力は、別の事業にも広がっている。2026年5月、宇宙軍はSpaceXに対し、総額約64億5000万ドル(約1兆176億円)の契約2件を相次いで発注した。このうち約41億6000万ドル(約6563億円)は、宇宙から航空機などの移動目標を見つけ、追跡する衛星システム「宇宙配備型航空移動目標指示」(SB-AMTI)計画に充てられる。残る約22億9000万ドル(約3613億円)は、各地の軍事センサーや兵器システムを、安全で高速な衛星通信で結ぶ「宇宙データネットワークの基幹網」(SDN Backbone)の整備に使われる。

こうした動きからは、アメリカが民間の衛星網を、軍の観測や情報の共有に生かそうとしていることがうかがえる。

宇宙監視の軍事利用と民間企業への依存

Stargazeによる追跡をミサイル防衛用の衛星と組み合わせれば、地球に近い軌道を広く監視する仕組みにつながる可能性がある。宇宙ごみとの衝突を避けるだけでなく、他国の衛星が目立たない形で軌道を変えた場合に、気づきやすくなるとみられる。ほかのシステムとの連携によって、極超音速兵器の飛行経路の追跡にも役立つことが期待されている。

アメリカ軍は、Stargazeを使うことで、他国の通信衛星や偵察衛星の軌道をより早く把握できるようになるとみられる。得られた情報は、自国の衛星を守り、宇宙での活動を続けるために役立つ。相手側の衛星がどのような情報を提供できるかを調べ、必要な対応を判断する材料にもなる。

こうした能力は、インド太平洋地域で特に重要になる。相手の接近や行動を妨げる能力が強まるなか、各国・地域は衛星を使った観測網の整備を急いでいる。軍事的な対立が激しくなれば、宇宙から得た情報を安定して素早く届けることが、幅広い作戦で必要となる。

例えば、海上を移動する目標の追跡、有人機と無人機の連携、同盟国の部隊間での情報や目標データの共有などである。宇宙からの観測と通信は、陸・海・空にまたがる作戦を支えるものになりつつある。

Space-WATCH計画からは、国防高等研究計画局が従来の軍事調達の方法に限らず、民間企業と協力して必要な技術を取り入れようとしていることも分かる。宇宙技術は急速に進歩している。国防総省には、必要な技術を得る方法を増やし、実用化が進んだ民間技術を軍の需要に結びつけることが求められている。

一方で、民間技術への依存が進めば、企業の事業上の利益と国の戦略は強く結びつく。両者の利益が食い違った場合にどう調整するかは、政府にとって課題となる。

高精度データの利用制限と競争上の課題

Stargazeをアメリカ軍のシステムと連携させれば、将来、宇宙で主導権を握るうえで優位につながる可能性がある。重要なのは、すでに多数の衛星が運用されているスターリンクを、宇宙を監視するためにも使える点である。

広い範囲を頻繁に観測し、情報を速やかに届けられれば、異常の発見から対応の判断までにかかる時間を短くできる。将来の宇宙防衛や、陸・海・空・宇宙の部隊が連携する作戦でも、状況を把握するための情報を提供できる。

将来、太平洋地域で大規模な軍事衝突が起きた場合にも、こうした能力は大きな意味を持つ。アメリカの競争相手が同じような技術や別の方法を使っても、この分野でのアメリカの優位を覆すには長い時間がかかるとの見方もある。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
夏洛山
大紀元時報(中国語)記者。長い従軍経験があり、軍事番組「Military Focus」を主宰する。