謝天奇コラム

核実験のターゲット、実は習近平政権? 北朝鮮を操る勢力とは

2017/04/24 21:35

 北朝鮮が6回目の核実験に踏み切るのではないかと予測され、国際社会に緊張が走っている。だが北朝鮮情勢を分析する時、中国との関係を考慮せずに北朝鮮の単独行動として理解するならば、それは大きな誤りだ。

中国と北朝鮮の「演出」

 地政上において、中国は北朝鮮と密接な協力関係を築いてきた。具体的には、中国は北朝鮮を軍事的・経済的に支援する代わりに、中国国内で何か不都合な問題が生じた時に、北朝鮮に「緊迫した情勢」を演出させていた。北朝鮮でミサイル発射実験など緊迫した状況を作り出せば、中国は例えば臓器狩りといった人権問題に対する国際社会からの注目や非難をそらすことができるからだ。

 中国は、北朝鮮問題において国際社会で常に「調停者」「パイプ役」としての役割を担ってきたように見えるが、それは表向きのこと。実は北朝鮮問題とは、中国と北朝鮮の双方で立てたシナリオに沿って行われてきた「演出」だったというのが正しい。言い換えれば、北朝鮮の「有事」は、常に中国情勢とリンクしている。

金一族の独裁政権 擁護してきたのは中国の江沢民派 

 北朝鮮で金政権が長期にわたり存続してこられたのは、長年、中国共産党政権とこうした協力体制を取り、中国から全面的な庇護を受けてきたからだ。江沢民氏はその在任中に北朝鮮支援を積極的に進めたため、ここ数十年間、金政権は実質的に江沢民派のコントロール下に置かれている。実際に、江派の周永康氏、曽慶紅氏、張徳江氏、劉雲山氏が金ファミリーと密接な関係を築き、北朝鮮に対し、核開発を含む軍事支援も密かに行ってきたことが、これまでの報道から明らかになっている。

 だが、習近平国家主席が中国の最高指導者に就任して以来、中国と北朝鮮の関係が冷え込む一方だ。これも、北朝鮮を支援してきたのが江沢民派だったこと、そして江沢民派と習政権が対立していることを考えれば自明のことだ。習近平国家主席は明らかに、一貫して北朝鮮に対し距離を置いている。習主席は歴代の指導者と違い、主席に就任してから5年が過ぎても、未だに金正恩氏と会談すら行っていない。これは両国間の歴史を考えると、極めて異常なことだ。

 北朝鮮が過去に行った5回の核実験は、いずれも中国高層にある政治闘争が激化したタイミングで行われており、その陰には、常に臓器狩りなど一連の法輪功弾圧問題があった。つまり、千万単位の人の殺りくに係わる世紀の冤罪である法輪功弾圧の責任追及から逃れるために、弾圧を主導する江派勢力と弾圧に消極的な勢力(胡錦涛・習近平陣営)との生きるか死ぬかのし烈な攻防が繰り広げられているのだ。

北朝鮮の核実験 ターゲットは習近平政権か

 こうした中で行われる北朝鮮の核実験とは、どのような意味を持っているのだろうか。

 実は、今の情勢においては、北朝鮮の核実験は、米国や日韓などの同盟国、西側諸国ではなく、中国の現政権をターゲットにしている。

2016年9月、北朝鮮が核実験を行ったことについて伝える韓国メディア(GettyImages)

 考えても見てほしい。前述したとおり、金正恩政権は江沢民派の傀儡だ。つまり、北朝鮮は習政権と対立する立場にある。そして北朝鮮の核実験場は中国との国境からわずか100キロメートルの場所に位置している。

 北朝鮮の核の脅威にもっともさらされているのは、韓国でも、日本でも、アメリカでもなく、すぐ隣の中国なのだ。核ミサイルが実際に発射されなくとも、例えば北朝鮮の核実験場で何らかの「事故」が起きた場合、放射能で汚染されるのは中国東北部だ。

 こうしたことから考えると、今の北朝鮮の核実験が、習政権に対する江派からの報復であり、脅しであることは明らかだ。「我々はいつでも北朝鮮の核を切り札に用いることができる」という江派の意思表示だ。

 以下で、中国国内で起きた胡習vs江の政治闘争と、北朝鮮が行った核実験を時系列で説明する。胡習VS江の政治闘争と、北朝鮮の核実験がリンクしていることが分かるはずだ。

第1回から第5回実験までの北核実験と中国国内事情

2006年10月、北朝鮮がはじめて核実験を行った。写真は中朝国境で入国する者の手荷物検査をする北朝鮮警備兵(Getty Images)
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