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(大紀元)

テレサ・テン 「もっとも影響力のある文化人」と「天安門事件」

作家・廖真佩

 【大紀元日本12月22日】

 今年8月、中国大陸のメジャーサイト「中国ネット」は共産党政権が中国を支配して60周年を機に、「もっとも影響力のある文化人」というネット投票を主催した。しかし、皮肉なことに、共産党政権が一番手を焼いてきた歌手、テレサ・テンが850万票、全票数の1/3の得票で、トップの座に輝いた。

 中国大陸の人が初めてテレサ・テン(中国名:鄧麗君)を知ったのは80年代初頭、「何日君再来」という歌が爆発的なブームとなったのがきっかけだった。ほどなくして、当局は台湾の歌手である彼女の歌が反政府感情を煽るのではないかと恐れ、彼女の歌を不健全な歌と位置づけ、販売ならびに所持を禁止した。しかし、それでも、人々は当時の大陸の「お堅い」歌に疲れ、彼女の人間味あふれる歌に癒しを求め、こっそり聞き続けた。

 時がたち、1987年、大陸と台湾の関係が改善され、テレサ・テンの歌も巷でたくさん聞こえるようになったが、それも長くは続かなかった。1989年6月4日、中国で民主化を求める学生達に、政府が武力弾圧・虐殺を繰り広げ、いわゆる「天安門事件」が起きた。テレサ・テンは香港で行われた弾圧抗議集会で、「民主万歳」と書いた鉢巻き姿で、「私の家は山の向こう」という歌を歌い、自ら大陸の学生達への支持と民主化実現を訴えた。

 【天安門事件】

 

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【「私の家は山の向こう」を歌うテレサ・テン】
 


 事件直後、日本でのテレビ出演を予定していたテレサは急遽日本行きを取りやめ、香港に残ることを選んだ。当時日本テレビの生放送で、香港からの中継が放送され、その時テレサは「日本にとても行きたかったのですが、ちょうど今の中国はこのような状況だから、香港にいたいのです」と話し、涙を堪えながら「香港」という歌を悲しみと信念を込めて歌いきった。

 【テレサ・テン 香港中継】


 作家の有田芳生氏が2007年に、天安門事件の時にテレサが歌った歌の題名にちなんで、『私の家は山の向こうーテレサ・テン十年目の真実』という本を世に出した。彼女の生涯を丁寧に書いたこの本には、天安門事件後のテレサの心境についてのインタビューも記された。「事件後はすぐにでもコンサートなどの形で学生達を応援し、大陸の人たちを助けたかったのですが、たくさんの方々が亡くなったので、逆にコンサートを自粛したほうがいいのではないか」などと当時の迷いを打ち明けた。さらに、両親の生まれ故郷、大陸への思い、その愛する土地を支配する共産党政権への失望と絶望についても語った。

 テレサはその後も毎年、天安門事件を記念する行事に参加した。天安門事件前、大陸でのコンサートを熱望していたのも、事件と早すぎる死で、実現することはなかった。

 「もっとも影響力のある文化人」投票で、テレサ・テンに投票した人々は、彼女の歌に投票したのか、彼女の人柄に投票したのか、彼女の信念に投票したのか、彼女の民主を愛する精神に賛同し、投票で自分の意志を表したかったのかは、このクリックされただけの数字ではわからない。しかし、天国にいるテレサは、きっと自分の歌だけでなく、天安門事件も、当時の学生の精神も忘れるなと、彼女のあの澄んだ声で語りかけているに違いない。

(翻訳編集・心明)


 (09/12/22 05:00)  





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