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スエズ運河を航行する大型貨物船(AFP/Getty Images)

巨大コンテナ船 深刻化する排気汚染

 【大紀元日本12月14日】世界中で温暖化防止対策が叫ばれる中、「巨大コンテナ船による深刻な汚染が無視されている」と英科学誌「ニュー・サイエンティスト」の環境コンサルタント、フレッド・ピアス氏(Fred Pearce)は指摘する。

 英デーリー・メール(電子版)の記事によると、船舶の巨大化に伴い、そこから排出される汚染物質は、ますます深刻化している。世界最大のコンテナ船16隻が排出する「硫黄汚染」は、世界中の自動車が排出する汚染物質の量に等しいという。大型船舶のエンジンは巨大で、燃料の使用量は小型発電所並み。発電所や自動車と違い、船舶エンジンが使用するのは安価で最も汚れた硫黄含有率の高い重油だ。製油工場で軽油を取り出した後の残留物で、この廃油を陸地で使用することは許可されていない。

 船舶は、硫黄酸化物のほかに二酸化炭素も多く排出する。ピアス氏によると、船舶が排出する黒煙や航路に残る煙霧のために、英国だけでも数千人が呼吸器系の疾患で死亡している。

 現在、およそ10万隻の船が海洋上に存在すると考えられており、大量の商品がアジアの工業国から欧州や北米に運ばれている。今年、中国で作られた大量のクリスマス・プレゼントも、大型船に載ってヨーロッパに到着している。極東から物資を運ぶのは超大型コンテナ船エマ・マースクとその姉妹船の7隻で、イブリン、ユーゲン、エステル、エバ、エリー、エディス、エレオノーラ。これらの船はすべて全長397・77mにおよび、1万4千個のコンテナを積載して、中国から欧州へと航行する。

 コンテナ船が使用する重油は「船用燃料」と称され、燃焼することで有害化学物質である硫黄と煙霧を発生する。排気汚染と、呼吸器系疾患、炎症、ガン、心臓病の関連性は確認されており、デラウェア大学で船舶排気研究を専門とするジェームス・コルベット氏の算出によると、死亡者数は年間約6万4千人に上り、このうちの2万7千人が欧州の居住者だ。 英国は被害最大国に数えられ、年間約2千人の死因が煙霧汚染だ。コルベット氏は2012年には、死亡者数は、全世界で毎年8万7千人になると予測している。今後10年で100万人以上が死亡する計算になる。

 国連国際海事機関(IMO)の責任

 船舶による汚染の責任の一部は、ロンドンに本部を置く「国連国際海事機関」(IMO)にあるとピアス氏は指摘する。数十年来、同機関は船舶汚染に関する数多くの呼びかけを無視してきたという。発電所や貨物車両による重油の燃焼は早期に不法になっているが、船舶による汚染は「許可」という状態が続いてきた。31年前からIMOは169カ国政府の同意のもとで、バンカー重油を燃料とする政策を推進してきた。ロッテルダムにあるDKシッピング・カンパニーのアイド・モーラー氏によれば、この燃料油は「廃油で、アスファルトのようなもの」。最も安価だが最も汚れており、硫黄含有量も非常に高い。IMOが許可する船舶燃料の硫黄含有量は4・5%に達しているが、これはEUが自動車燃料に課した硫黄含有率上限の4千500倍以上に当たる。船舶燃料が放出する硫黄を含んだ微粒子は非常に小さく、肺の深部にまで入り込む。

 IMOの緩い規制のため、巨大コンテナ船が毎年排出する硫黄は5千トンにまで上っている。一般的なタイプの自動車が排出する量の5千万台分に相当する。世界には8億台の車両が走っているが、これは16隻の巨大コンテナ船が排出する硫黄と同レベルという計算になる。

 1年前、IMOはようやく重い腰を上げ「2012年までに、船舶燃料の硫黄含有量を3・5%以下にする」という方針を打ち出した。 最終的に0・5%にまで下げるとした。実践できれば、死亡数は半減するだろうとコルベット氏は話している。

 毎年10億トン近く排出される二酸化炭素

 煙霧や硫黄以外にも、巨大コンテナ船は毎年100億トン近くの二酸化炭素を排出している。船舶は飛行機と同様に地球温暖化の原因の一つだが、環境保護の活動家はあまり注目していない。船舶と航空業界は、京都議定書の「二酸化炭素排出量の削減」を免れている。航空業界の方は、7日に開かれたコペンハーゲン会議の前に、2050年までに二酸化炭素を50%削減することを承諾している。

 一方、IMOは7月の会議で、英国船舶会議所が提案したCO2削減のための排出量取引を却下。「登録している船会社のうち、3分の2は貧困な開発途上国」という理由からだったが、 安全性をはかることや水夫の給与体系などの厳格な規制から逃れるにすぎない。

 IMOを構成する各国政府は、開発途上国の船舶はCO2排出を削減すべきではないと主張する。IMOのエフシミオス・E・ミトロポウロス事務局長は「我々は一貫して、積極的に環境の保護・保全に取り組んでいる」と主張している。ただ、無制限の状態が続けば、世界の海上運輸のCO2排出量は2050年までに3倍増となる。

 同紙は「巨大コンテナ船は海の厄介者で、大陸ではとっくに葬られた過去の汚染基準で運航している。地球温暖化を作り出し、地球の住民を死に至らしめてきた」と締めくくっている。

(翻訳編集・坂本)


 (09/12/14 07:38)  





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