THE EPOCH TIMES

高速鉄道事故・新疆襲撃事件 事件多発の7月 「和諧社会」終焉告げる

2011年08月02日 15時54分
 【大紀元日本8月2日】中国共産党の結党90周年で祝賀ムード満開のはずだった7月だが、一変して災難続きの月となった。新疆ウイグル自治区で起きた連続衝突事件、相次ぐ陸橋崩落事故、そして高速鉄道事故。事故現場には無残な姿となった車体に、泥にまみれた「和諧」の文字がくっきりと浮かぶ。どれも胡錦濤国家主席が提唱した「和諧社会」(調和のとれた社会)の崩壊を象徴した出来事だった。

 世界一にこだわった発展モデルの崩壊

 中国のマイクロブログ「微博」を利用するユーザー達はこのように嘆いた。「発展すればするほど、死との距離が縮まっていく」

 「雷が落ちると列車が追突する。車が通過すると橋が崩落する。粉ミルクを飲むと腎結石になる。すべての人が当事者になりうる。今の中国はまさに雷雨の中を突っ走る列車のようだ。私たちは観客ではなく、皆その乗客だ」

 「これは国の脱線、政府の脱線であり、腐朽した制度の脱線だ。全国民はこの地獄行きの列車に連れまわされている」

 胡錦濤執政のこの8年間、中国はまさに経済の高速列車のように突っ走っている。GDPは世界2位に躍り出た。5年足らずで世界最大の高速鉄道網を構築し、スピードも世界一を目指した。世界で最も高いビル上位10棟のうち、中国はその4つを占めている。毛沢東時代から始まった「大躍進」は、今も続いている。

 その理由について、中国在住のジャーナリスト高喩氏はラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)の取材に対して、「執政の合法性を得るため」としている。経済が発展すれば国民は黙るだろう、と指導部は高を括っている。

 一方、加速すればするほど社会のひずみが拡大し、昨年の抗議事件は全国で18万件に上ると政府は発表した。社会の安定維持の予算は軍事費を上回る。チベット、新疆に加えて、動乱がほとんどなかった内モンゴル自治区でも5月に当局の過度な石炭採掘をめぐって反政府デモが起きた。「巨大な火薬庫」と化した中国だが、指導部は国民の怒りを横目に、疾走する列車の速度に酔いしれている。

 しかし、今回の高速鉄道の事故はその化けの皮を剥いだ。急速な発展は国民の命を踏み台に勝ち取ったものだと高氏は非難した。

 「世界一にこだわり続けてきた中国。その終着点は断崖絶壁だ」とある微博ユーザーが断じた。

 一つにまとまった国民の気持ち

 今回の事故への対応をめぐって、全国民の批判を招くとは、政府指導部は思いもよらなかった。市民らがツイッターを通じて怒号を上げているほか、厳しい報道規制の敷かれたメディア、そして政府メディアの牙城である国営中央テレビも反旗を翻し、その怒りの矛先はいずれも政府に向けられている。

 中国国営中央テレビ(CCTV)のニュース番組「24時間」のディレクター王青雷氏は26日の放送で、「中国よ、発展の速度を落とそう。早すぎて人間の心が置き去りにされてしまった」などと、中国の現状を批判したコメントを述べたため、停職処分を受けた。

 その後、王氏は微博で「中国に強権に屈しない記者が一人でもいれば、中国にはまだ魂がある。中国にはそんな人がたくさんいる!」と気骨ある発言で記者たちを勇気付けたという。

 一般市民やジャーナリストのほか、これまで政府批判に及び腰だった芸能人も声を上げた。

 映画「ラストコーション」で一躍注目の存在となった女優・湯唯は自身の微博で、「強い国は銃の所持を自由にしても転覆されない。弱い国では包丁の購入も実名制。人間性のある政府は死者の名前を読み上げ哀悼の意をささげる。冷たい政府なら、死者数も国家機密。自由のある国では、記者は総理大臣を追い詰める。禁錮の体制では、政府幹部を信じるかどうかは貴方次第だが、いずれにしろ私は信じたと記者に告げる」などの政府批判を展開した。

 中国を代表する俳優・葛優氏も微博で、「市民が死んでも謝罪はない。ちょっとした幹部が死んだだけで盛大な葬式が行われる。市民が死んでも冷たい数字で一括りにされる。ちょっとした幹部が死んだだけで、功績が長々と称えられる。市民が死んでも徐々に忘れられるしかない」と怒りをあらわにした。

 二人の微博ページは、その後いずれもアクセス不能となった。

 政府批判が過熱する中、7月29日に中国宣伝部はメディアに対して報道規制を通達した。一部の新聞社は、一面に予定していた鉄道事故の記事のところに天気予報を掲載したり、空白のままにしたりなど、政府に無言の抗議を突きつけた。

 政府の報道規制に対して、広東省の人気大衆紙・南方都市報は7月31日、「こうした悲惨な事故と鉄道部の処理に対して思いつく言葉は――『くそったれ』しかない」と罵倒する記事を掲載した。

 インターネットでは、南方都市報を支持する書き込みが目立ち、「不屈の精神を持つ記者がいることを証明した」と、称賛の声が相次いでいる。

 今、中国では全国民の怒りが渦巻いている。北京の人気紙・新京報が掲載する予定だった記事のタイトル「我々全員が生存者だ」に見られるように、国民の気持ちがようやく一つにまとまった。

 伝家の宝刀が再び登場か

 中国指導部は国民のこの怒りをどう鎮めるのか。ここに来て気になるニュースが報じられた。7月31日に尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)で中国調査船の航行が確認されたという。

 危機のたびに国民の注意力を外国へそらすという手口を、中国政府は駆使してきた。国民の反日感情を利用するのは、今の中国政府にとって最も手軽な手段かもしれない。

(高遠)


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