アングル:首相が「総裁任期全う」に言及、改憲発議に意欲か

2020/01/09
更新: 2020/01/09

竹本能文

[東京 8日 ロイター] – 安倍晋三首相が年初の挨拶で来年9月の自民党総裁としての任期を意識した発言をしたことが、与党内で憶測を呼んでいる。任期満了まで責任をもつとの発言について、一部では任期中の憲法改正は事実上難しいが、改憲発議は実施したいとの意欲の表れとの解説も聞かれる。もっとも永田町界隈では、五輪花道論から総裁4選まで様々な可能性がささやかれており、ポスト安倍選びとあいまって与党内政局から目が離せない1年となりそうだ。

<ゆずの収穫発言、花道論否定か>

安倍首相は7日、時事通信社主催の新年互例会で、同会への出席が8回目であることにちなみ、「桃栗3年、柿8年、ゆずは9年の花盛り」とのことわざを引用。「ゆずの収穫までは責任をもって頑張りたい」と述べた。

首相はその上でことわざの続きを紹介。「梅は酸い酸い13年、梨はゆるゆる15年、林檎にこにこ25年と言うが、梅や梨や林檎は、小泉進次郎環境大臣もいるが、みなさんに収穫をしてもらうと思っている。誰が収穫するかについて、みなさん記事にするのだろう」と述べた。

安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月までで、発言は来年の任期までは全うしたいとの意欲の表れでないかと受け止める向きが与党内では多い。

ある閣僚経験者は「現実問題として、首相任期中の憲法改正は難しいので、せめて任期中に発議まで持っていきたい。そのためには任期いっぱいは首相をやらせてほしいという意味だろう」と解説する。

与党内では安倍首相が五輪・パラリンピックを花道に秋にも退陣するとの観測も相応にあり、首相の発言はこれを否定したものとの意味だ。

<衆院解散、3分の2割り込むリスク>

安倍首相が実は自身の任期中の改憲が現実的には難しいと認識しているとの見方は多い。「最近は自分が議員バッジを付けている間に憲法改正できればよいと周辺に話すこともある」(与党関係者)という。

このため「2020年中の衆院解散は結局ないのではないか」(同氏)との声も出ている。衆院選の結果、与党の議席が改憲発議に必要な3分の2を割り込んでしまえば元も子もないためだ。

これとは別に、首相は衆院解散のタイミングを逃しつつあり、結果として年内の解散が難しいとの見方もある。「本当は通常国会冒頭がベスト。今なら議席減は10程度にとどまるが、中東・国際情勢が緊迫化し、できなくなってしまった」(元閣僚)という。

これに対してある与党幹部は「解散すれば議席は減り、憲法改正は難しくなる。なのでまず首相が代わり、新しい首相で解散に踏み切るのが筋」と言い切る。

<石破氏を意識か>

報道各紙の世論調査で現在、ポスト安倍として最初に名前が挙がるのが石破茂・元幹事長だ。ただ、安倍首相は自身を表立って批判し続ける石破氏の総裁就任は容認しないとの見方もある。

自民党の党則は「総裁が任期中に欠けた場合」で「特に緊急を要するときに」党大会に代わる両院議員総会で後任を選ぶことができると規定している。自民党総裁を任期途中で退陣した場合、国会議員のみで総裁選を実施することが可能となり、石破氏がかつて票を集めた地方票は勘案されない。安倍首相は自身に近い岸田文雄政調会長への禅譲を図るため、任期途中で退陣するとの読みも、与党内には根強い。

(編集:石田仁志)

Reuters
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