中共肺炎の対応を批判した著名実業家、拘束中ハンストの情報 権力闘争勃発の見方も

2020/04/01
更新: 2020/04/01

 中共ウイルス新型コロナウイルス)をめぐり、中国当局の情報隠ぺいで世界的な感染拡大を招いたことに、共産党体制内部からも反発が相次ぎ、権力争いが激化している。

習政権への批判的な発言で逮捕された特権階級「紅二代」の任志強氏(69)は、拘束先でハンガーストライキ(ハンスト)したため心不全を起こし、3月28日午後3時頃、北京にある中日友好病院に運ばれたと、北京上層部の動きに詳しいツイッターユーザー「老灯」は3月29日の投稿で明らかにした。

今年3月初め、「任志強」と署名された文章はネット上で拡散された。文章は、中共肺炎(武漢肺炎)の発生後、中共政権が情報隠ぺいや厳しい言論統制によって、一気に感染を拡大させたことを指摘した。習近平主席を名指しこそしなかったが、「裸になっても皇帝の座にとどまるピエロ」と厳しく批判した。

3月25日付の米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は情報筋の話を引用し、任氏の文章は当初、SNSで10数人の実業家グループでシェアされていたが、思いのほか3月6日、ネット上に流出し、大きな話題と関心を呼んだと報じた。

任氏は3月12日午前、党規律検査委員会からの電話で面談を求められ、同日午後に連行された。その後、長男と秘書も拘束された。同事件は当局の「重大案件」とされ、いかなる人も介入してはいけないという。

任志強氏は中国の不動産業界の大物で、共産党古参幹部を親にもつ「紅二代」でもある。歯に衣着せぬ物言いをすることで「任大砲」と呼ばれ、何度も中国共産党を激しく批判した。父・任泉生氏は1973~82年まで中国の商務部副部長(副大臣)を務めた。

政界での人脈も広い。王岐山副主席とは中学時代からの友人で、まだ大学院生だった劉鶴副首相を自社の非常勤研究員として雇用していた。

2016年2月、習氏が国営メディアを視察した際に「党・政府が管轄するメディアは宣伝の陣地であり、党を代弁しなければならない」と発言すると、任氏は自分のブログに「人民政府はいつの間に、党政府に変わったのだ?」と書き込んだ。その後、このブログは閉鎖され、任氏は1年間の党内観察処分を受けた。

「大物起業家50人の陳情」から「五老上書」 反発ひろがる

任志強氏の逮捕事件が大きな波紋を広げている。中国の著名起業家ら50人がこのほど、習近平政権に任氏の釈放を含む九つの要求を連名で表した。共同署名には、電子商取引(EC)大手アリババ創業者の馬雲氏やパソコン大手レノボ・グループ創業者の柳伝志氏などが名を連ねている。

3月26日付のツイッターユーザー「一剣飄塵06」の投稿によると、任氏の友人から入手したこの陳情書は、李克強首相を経由して習主席に提出された。陳情書では、中共肺炎の爆発が共産党体制の一連の弱点を露呈させたことを指摘し、政治改革の実施や民間企業への保護、国民向けの現金給付、関係者への責任追及、任志強氏の釈放など9つの要求を提起したという。

「老灯」は3月27日付のツイッター投稿で、陳情書の提出は事実であり、主要な署名者は任氏が最初に文章を投稿したSNSチャットグループのメンバーたちだったと伝えた。

同投稿によると、共産党最高指導部の元メンバーだった李瑞環・元中国人民政治協商会議主席と温家宝・元首相、李嵐清・元副首相、胡啓立・元政治局常務委員、田紀雲・元副首相も3月25日、連名して習氏に書簡を提出した。その内容について詳細は不明だが、「五老上書」と呼ばれる同事件は政府内部にも激震を走らせたという。

3月22日、香港在住の紅二代・香港の衛星テレビ放送「Sun TV(陽光衛視)」の陳平会長は、SNS微信(ウィーチャット)で執筆者不明の公開状を転載した。公開状は、感染拡大を受け、政治局の緊急拡大会議を開催し、「習近平主席が辞任すべきかどうかを検討するよう」と呼びかけ、大きな話題を呼んだ。

米中貿易戦争による経済の衰退や中共肺炎で、中共政権がかつてない危機に見舞われている。3月27日付の米華字メディア・阿波羅(アポロ)新聞網は、こうした状況下で、指導部の内乱や権力闘争は避けられない現象だと示唆する一方、任氏の舌鋒鋭い批判および「紅二代」の身分は、習主席から権力を奪いたい党内反対派の道具にされる可能性もあるとの見方を示した。

(翻訳編集・王君宜)