ハイマースなど米軍装備、訓練後も南西諸島に 連携強化し中国の脅威に対応=米司令官

2022/09/13
更新: 2022/09/13

与那国島周辺海域に中国のミサイルが着弾するなど軍事的脅威が強まるなか、米太平洋陸軍司令官のフリン将軍は9日、日本の自衛隊など同盟国との共同訓練は力の均衡を保つことができる「カウンターウェイト」であると強調した。自衛隊との島嶼防衛訓練を終えた後も、ロケット砲「ハイマース」など一部兵器は「急いで撤収はしない」とし、残す意向を示した。

陸上自衛隊は8月下旬から米陸軍と実動訓練「オリエント・シールド22」を実施、島嶼防衛訓練を行った。9日、陸上自衛隊奄美駐屯地を訪問したフリン氏は、訓練終了後も一部兵器を駐屯地等から撤収せず、次回の訓練のために残しておく考えを示した。フリン氏によれば、年内に少なくとも同地域で2度訓練がある。兵器を残しておくことは「(米軍の)能力を前方展開させる機会」でもあると強調した。

フリン氏は同日、東京で開いた記者会見で、日本を含むインド太平洋地域の同盟国とより強固な連携関係を構築することの重要性について指摘。米軍が加わる地域の多国間訓練は、中国の軍事的拡張に対抗し、地域の力の均衡を保つよう調整する「最大のカウンターウェイト(釣り合いを保つおもり)だ」と表現した。

米軍が南西諸島に展開する兵器には、ウクライナ戦場で多くの戦果を挙げた高機動ロケット砲システム「ハイマース」も含まれるという。長射程で高精度な射撃により、前線から遠く離れたロシアの軍事施設を効果的に攻撃した。

中国の脅威に対応すべく、南西諸島では自衛隊基地の建設が進められている。2019年には、奄美大島と宮古島に陸上自衛隊の駐屯地が新設された。石垣島でも基地建設が進められており、陸自警備隊と地対艦・地対空ミサイル部隊が配置される予定。

防衛省が発表した令和5年度の防衛費概算要求では、「防衛力を5年以内に抜本的に強化」すべく、スタンドオフ防衛能力や総合ミサイル防空能力の強化、非対称的な優勢を確保する方策が盛り込まれた。

弾薬を備蓄し、継戦能力を高める取り組みも進められている。浜田靖一防衛相は9日の記者会見で、台湾有事に備え、奄美大島や宮古島、石垣島でそれぞれ火薬庫の整備を進めていると述べた。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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