百家評論 「日本の核武装」を恐れる習近平の焦燥

北朝鮮7回目の核実験はいつか?

2026/06/15
更新: 2026/06/15

1 中朝首脳会談の実相

6月8日、中国共産党の党首・習近平は北朝鮮を訪問し、金正恩総書記らの熱烈な歓迎を受けた。5月にはトランプ米大統領、プーチン露大統領を相次いで北京で出迎え、北京こそ世界の中心であるかのように振る舞った習近平。しかし、そんな雄姿は北朝鮮ではまったく見られなかった。

そこには断末魔に陥った、哀れな権力者の姿があるだけだった。「金正恩よ、頼むから7回目の核実験だけはしないでくれ」習近平は、そんなメッセージを伝えるために平壌にやって来たのだ。

2026年6月8日、北京の大型スクリーンに映し出された中朝首脳会談のニュース。習近平は同日、北朝鮮を訪問し、金正恩と会談した(Pedro Pardo/AFP via Getty Images)

北朝鮮が6回目の核実験を行ったのは2017年9月3日だ。その後2022年に7回目の核実験に踏み切る準備が整った事が米国の偵察衛星で確認されて核実験は確実視されたものの、現在に至るまで挙行されていない。

北朝鮮が最初に核実験を行ったのは2006年10月だが、核爆発の実験に成功したからといって直ちに核武装できるわけではない。1945年に米国が広島に投下した最初の核爆弾は重量が4トンで、重爆撃機B29で目的地まで運搬し投下した。

当時の日本は制空権を失っていたから、投下できたのであって制空権が確保されている敵地に重爆撃機の侵入は不可能だ。そこでミサイルに搭載することになるが、そのためには核爆弾を小型軽量化しなくてはならない。

北朝鮮も、まさにミサイルに搭載できるよう核爆弾の小型軽量化に努めて核実験を繰り返してきたのである。

 

2 トランプ発言に翻弄された習近平

5月14日・15日、北京で開かれた米中首脳会談で、習近平が日本の軍備増強を非難すると、トランプは、「北朝鮮の脅威が高まる中で日本はより積極的な安全保障上の対応をとる必要がある」と日本を擁護した。

米中首脳会談(Getty Images)

習近平が急遽、平壌を訪問したのは、このトランプ発言が原因だと見ていい。というのも1990年代、当時のクリントン米政権が北朝鮮核開発問題に中国を介入させたときの口説き文句は「もし中国が北朝鮮の核武装を容認するなら、米国は日本の核武装を容認するしかない」

2000年代、ブッシュ政権も同様の意向を中国に示し、中国は北朝鮮の核開発に反対の意向を示した。つまり中国は日本の核武装を恐れるが故に、北朝鮮の核開発に反対してきたのである。

そこで北朝鮮は2017年の核実験を最後に、核実験を停止してきた。ところが近年、ロシアのウクライナ侵略に派兵してロシアの支援を得られるようになり、さらに米国がイラン戦争に足を取られている状況で、北朝鮮が核開発を本格化させる可能性が出てきた。

従って米国の、北朝鮮が核武装するなら日本を核武装させるという米戦略を牽制するために日本軍国主義批判を始めたのである。第2次世界大戦では米中は同盟して日本の軍国主義と戦ったのだから、日本の核武装を許してはならないという米国へのメッセージである。

ところがトランプ政権はまったく耳を貸さず、遂には、「日本は北朝鮮の高まる脅威に対応する必要がある」とまで断言した。

つまり北朝鮮が核武装すれば、日本を核武装させると暗に示唆したのである。習近平が慌てて平壌に駆けつけた所以である。

 

3 核武装に走る韓国

北朝鮮が7回目の核実験をしたからといって、日本が直ちに核武装に走り出すかどうかは、明確には言えない。しかし東アジアには、既に核武装に走り出している米国の同盟国がある。

言わずと知れた韓国である。軍事アレルギーの強い日本では、核武装論はごく一部の論調に過ぎないが、軍事アレルギーがない韓国においては世論の圧倒的な支持を得ている。

昨年(2025)10月、トランプは、韓国の李在明大統領と会談し、韓国が原子力潜水艦を建造することを承認した。原子力潜水艦は通常型潜水艦と異なり、圧倒的な潜航能力を持つ。

2025年3月16日、アメリカ海軍「ミネソタ号」(USS Minnesota, SSN-783)バージニア級高速攻撃型原子力潜水艦がオーストラリア西部海域を航行している様子。(Colin Murty/POOL/AFP via Getty Images)

従って、いったん潜航してしまうと、どこにいるか探知が困難である。つまり敵に探知されることなく敵地にミサイル攻撃が可能なのである。韓国は原潜に核ミサイルは搭載しないとしているが、原潜そのものが米国の監督下で造られる以上、もし米国から核弾頭が供与されれば、通常弾頭を核弾頭に差し替えることなどわけもない。

しかも米国は、韓国の原潜が中国を牽制するのに役立つ旨を明言している。当然、中国は激怒するかと思いきや、全くの沈黙を守っている。制裁措置も執らないどころか、中韓通貨スワップを承認するなど、中韓関係はむしろ良好になっている。悪化する日中関係と真逆なのである。

要するに、中国の日本叩きは弱い者虐めに過ぎず、ひとたび核武装を明言した韓国に対しては、何も言えないというのが、習近平政権の実情なのである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
軍事ジャーナリスト。大学卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、11年にわたり情報通信関係の将校として勤務。著作に「領土の常識」(角川新書)、「2023年 台湾封鎖」(宝島社、共著)など。 「鍛冶俊樹の公式ブログ(https://ameblo.jp/karasu0429/)」で情報発信も行う。