孔子学院の次は職業訓練校…一帯一路に合わせ、19か国で開設

2022/11/16
更新: 2022/11/16

米欧などで中国政府の「スパイ機関」との警戒が高まり、相次ぎ閉鎖されている孔子学院。中国政府はその代替として職業訓練校「魯班(ロバン)工房」の設置を進めている。孔子学院は言語、文化教育を掲げたが、魯班工房は中国政府主導の広域経済圏構想「一帯一路」推進のため、主に途上国の技術指導と発展を名目に拡大させている。

中国メディアによれば、魯班工房は天津市政府が国際的な職業訓練プロジェクトとして16年に初めてタイで設立。以来、世界19か国の大学等教育機関に25か所開設された。工房の名前は、周時代(紀元前507〜444年)にその名を轟かせた伝説的技師に由来する。

中国方式の技術を国際的に拡げ、政策に資する人材の育成が目的であると中国政府は説明している。教育部(省)は魯班工房について「中国企業のための専門的・技術的人材を育成することを目的とした訓練プログラム」としている。中国教育報は昨年8月、「中国の技術に精通し、中国製品を理解する技術力ある人材を育成することに力を入れている」と報じた。

具体的には、大型インフラを建設する一帯一路に合わせた技術者を養成している。魯班工房はオートメーション、産業用ロボット、鉄道、自動車、機械、電子情報などの訓練コースを揃える。

魯班工房を統括する天津市政府によれば、工房を開設する前、中国側は提携を結んだ機関と「一帯一路」プロジェクトに必要なスキルについて話し合い、どのコースを設置するかを決める。機材や講師は中国側が提供する。

タイの魯班工房では、70億ドル規模の高速鉄道プロジェクトに応じて、高速鉄道関連の技術をタイの学生に教えている。ジブチでは鉄道の運行管理や商業を専門にしている。このほかにも、モンバサ・ナイロビ標準軌鉄道、ハンガリー・セルビア高速鉄道、中国・ラオス鉄道などといった一帯一路プロジェクトに貢献する技術を指導している。

「人の心を買う」

豪シドニー工科大学の馮崇義教授は6日、エポックタイムズの取材に対し、中国共産党は宣伝工作に充てる莫大な予算があり、魯班工房のような事業を扶助していると指摘。「いわゆる中国についての『良いストーリー』を作ろうとしている。(中共は)非常に寛大で、技術を提供しているという印象付けを図っている。目的は人の心を買うことだ」と話した。

また、「彼らは孔子のブランドを利用したが、現在は多くの国で閉鎖され、もはや使いものにならない。だから、(魯班工房に)変身したのだ」と述べた。

孔子学院をめぐっては、現在米欧などを中心に閉鎖する動きが広がっている。スウェーデンでは20年4月までに全校閉鎖され、英国でもスナク政権が孔子学院を全て閉鎖する方針を示している。22年6月、全米学者協会は孔子学院に関する報告書を発表し、4年間で米国の大学に設置されている118校の孔子学院うち、現在までに104校が閉鎖されたと指摘した。

こうした中、中国政府は魯班工房の開設に力を入れている。近年、習近平国家主席は国際的な場で、魯班工房について繰り返し言及している。18年、中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)の開会式で、中国の習近平国家主席はアフリカの10か所に魯班工房を設置すると述べた。

今年には、習氏がトルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領、タジキスタンのラフモン大統領、キルギスのジャパロフ大統領とそれぞれ会談した際、魯班工房の設立に言及した。

ジブチのゲレ大統領は「魯班工房は中国がジブチに贈る最高のプレゼントだ」と評価したとされる。

中共浸透工作 商業的側面も

魯班工房もひとつの中国共産党の浸透工作であり、強権政治を海外に輸出して、現地の法律を破壊していると指摘する専門家もいる。

オーストラリア在住で、首都師範大学教育科学学院の元助教授、李元華氏は「中共の浸透工作はどこにでもみられる。孔子学院や魯班工房のみならず、中国大使館を背景にした同郷会や商会は中共の延長にある」と述べた。

最近スペインの人権団体が指摘した中国の海外警察署も、大使館に近い華僑団体や華人商会と関係していると李元華氏は話した。

中国共産党のスパイ活動は国民党から政権を奪取する歴史の記録からも、商業的な側面や政治的側面を持ち合わせていたという。「国家安全局、軍隊、公安局、外交部、大使館、領事館にスパイは所属している。スパイのネットワークを拡げて、海外華人の情報のみならず現地の状況を収集することが多い。オーストラリアでは政治家に直接接触して、彼らを巻き込んだ」

李元華氏は、一定数の国は中国共産党の脅威を認識しているが、一部は認識していないと警告を発した。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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