冷える独中関係 ドイツ各都市、中国との友好関係を解消へ

2023/09/04
更新: 2023/09/04

近ごろ、ドイツの複数の都市は、中国共産党(中共)との協力を相次いで中断し、友好都市計画も凍結している。従来、熱意にあふれていた独中関係は、穏やかながらも変容を遂げつつあり、特にドイツは対中政策における「リスク除去」を具体的な措置として実施している。

デュースブルク市:「中国の都市」の称号を返上

ドイツ北西部に位置するデュースブルク市は、これまで中国との経済・貿易関係を積極的に推進してきた。今から9年前の2014年には習近平氏が同市を訪れている。それを機に同市は、中国が進める「一帯一路」の重要な拠点になることを宣言した。

ところが現在、デュースブルク市と中国の大手テレコム企業・華為(Huawei)による共同プロジェクト「スマートシティ」は中止されている。さらに、運輸大手の中国遠洋運輸(COSCO )もデュースブルク港におけるプロジェクトの株式を売却する方向にある。

デュースブルク市の中国担当官であるマルクス・トゥバー氏は、「民衆の世論が変化し、それによって政治的観点も変わった」と指摘している。かつては、現地メディアにおいて同市を「ドイツの中国都市」と呼んできた。しかし今、現地の当局者はこの称号を望んでいない。

キール市:青島との友好都市計画を停止

バルト海沿岸に位置し、軍港として長い歴史を有するキール市は、現在もドイツ海軍の基地および潜水艦製造の要地である。

キール市は、イスラエル、韓国、トルコなどへ軍艦および潜水艦の供給を行っている。キールより北へわずかに進めば、ドイツ軍のシュレースヴィヒ・ホルシュタイン司令部が存在し、30キロ先にはエッケルンフェルデ(Eckernförde)港、つまりバルト海唯一のドイツ海軍の深水港がある。

ドイツ国内において、キールおよびその周辺地域ほど、海上軍事産業と軍隊が集中する地域は存在しない。そこで初めは、中国の青島市がキールと友好都市になる意欲を示していた。長年にわたり、キールと青島という両港湾都市間での友好は航海協力に基づいていた。今年3月には、中国側がこの友好関係を新たな段階に高める提案を行い、キール市議会も迅速に合意した。

しかし4か月後、状況は180度転換した。キール市政府は、青島市との友好都市計画を凍結。青島市に対して「さらなる協力は求めない」と発表した。

キール大学の国際安全政策研究所(ISPK)の所長であるヨアヒム・クラウゼ氏は、「中国が友好都市や学術交流の名目で、機密情報の窃取を行っている事実がある。彼らのいう友好都市や学術交流の狙いは、更なる学者との接触である」と警告している。またクラウゼ氏は「帆船交流は、単なる口実にすぎない」とも指摘している。

クラウゼ氏は北ドイツ放送(NDR)のインタビューで「市政府は専門知識を欠いている」と批判するとともに、キールの潜水艦製造技術と水中作戦能力の詐取が中国海軍にとって非常に重要であると述べた。

ドイツのメディアによれば、数年前には中国との都市協力に関して、ドイツ国内に強い抗議は存在しなかった。メルケル政権下において、ベルリンは北京との取引を機会として「これはリスクではない」と強調していたからだ。

しかし現在のドイツ政府は、メルケル政権時代の親中政策と正式に決別し、ドイツ国内の各都市も中共との協力の危険性を認識しつつある。

デュッセルドルフ市:「中国祭り」を急遽中止に

デュッセルドルフ市は、ドイツにおいて重要な中華系コミュニティの集まる地域である。2010年からケルン、デュースブルク等の西部の大都市と持ち回りで「中国フェスティバル」を開催している。この祭りは地元でも重要な伝統行事になっており、中国の伝統的な舞踊や歌のパフォーマンスが行われている。

今年8月、デュッセルドルフ市は、会場が適していないとの理由および形式の再検討が必要であるとして、予定していた9月の「中国フェスティバル」を急遽中止した。この祭りは以前より疑問視され、批判も受けていたからだ。資金の提供元が中共であったことも中止の一因である。

現在、ドイツと中国の関係は冷え込んでおり、特に北ライン=ヴェストファーレン州での「中国フェスティバル」は熱が冷めている。その兆候は前年のデュースブルクでの同行事で、すでに見られていた。主催都市は2022年の「中国フェスティバル」に対するプロモーションをほとんど行っておらず、参加者は主に中国につながりを持つ人々で、一般のドイツ市民は少なかった。

イェーナ市:広州市との友好都市計画を保留

今年5月には、中部ドイツの光学研究で有名なイェーナ市も、広州市との間で進んでいた友好都市計画をストップし「一時保留」にしている。

 

これらの事象は、最近のドイツ社会において中国(共産党)に対する見方が大きく変わり、関係が明らかに冷え込んでいることを示唆している。

ドイツ経済研究所のユルゲン・マテス氏は「ドイツがロシアの天然ガスに対する依存度を減らして以降(ロシアに対して)より慎重な姿勢をとっている」と述べた。マテス氏はさらに、中国に対しても同様の慎重さが必要であると強調している。

特に医療産業とIT製品の分野で、ドイツは中国の原材料や製品に依存している状況がある。しかし、このような新しい変化の下、ドイツの各都市には「中共から距離を置く動き」が見られるとともに、ドイツが中国に対して「リスクを減らす行動」を取っていることが確認できる。

王亦笑
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