米ハーバード大学は7日、国際政治学者で同大学特別功労名誉教授のジョセフ・ナイ氏が6日に死去したと発表した。88歳だった。ナイ氏は「ソフトパワー」という外交理論を提唱し、国際政治学の分野で広く知られていた。
ナイ氏は1937年1月19日、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。ハーバード大学で長年教鞭を執り、1995年から2004年には同大学ケネディスクールの学長を務めた。また、アメリカ政府の国家情報会議議長や国防次官補(国際安全保障担当)などの要職も歴任した。
ナイ氏が1990年代に提唱した「ソフトパワー」は、軍事力や経済力といった「ハードパワー」だけでなく、文化や価値観、政策などによる他国への影響力の重要性を指摘する概念である。この理論は、アメリカを含む多くの国の外交政策や国際関係の分析に影響を与えてきた。
ナイ氏は日本に関する知識も深く、日米同盟の重要性について繰り返し論じてきた。国防次官補として「ナイ・イニシアティヴ」と呼ばれる東アジア戦略報告を作成し、またリチャード・アーミテージ氏とともに複数回にわたり「アーミテージ・ナイ・レポート」として日米同盟の強化を提言してきた。日本政府から2014年に旭日重光章を受章している。
ハーバード大学の発表によれば、ナイ氏は生涯を通じて国際関係論の研究と教育に携わり、多数の著書や論文を発表した。代表的な著書には『ソフト・パワー』や『アメリカの世紀は終わらない』などがある。
石破首相が弔辞
5月8日、石破茂内閣総理大臣はジョセフ・ナイ米国ハーバード大学教授の逝去に際し、以下の弔辞を発出した。
「ジョセフ・ナイ米国ハーバード大学教授が逝去されたとの知らせを受け、心よりお悔やみ申し上げます。ナイ教授は、日米同盟に関して深い知見を持ち、対話や政策提言を通じて、同盟の強化に大きく貢献されました。ナイ教授の多大なる御功績に改めて敬意を表するとともに、長年にわたり日米関係の強化に尽力された故人の御姿を偲びつつ、ここに謹んで、日本国政府及び国民を代表し、ナイ教授の御霊の安らかならんことを心よりお祈り申し上げます。
日本国内閣総理大臣 石破茂」
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