汗水たらして育てた作物が、一夜にして奪われた。しかも、相手は1人や2人ではない。数百人から千人規模の「群衆」であった。
このほど、中国・安徽省で、収穫直前の個人のジャガイモ畑が大勢の村人によって「集団略奪」される事件が発生した。作物を守ろうとした農家に、警察が放ったのは衝撃的な言葉は「法不責衆(大勢には罪を問えぬ)」だった……。
今回被害を受けたのは安徽省宿州市(しゅくしゅう‐し)にある500畝(約33ヘクタール、東京ドーム約7個分に相当)の個人のジャガイモ畑で、収穫期を迎えた6月中旬、夜な夜な鍬と袋を持った見知らぬ村人たちが入り込み、三輪車や寝袋まで持ち込んで昼夜交代でジャガイモを掘り続けた。完全に計画された略奪の様相だった。

被害を受けた畑主はすぐに警察へ通報したが、返ってきたのは 「法不責衆(大勢には罪を問えぬ)」という驚きの回答だった。
畑主は、致し方なく被害をSNSに訴えると、警察から「削除しろ」と圧力をかけられる始末だ。村の役人に抗議しても、「村人たちは規格外の小さなジャガイモを拾っただけだ」とわいしょう化され、納得しない畑主にまともな説明はない。
かつては「盗むことは悪だ」という共通の価値観があった。だが今や、中国の農村では「先に奪った者が勝ち」という風潮が広がり、盗む側が“庶民”、止める側が“悪者”にされる。生活苦が理由だとしても、善悪の境界がここまで溶けてしまえば、法も秩序も意味をなさない。この国は今、人間としての最低限の倫理さえ失おうとしている。

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