米国バイオ医薬品大手モデルナは7月18日、神奈川県藤沢市の湘南ヘルスイノベーションパーク(iPark)で予定していたmRNAワクチンの原薬製造拠点の建設計画を中止すると発表した。同社が公式ウェブサイトでリリースした情報によると、昨今の事業環境の変化やワクチン需要の動向などを総合的に検討した結果、今回の整備計画は見送ることとなった。
この計画は、日本政府が主導する「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」(経済産業省所管)に2023年採択されており、日本国内におけるmRNAワクチンの原薬供給体制強化を目指してスタートしていた。しかし、同社は「世界および日本における事業環境の変化」を理由として計画の中止を決定したとしている。
一方、同じ敷地内ではモデルナ・エンザイマティクスが主導するmRNA医薬品の研究・製造施設建屋の工事がすでに完了している。今後は、無細胞DNA合成技術を活用し、mRNA製造の品質やスピード向上といった基盤技術の研究活動が続けられるとのことである。なお、mRNA技術は新型コロナウイルスワクチンだけでなく、がんや希少疾患、感染症領域の治療薬開発にも応用が広がっている。
モデルナは引き続き日本での事業展開の重要性を強調し、グローバルネットワークを活用して日本への安定的なワクチン供給を維持するとしている。将来的な事業環境の変化によっては、再び国内mRNA原薬製造拠点の整備を検討する可能性も否定していない。また、今後も日本政府や自治体、医療者との連携のもと、公衆衛生の向上と人々の健康のためにmRNA技術による革新的な治療法の開発に取り組む方針である。
アメリカで資金削減・契約取り消しの動き
米国政府は近年、mRNAワクチン関連研究への連邦資金について、明確な縮小または取り消しの動きを強めている。
2025年上半期において、米国保健福祉省(HHS)はモデルナ社と結んでいたH5N1型鳥インフルエンザmRNAワクチンの開発契約590百万ドル、および他のパンデミック対応用mRNAワクチン開発支援契約を取り消した。
さらに、パンデミックインフルエンザなど今後の公衆衛生危機対応を目的としたmRNAワクチン開発に割り当てられていた計7億ドル以上の契約も打ち切りとなった。
理由として「科学的・倫理的懸念」やmRNA技術の安全性に関する見直しが挙げられている。
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