この夏、中国の観光地は人であふれながらも、収入は冷え切ったままだ。「天空の鏡」と呼ばれる名所「チャカ塩湖(青海省)」などでは「今年は一人当たりの支出がミネラルウォーター1本分」と揶揄され、異様な状況が広がっている。
SNSでは「今年の夏は巨大な『行動パフォーマンス』だ。観光地には来るが一銭も落とさない」という皮肉が拡散している。市民たちは無料の博物館や動物園を巡り、食事はインスタント麺を持参し、宿泊は車内泊やテントで済ませる。
若者の間では「20元(約400円)以上は行かない」「入場料20元超の観光地は資本主義の罠」といったフレーズが名言のように広がっている。「行くが絶対にカモられてたまるか」という気迫が漂い、「カモられたら負け組」 という意識のもと、いかに金を使わずに遊ぶかが新たなトレンドとなっている。

もちろん、「財布を閉じる」のは生活苦が背景にある。しかし、それだけではない。観光地で繰り返される「割高な仕掛け」に対して、若者たちは「もう乗らない」という静かな意思表示をしているのだ。
実際、中国の観光地では飲食や土産物が市場価格をはるかに超え、「ぼったくり」と言いたくなる料金設定がSNSで何度もトレンド入りしてきた。こうした不信感の積み重ねが、「財布を開かない旅行」という無言の抵抗につながっているのである。
こうした節約志向は観光地やホテル業界に深刻な影響を及ぼす。かつて「夏休みは観光客であふれる名所」だった重慶や雲南の避暑地でも、宿泊料金を半額以下にしても客は戻らず、今や「繁忙期が存在しない」と言われるほどの落ち込みとなっている。

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