【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

なぜ日本はスパイ天国なのか 勝共連合とスパイ防止法

2025/09/12
更新: 2025/09/12

スパイ天国と言われて久しい日本。1982年、ソ連の諜報機関、KGBスタニスラフ・レフチェンコ少佐が、米下院情報特別委員会で日本で行っていたスパイ工作を暴露した。

暴露した内容は驚愕するもので、日本の大手新聞社幹部や学者、政治家なども協力者だったことを暴露し、この頃から「日本はスパイ天国」という不名誉な称号をつけられることになった。

G7国家で唯一スパイ防止法がない日本

スパイ防止法とは外国のスパイ活動から国を守るための法律だ。この法律がないと、国家機密や先端技術が国外へ流出しても摘発が難しく、また同盟国から情報漏洩に不安があるとみなされ、重要な情報の共有を避けられたり、また外国からの世論操作や、政治工作も防ぎにくいなどの問題が発生する。

G7の国々では、犯した際に科される最高刑もアメリカでは死刑である他、イギリスも無期懲役など最高の刑を科している。各国のスパイ罪に対する姿勢は絶対的なものだといえる。これほど重要な法律であるにもかかわらず、G7国家の中でスパイ防止法がないのは日本だけだ。

どうして日本にはスパイ防止法がないのだろうか? 実は戦前、戦中にはあった。まずはそこから歴史をたどってみよう。

荒れ狂う共産主義運動

戦後、GHQは1945年に治安維持法、1947年には軍機保護法を廃止し、日本ではスパイ罪が廃止となった。さらに、日本共産党の活動が合法化され、新聞・労働運動も自由になった。

GHQは日本社会の「軍国主義・全体主義的要素」を徹底的に排除し、言論・思想・結社の自由を保障することを最優先課題としていた。

しかしスパイ罪が廃止されてから、共産主義勢力が急速に暴徒化し、日本共産党も1950年、武力闘争路線を叫び、大規模な労働争議があちこちで行なわれた。社会は混乱し、吹田事件、白鳥事件といった警官が殺害される痛ましい事件も発生した。

日本とGHQは「日本の急激な共産化」を警戒し、党員やシンパを政府・民間企業、新聞・放送局から大量に追放した。

共産党のこうした非合法な活動は国民から批判を受け、1952年衆院選で日本共産党は全議席を失った。

その後、日本共産党による武力闘争路線は沈静化したが、1960年の安保闘争を経て、1970年代にかけては中核派、革マル派、赤軍派、日本赤軍といったいわゆる「新左翼」と呼ばれる過激派が台頭し、テロや数々の暴力事件を引き起こした。特に三菱重工爆破事件では8名が犠牲となり、社会に大きな衝撃を与えた。

スパイ防止法成立への国民運動

こうした状況に深い懸念を抱いた保守層や公安をはじめとする治安当局は、スパイ防止法の必要性を繰り返し訴えるようになった。そして、この運動を強力に推進したのは、驚くかもしれないが、国際勝共連合(以下、勝共連合)つまり世界平和統一家庭連合、旧統一教会なのだ。

勝共連合は、旧統一教会の創設者である文鮮明氏が、日韓両国で共産主義の脅威に対抗することを目的に1968年に設立した反共政治団体だ。

警察関係者や保守系の政治家は、共通の敵である「共産主義」との闘いにおいて勝共連合と協力関係を築いた。戦後の長きにわたり、自民党の一部議員や警察OBは勝共連合の活動を高く評価していた。

1978年4月3日、自民党の福田赳夫首相は参議院予算委員会で、共産主義反対という点で自民党と勝共連合は思いを同じにしており、自民と勝共連合は協力的側面を持っていた。違法なことをしていると感じることはなかったと述べた。

こうして旧統一教会の信者たちが実働部隊となり、大規模なスパイ防止法制定運動を展開。1979年には「スパイ防止法制定促進国民会議」を、さらに1984年には岸信介元首相を会長とする超党派の議員懇談会を設立するなど、政財界や学術界の有力者を巻き込みながら、全国的な運動を組織した。

自民党議員と統一教会の関係が深かったのは、このスパイ防止法を始めとする、戦後からずっと日本の安全を脅かしてきた共産主義に対抗してきた部分が大きい。

神の存在を否定する無神論を標榜する共産主義の蔓延を、何らかの神を信奉する多くの宗教団体は認めていない。ナチスのソ連侵攻でさえ、共産主義国を倒すナチスの壮挙として、歓迎する宗教者も多くいたほどだ。

スパイ防止法が成立しない理由

このように多くの関係者や団体が推進したスパイ防止法だが、結局は制定できなかった。それはなぜだろうか?

最大の理由は国民からの反対の声が大きかったとしている。

しかし、政府がいう「国民の声」とは、実際にはメディアの調査や報道に大きく依存している。スパイ防止法について言えば、メディアの報道姿勢が政策の方向性を大きく左右していた。スパイ防止法が提起されるたびに、メディアは「個人の自由が侵害される」という点ばかりを強調し、逆にスパイ防止法が存在しないことによるデメリットについては一切報じてこなかった。

メディアは、スパイ防止法について「思想や言論の自由を侵害するのではないか」と強く批判した。特に、スパイ活動の定義が曖昧であるため、時の政府が反体制的な活動をスパイ行為として取り締まり、治安維持法のような役割を果たすのではないかと警鐘を鳴らした。こうした懸念から、法案は国会で繰り返し審議されたが、最終的に成立には至らなかった。

旧統一教会は政府とともに、スパイ防止法によって共産主義勢力の暴虐を根絶しようとしていた。ところが安倍元首相暗殺後、数十年前の霊感商法被害がメディアに再び取り上げられ、教団への攻撃が強まった。

そして現在、日本政府は、そうした偏ったメディア世論を背景に教団へ解散命令を出している。これは、メディアが政府を通じて、スパイ防止法の成立を求める国民の声を覆い隠そうとしているのではないだろうか。

そして、そのメディアの背後には、世論の流れを方向づけ、政策決定に影響を与えようとする存在が見え隠れしているようにも感じられる。特に安倍首相暗殺の際に大手メディアが一斉に同じ見出しを出したことは大きな物議を醸した。日本政府が教団に解散命令を出すに至ったことは、こうした力関係の中での動きと捉えることもできるだろう。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。