米疾病対策センター(CDC)のワクチン諮問委員会は9月19日、新型コロナウイルスワクチンの「一律の接種推奨」を終了する方針を全会一致で決定した。今後は医師や看護師などの医療従事者と相談し、患者ごとに接種の必要性を判断する「個別対応」へと転換する。対象は生後半年以上のすべての人に及び、従来の「全員推奨」から大きな方向転換となる。
CDCは、健康な人にとって接種による恩恵は限定的であると説明する一方、基礎疾患を抱える人については引き続き有効性を認めた。委員会の議論では、一部の州や自治体が「医師の処方箋がなければ接種できない」といった条件を新たに導入すべきかどうかも検討されたが、医療アクセスを制限する懸念から見送られた。この決定の背景には、ワクチンに懐疑的な立場で知られるケネディ厚生長官が諮問委員を全面的に入れ替えた人事の影響が大きいとされる。
一方、日本では厚生労働省や感染症学会が2025年冬季に向けても高齢者や基礎疾患を持つ人を中心に新型コロナワクチンの定期接種を推奨している。公費による接種は2024年3月で終了したが、65歳以上や基礎疾患のある人については引き続き補助を受けて接種することが可能であり、流行株に対応した新しいワクチンも供給されている。
日本は「科学的データに基づき重症化リスクの高い層に接種を勧める」という慎重な路線を堅持しており、米国のように「一律推奨をやめる」姿勢とは対照的に、推奨対象を明確にし続けている点に特徴がある。
また米国は「健康な個人には特段の推奨をしない」という政府判断を示したのに対し、日本は「高齢者や基礎疾患層に科学的根拠に基づき推奨する」という立場を維持している。米国の決定にはCDC委員構成の変更や反ワクチン派の影響といった政治的背景が色濃く反映されているが、日本では同様の要素は見られない。
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