政府は10月9日より、輸出リスク審査の対象範囲を大幅に拡大し、企業に対して輸出製品が「軍民両用」であるかどうかの事前確認を義務づける新制度を施行する。これは、民間技術が軍事転用されるのを防ぐための重要な措置である。
経済産業省によれば、新たに規制対象となるのは、機械工具、レーダー、集積回路(IC)、無人機(ドローン)およびその部品、ナビゲーション装置、試験機器の6つの分野である。企業は、輸出前に当該製品が軍事目的に使用される可能性がないかを自主的に確認し、リスクが認められる場合は、経産大臣に特別な輸出許可を申請しなければならない。
これまでは、「外為法(外国為替及び外国貿易法)」に基づき、安全保障貿易管理制度を運用してきたが、その対象は主に国連安保理の武器禁輸国(アフガニスタン、北朝鮮、イラクなど10か国)に限定されていた。今回の制度改正により、対象国が大幅に拡大され、「グループA」(アメリカ、欧州諸国、韓国など27か国)以外の全ての国・地域が対象となり、中国や東南アジア諸国も含まれる。
2024年度の統計によると、これら6分野の輸出総額は約4兆6700億円(約310億ドル)にのぼり、総輸出の約4%を占める。中でもICの輸出が最大で、台湾向けが約1兆1400億円、ASEAN諸国向けが約9370億円、中国向けが約9230億円であった。ICは民生用として広く使用される一方で、軍用機器への転用リスクも高く、厳格な管理対象とされている。
日本製の機械工具は、従来兵器や軍需装備の製造に使用可能であり、中国やインド、東南アジアへの輸出が多いことから、これも厳しく監視される。実際に一部の高精度な機械がドイツや日本から中国の軍事関連機関に流入した事例も報告されている。
大手製造業ではすでに対応を開始しており、日本製鋼所は審査項目を増やし、IHI(旧「石川島播磨重工業」)や三菱重工も社内規則を見直している。特に中小企業にとっては行政的・情報的な負担が大きく、政府による支援や情報共有が求められている。
また、「間接輸出」の抜け道にも警戒を強めており、たとえアメリカや欧州などの管理国を経由しても、最終的に軍事転用の恐れがある場合は輸出許可が必要とされる。
政府は、同盟国との連携を強化しつつ、通常の貿易を妨げないよう配慮しながら、技術の流出を防止する体制を整えていくとしている。
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