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NHK会長 GHQ下の報道「懺悔」要求に慎重姿勢 =参院総務委

2025/12/03
更新: 2025/12/03

2025年12月2日に開かれた参議院総務委員会において、日本放送協会(NHK)の事業運営に関連し、参政党の松田学議員が公共放送の歴史認識形成における役割と、GHQ占領下における報道統制の問題について、NHKの稲葉延雄会長に質疑を行った。

2025年12月2日、参議院総務委員会で質疑する松田学(参政党)議員(参議院インターネット審議中継スクリーンショット)

公共放送の使命と歴史認識

松田議員はまず、受信料によって賄われる公共放送としてのNHKの役割を再確認したうえで、日本の歴史的を事実を国民に伝えることは、国民の歴史認識を形成していくうえでNHKの重要な使命の一つではないかと質問した。松田議員は、海外で自国の歴史をよく知り、誇りを持つ人々と比較し、日本人が自国の歴史を知らない現状を指摘し、日本国民として自国の歴史をより知ることが重要だと強調した。

これに対し稲葉会長は、NHKは公共放送として日本の歴史を国民に広く伝えることは「大変重要なこと」だと認識しており、ドキュメンタリーや教養、教育番組など多様な番組を制作していると答弁した。会長は、今後も放送法や番組基準に基づき、公平不偏、自主自立の立場を堅持していく基本姿勢は変わらないとした。

 

GHQ占領下の報道統制と「告白懺悔」要求

松田議員は質疑の焦点を、終戦直後のGHQ占領下の報道統制へと絞り込んだ。議員は、占領下では戦前・戦中よりも遥かに厳しい検閲を伴う徹底的な言論統制が実施され、7,000冊を優に超える本が禁書とされ、歴史の真実が人々の目に触れることなく葬り去られてきた経緯を指摘した。

松田議員は、この時期のGHQ統治に焦点を当てた番組事例があるかを尋ねたところ、NHKの山名啓雄政務理事は、占領期は日本の政治社会にとって重要な転換点であるとし、『映像の世紀バタフライエフェクト』や『NHKスペシャル』などで憲法や教育制度といったテーマを取り上げてきたと回答した。

松田議員はさらに、終戦直後の1945年12月9日からゴールデンアワーにラジオ放送された『真相はこうだ』を取り上げた。この番組はGHQの指令に従い、日本軍の残虐性などを中心に伝えられ、日本国民の過度な自虐史観の形成につながったのではないかという疑惑がある。

松田議員は、本年1月、山下英次大阪市立大学名誉教授らが中心となり「日本の真の独立を目指す有識者会議」が稲葉会長に公開書簡を送付した事実を提示した。この有識者会議の主張は、戦後NHKはGHQの「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(War Guilt Information Program、WGIP)」に加担させられ、主権回復後もGHQが植え付けた一種の自虐史観を基本的に踏襲してきた結果、日本は未だに「歴とした独立国になれないでいる」というものであった。

WGIPとは、第二次世界大戦終結後の日本占領期に、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)によって行われたとされる情報・再教育政策だ。

この公開書簡は、元NHK専務理事放送総局長であった春日由三氏が、自著『体験的放送論』の中で『真相はこうだ』について「国民に済まないことをした」と告白懺悔した事実を引用し、NHKとして当時GHQの報道に加担した事実について「指摘」と「告白」をしてほしいという内容であった。

また、松田議員は、この公開書簡への回答後、有識者会議からGHQ時代のNHK報道の実態を検証するプロジェクトチームを局内に設置すべきという意見も出ていることを付け加えた。

 

NHK会長の見解「懺悔要求は飛躍がある」

有識者会議からの書簡や見解について、稲葉会長は以下の見解を述べた。

会長は、今年1月以降数回書簡を受け取り、4月に回答を送付したことを認めたうえで、敗戦後のGHQによる占領期という「現在とは大きく異なる特殊な政治体制下」において、当時の報道機関がどのような統制を受けていたかという点について、歴史的な問題として専門家による検証が進むこと自体、「大変意義のあることだ」と認識しているとした。

しかし、その一方で、「そうした過去の特殊な政治体制化における経緯をもって現在のNHKに懺悔が必要であるとのご主張についてはやや飛躍がある」と回答したことを明らかにした。現在のNHKは、昭和25年に制定された放送法に基づき、自主自立や公平公正、不偏不党といった原則を堅持しており、その姿勢は揺るぎないものとなっているという考えを再度強調した。

 

新たな知見と真実の伝達

松田議員は、近現代史研究の進展により新たな知見が得られている点を指摘し、歴史認識を巡る議論を深めた。議員は、開戦直前の1941年に日本側が日米戦争を避けるためルーズベルト政権に会談を重ねる努力をした事実 や、ルーズベルト政権が資産凍結、対日石油輸出禁止、ハル・ノートなどで日本を真珠湾攻撃に追い込んだのではないかという見解がアメリカ側からも出ていることを紹介した。

松田議員は、軍国主義を正当化するつもりはないとしつつも、「戦争が起こった真の原因を検証することが今後の平和につながる」との考えを述べた。その上で、歴史認識に関わる内容をタブーとせず、新しい歴史研究の成果なども取り上げ、史実を国民に伝えることは公共放送の使命ではないかと、会長に最後の所見を求めた。

稲葉会長は、歴史に関わる研究を含め、様々な知見を取材し、見解が分かれる場合には「できるだけ多くの角度から論点を明らかにする姿勢」で番組を制作していきたいと応じた。そして、全ての番組において放送法、番組基準ガイドラインに基づき、公平公正、不偏不党の立場を堅持して放送に当たっていくことを改めて表明した。

松田議員は、日本国民が「自らの国に健全な誇りを持てる」ような報道を公共放送として担ってほしいと、NHKの役割への期待を述べて質疑を終えた。

▶大紀元EPOCH TIMES JAPAN編集長 ▶「日本の思想リーダーズ」「THE PARADOX 真実のへ扉」番組ナビゲーター 、「大紀元ライブ」番組ホスト。