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対中投資が鈍化 外資系企業リスク回避で「維持運営」へ転換

2025/12/19
更新: 2025/12/19

中国で外資系企業の投資行動に変化が出ている。統計上は新設外資企業が増える一方、実際に中国に流入する外資額は減少し、多国籍企業は「新たなリスクは負わない」として追加投資や拡張を見送っている。中国市場を成長エンジンから「維持運営」の拠点へと位置づけし直し、サプライチェーンを東南アジアなど複数拠点へ分散する動きが静かに広がりつつある。

中国共産党(中共)当局の統計データおよび複数の外国商工会議所による年次調査によると、中国における外資企業の新たな投資への意欲が低下していることがわかった。一部の多国籍企業は拡張計画を延期または撤回し、資本や生産能力の一部を中国以外の地域へ振り向けている。複数の外資関係者は記者に対し、こうした動きは外資が自社のグローバル投資戦略における中国の位置づけを再評価していることを示していると述べた。

中共商務部が公表した公式統計によれば、2025年の第3四半期までに新設された外資企業数は前年同期比で16%以上増加した一方、実際に利用された外資額は約10.4%減少した。専門家によると、新設企業数の増加は必ずしも実質的な資本投入の拡大を意味するものではなく、企業登録の活発化と資金流入の鈍化との間で明確な乖離が生じている。

珠江デルタから全国へ広がる投資鈍化

広東省の退職したばかりの元官員・張氏は記者に対し、今年に入ってから中国本土では多くの新規投資プロジェクトが延期され、一部の資本が東南アジア、インド、その他の市場へと移転していると語った。「一部の企業は、中国での事業を成長のエンジンではなく、既存事業を維持するための拠点として再定義している」と述べ、「広州や仏山などの都市の発展改革委員会が今年重点的に取り組んでいるのは外資の安定化だが、この環境下で外資を引き留め、撤退を防ぐのは容易ではない」と付け加えた。

張氏はまた、珠江デルタ地域における外資投資の減少は個別の事例ではなく、より広範な傾向だと指摘した。「上海、深圳、江蘇、浙江、さらには東北地方でも同様の状況が見られる。外国企業の目には、中国で投資しても10年前のような高い利益を得るのは難しく映っている」と述べた。

公式データと市場の反応からも、外資の投資行動に変化が現れている。複数の関係者によると、現在の外資企業は、かつてのように工場閉鎖や撤退公表といった派手な動きではなく、意思決定の延期、配置計画の緩和、リスク露出の抑制といった形で調整を進めているという。

リスク回避で新規投資凍結と多拠点戦略へ

長年にわたり外資企業の中国投資を支援してきた袁氏は、「中国に進出する多くの多国籍企業にとって、『新たなリスクは負わない』というのが社内の共通認識になりつつある」と述べた。「撤退する必要はないが、まずは立ち止まって様子を見るという姿勢だ」と説明する。

袁氏はさらに、多くの企業が現在、中国での事業を「維持的運営」と位置づけており、既存の注文や顧客関係を優先的に確保しつつ、新たな資本投入や長期的コミットメントを控えていると述べた。「つまり、『今はこれ以上中国に追加投資しない』という判断である」と語った。

また袁氏は、中国での経営における不確実性が高まっているため、各社が中長期計画の策定においてより慎重になっていると指摘した。「一部の事業は依然として利益を上げているものの、経営陣は制度環境、コンプライアンスコスト、言論リスクなどを主要な判断要素として重視するようになっている」と述べた。

複数の外国商工会議所や調査機関の報告も、この傾向を裏付けている。欧州商会、アメリカ商会、国際コンサルティング機関などが会員企業を対象に行った年次調査によると、多くの企業は中国での事業を維持しているが、翌年に中国投資を増やすと回答した企業の割合は年々低下し、現状維持またはリスク縮小を選ぶ企業が増加している。

アメリカ商会(AmCham China)が2024年12月26日に発表した「2025年度ビジネス環境調査報告書」によれば、一部の外資企業はグローバル投資ポートフォリオにおける中国の優先順位を引き下げた。これは、企業が中国市場の役割を再定義しようとしていることを示している。

政策リスクやコンプライアンス費用が判断軸に

中国で事業を展開するドイツ系自動車メーカーの責任者・丁氏は次のように語った。「これまでは投資評価の際、市場規模やコスト構造が主な焦点だった。しかし現在では、政策解釈の幅、データコンプライアンス要件、突発的リスクが投資判断を左右する重要な要素となっている。これらは数値化が難しいが、一度発生すれば影響は不可逆的である」と述べた。

丁氏によれば、外資が「立ち止まって観察する」とは単なる静観ではなく、経営判断における具体的な調整を意味する。それには、新規投資プロジェクトの延期、拡張計画の見送り、採用規模の凍結、さらに中国で予定されていた生産能力や研究開発リソースの一部を他国へ振り向けるといった措置が含まれる。

サプライチェーンの変化も、外資による中国事業再編の動きを後押ししている。丁氏は「東南アジア、インド、ラテンアメリカの一部の国々が産業移転を積極的に受け入れており、外資企業は『多拠点配置』の戦略を採り始めている。中国はいまだ重要市場ではあるが、もはや唯一の選択肢ではない」と述べた。

複数の関係者は、こうした方向転換が一夜にして起きたものではなく、企業が数年にわたる内部討議や試算を経て徐々に導き出した判断であると指摘している。外部から見えるのは投資鈍化という結果だけであり、その背後には企業内部でのリスク評価と意思決定の過程があるという。

今後の中国経済環境について、丁氏はこう述べた――外資が「完全撤退ではないが、新規参入もしない」という状態は、短期的には目立った衝撃を与えないかもしれない。しかし、中長期的には産業構造や雇用情勢に影響を及ぼす。「公然と撤退するよりも、投資意欲の低下は目立たないが、実際の影響はより深刻になりかねない」と結んだ。

楊茜