1月2日深夜、トランプ米大統領は米特殊作戦軍に対し、ベネズエラの首都カラカスへのヘリボーン(ヘリコプター移動)による急襲を命じた。指名手配中のベネズエラ指導者ニコラス・マドゥロ氏を拘束するためである。この作戦は、数ヶ月にわたる準備と、絶好の機会を待った数週間の集大成であった。
当局者によれば、これは多くの失敗の可能性を孕んだ複雑な任務であったという。
「昨夜、我々は多くの人員を失う可能性があった。尊厳を失う可能性も、機材を失う可能性もあった。機材はそれほど重要ではないが、多大な犠牲を払う可能性があったのだ」。トランプ氏は1月3日、フロリダ州パームビーチにある自身が所有するクラブ「マー・ア・ラゴ」での記者会見でこう述べた。
1月3日の早朝、米軍の有人および無人の航空機数十機がベネズエラの防空網への攻撃を開始し、ヘリボーン襲撃チームがマドゥロ夫妻の滞在する要塞化された施設に着陸する道を切り開いた。着陸から数分以内に、特殊作戦部隊は施設内を突進。ベネズエラ軍の救援を待つためにセーフルーム(避難部屋)に立てこもる暇も与えず、マドゥロ氏とその妻シリア・アデラ・フローレス・デ・マドゥロ氏を捕らえた。
トランプ氏が任務開始の命令を下してから、襲撃部隊がマドゥロ夫妻を連行してベネズエラ領空を安全に離脱するまで、経過した時間は5時間に満たなかった。この任務において、米軍側に死者は一人も出なかった。
高まる圧力
マドゥロ氏は長年、米国政府の指名手配リストに載っていた。2020年3月、ニューヨーク南部地区連邦地裁は、マドゥロ氏とベネズエラ政府高官らを起訴した。米国が指定するテロ組織と結びついた麻薬密売組織のトップにマドゥロ氏が君臨しているという容疑である。
2020年の起訴を受け、司法省はマドゥロ氏の拘束につながる情報に対して1500万ドルの懸賞金を発表した。
2025年8月、司法省はこの懸賞金を5000万ドル(約75億円)に引き上げた。その数週間後、米軍はカリブ海に前例のない規模の軍事資源を集結させ始めた。これには多数の軍艦や、約2200名の米海兵隊員を擁する水陸両用作戦を実施する両用即応群(Amphibious ready group, ARG)が含まれていた。最終的にこの兵力増強は、空母「ジェラルド・R・フォード」を中心とする空母打撃群を含む規模にまで拡大した。
9月までに、トランプ氏はカリブ海および東太平洋で活動する麻薬運搬船を標的とした致命的な攻撃を命じ始めた。9月2日に最初の攻撃を発表した際、トランプ氏は標的を「トレン・デ・アラグア(TDA)」のメンバーであると特定した。TDAはベネズエラを拠点とする犯罪組織で、2025年初頭に米国務省によってテロ組織に指定されている。
「TDAは指定外国テロ組織であり、ニコラス・マドゥロの支配下で活動している。米国および西半球全域における大量殺人、麻薬密売、性売買、そして暴力とテロ行為の責任を負っている」。トランプ氏は9月にSNSでこう記した。
トランプ政権はマドゥロ氏を麻薬密売組織の首領として描き続けてきた。11月、国務省は「カルテル・デ・ロス・ソレス(太陽のカルテル)」を外国テロ組織に指定し、マドゥロ氏をそのトップだとした。このカルテルはベネズエラ政権に組み込まれた犯罪組織であり、マドゥロ氏が権力を握る前の1990年代から、さまざまなメディアでその存在が指摘されてきた。
高まる圧力に対し、マドゥロ氏はベネズエラ軍と義勇兵組織に最高度の警戒態勢を命じていた。

揺さぶりと追跡
船舶への攻撃作戦が展開される一方で、トランプ氏は地上標的への攻撃の可能性を繰り返し示唆していた。米軍がベネズエラ本土を攻撃するかどうかについて、トランプ氏はマドゥロ氏に疑心暗鬼を抱かせ続けた。
「心は決まっている」。11月14日、大統領専用機エアフォース・ワンの機内でトランプ氏は記者団に語った。「今後の展開を見守っていてほしい。具体的に何をするかはまだ言えないが、ベネズエラからの薬物流入を阻止するという点において、我々はすでに大きな成果を上げている」。
12月に入り、トランプ氏は制裁対象となっているベネズエラ発着の石油タンカーの封鎖を発表した。これまでに、同地域の米軍は2隻の石油タンカーを拿捕し、3隻目をベネズエラから追い払っている。
2025年12月26日、トランプ氏は同地域における米軍による最初の地上標的への攻撃に言及し、その後12月29日には、その攻撃が麻薬運搬船の積み込みに使用される施設を標的にしたものだったと述べた。
圧力作戦が続く中でも、トランプ氏はマドゥロ氏に退陣の機会を与えたという。
「会話の内容には踏み込みたくないが、私は彼と話し、『降伏しなければならない』と伝えた」とトランプ氏は土曜日、フロリダで記者団に語った。「実際、彼は降伏にかなり近づいていると思っていた。だが今、彼はあの時そうしておけばよかったと思っているだろう」。
軍事襲撃自体は数時間で終了したが、そこに至るまでには、マドゥロ氏がどこに隠れているか、どのような防衛網を備えているかを特定するための、情報機関による数ヶ月に及ぶ努力があった。
土曜日の記者会見に同席したダン・ケイン統合参謀本部議長(陸軍大将)は、任務を支援した情報機関として中央情報局(CIA)と国家安全保障局(NSA)を挙げた。また、宇宙軍や国家地理空間情報局(NGA)が管理する資産を含む宇宙ベースの能力も、マドゥロ氏の所在追跡に役割を果たした。
ケイン議長によれば、マドゥロ氏を監視していた情報機関は「彼の動き、住居、旅行先、食事、服装、ペットに至るまで」を詳細に調査したという。
マドゥロ氏の与党「ベネズエラ統一社会党」の指導者ナウム・フェルナンデス氏は、AP通信に対し、襲撃当時、マドゥロ夫妻は「フォルト・ティウナ」軍事施設内の居住区にいたと語った。
「そこが爆撃された場所だ。そしてそこで、大統領とファーストレディの誘拐とも呼べる行為が行われたのだ」とフェルナンデス氏は述べた。
情報部門がマドゥロ氏の所在に関するあらゆる詳細を集める一方で、襲撃部隊はマドゥロ氏の邸宅の模型を使って徹底的な訓練を行った。
「彼らは、実際に突入する家と全く同じ家を建てたのだ」。トランプ氏は土曜日にFOXニュースに語った。
好機
12月初旬、世間がホリデーシーズンや新年に関心を向ける中、作戦の駒は最終的に整った。そこからは待ちの段階に入った。
米情報機関のベテラン職員は以前「エポックタイムズ」に対し、早ければ2025年12月8日にもマドゥロ拘束任務を行う計画があったと語っていた。
ケイン議長は、トランプ氏が「民間人の被害を最小限に抑え、奇襲の効果を最大限に高める」ための完璧な瞬間を待っていたと述べた。
また、マドゥロ夫妻を生け捕りにして「司法の場に引き出す」ことも、適切なタイミングを選ぶ重要な要素であったと付け加えた。
1月2日までに、それらの正確な条件が整った。東部標準時午後10時46分、トランプ大統領は任務遂行の命令を下した。
「昨夜、天候がちょうどよく回復し、世界で最も熟練したパイロットにしか操縦できない、海面や山間部の低い雲の切れ間を縫う経路が確保された」。ケイン議長はそう説明した。
突破口
トランプ大統領の命令を受け、米軍は政権が「オペレーション・アブソリュート・リゾルブ(絶対的決意作戦)」と呼ぶ作戦を前進させた。
海軍、海兵隊、空軍、空軍州兵から150機以上の米軍機がこの任務を支援した。
襲撃部隊を運んだヘリコプターのほかに、ケイン議長はF-22ラプター、F-35ライトニングIIといったステルス戦闘機、F-18スーパーホーネット戦闘機、B-1bランサー爆撃機を列挙した。また、EA-18Gグラウラー電子戦機が、ベネズエラの防空網の制圧を支援した。
多数の遠隔操縦ドローンを含む他の支援機も任務を助けた。
「部隊がカラカスに接近し始めると、統合航空コンポーネントがベネズエラの防空システムの解体と無力化を開始し、ヘリコプターが目標エリアへ安全に通過できるように武器を使用した」。
ベネズエラの防空網に混乱の雨が降り注ぐ中、ヘリボーン襲撃部隊は事実上検知されることなく目的地点へと進んだと、作戦立案者は評価している。
部隊が接近する間も、地上ベースの情報チームがマドゥロ氏の所在地の状況をリアルタイムでアップデートし続けた。
混沌の中の疾走
東部標準時午前1時1分、ヘリボーン襲撃部隊はマドゥロ氏の要塞化された施設に到達した。
ケイン議長によれば、ヘリコプターは施設に接近する際に射撃を受けたが、これに応戦した。
「我々の機体の一機が被弾したが、飛行は可能だった」と議長は述べ、関与したすべての航空機が発進地点に安全に戻ることができたと付け加えた。
襲撃部隊が着陸すると、隊員たちは要塞化された施設を駆け抜け、マドゥロ氏のもとへ到達した。
トランプ大統領によれば、マドゥロ氏は施設内の鋼鉄製のセーフルームに逃げ込もうとしたが、途中で多数の防衛部隊と交戦しながらも、隊員たちのスピードが勝り、彼が鍵をかける前に捕らえたという。
「我々の精鋭部隊があまりに速かったので、彼はドアに手をかける暇もなかったのだ」。
たとえマドゥロ氏がセーフルームに立てこもることに成功していたとしても、チームは鋼鉄のドアを爆破して突入する準備ができていたとトランプ氏は述べた。
「約47秒。47秒でドアを爆破していただろう」。
襲撃部隊がマドゥロ氏を捕らえ、彼とその妻を待機中のヘリコプターへと連行する間も、戦闘は続いた。
「部隊がベネズエラから撤収を開始する際、複数の自衛戦闘が発生した」とケイン議長は述べた。「部隊は首尾よく脱出し、洋上の発進基地に帰還した。午前3時29分には洋上に出た」。

トランプ氏はその後、強襲揚陸艦「イオウ・ジマ」の艦上で、目隠しをされ手錠をかけられたマドゥロ氏とされる写真を投稿した。マドゥロ氏の側には、米麻薬取締局(DEA)のパッチを付けた人物の姿が見られた。
ピート・ヘグセス国防長官は、「地球上のどの国も、これほどの作戦を成し遂げることは到底不可能だ。我々の軍事力は、他国の追随を許さないレベルにある」と述べた。
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