張又侠失脚の背後に誰が? 中国共産党軍に影響力を持つ意外な人物

2026/10/01
更新: 2026/10/01

中国共産党(中共)党首の習近平は、先日の訪米中、彭麗媛夫人の手を何度も強く握っていた。このため、彭夫人は習近平の「つえ」とやゆされ、習近平の健康状態についても臆測が広がった。米中央情報局(CIA)の元当局者は、習近平の彭夫人への依存は儀礼上のものにとどまらず、彭夫人には軍内に幅広い人脈があり、習近平はその人脈に強く依存していると述べた。

元米当局者「習近平は彭夫人の軍内人脈に依存」

習近平と彭麗媛夫人は9月下旬、ワシントンを訪問した。航空機のタラップを上り下りする際や、米国立公文書館の階段を上る際、習近平は彭夫人の手を強く握っていた。海外メディアやネット利用者は、習近平が妻を「人間のつえ」にしているとやゆし、習近平の健康状態や中共指導部の権力構造について臆測が広がった。中共の公式メディアは、習近平が夫人の手を強く握る映像を全て削除した。

先ごろの訪米中、彭麗媛夫人の手を何度も強く握った中国共産党指導者の習近平(動画のスクリーンショット)

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは9月29日、CIAの元中国担当上級分析官、デニス・ワイルダー氏が、彭夫人は単なる習近平夫人ではなく、中共の軍内に幅広い人脈を持ち、「習近平は彼女の人脈に強く依存している」と述べたと報じた。

ワイルダー氏によると、習近平には彭夫人のような軍内の人脈がない。

公開情報によると、彭夫人は少将相当の文官としての身分を持ち、2012年に人民解放軍芸術学院の院長に任命された。軍の一流の文芸活動従事者として高位の階級を持つ。同学院は2017年の軍改革で国防大学に統合された。

ワイルダー氏は、彭夫人の実際の仕事は、中共軍の幹部を審査する評価制度の一部に属すると指摘した。

同氏によると、習近平より9歳年下の彭夫人は、習近平が政権を握る前、長年にわたり公演団とともに各軍区を巡り、宴席に参加して軍高官と知り合った。言い換えれば、誰が忠実で、誰が忠実でないかを示す「地図」を持っているという。

軍内の「夫婦経営」と軍の権限を巡る争いのうわさ

オーストラリア在住の法学者、袁紅氷教授は2月23日、「看中国」に対し、習近平は長年、軍内で「夫婦経営」を続けてきたと述べた。彭夫人は、中央軍事委員会幹部考査評価委員会の専任委員という実権を伴う肩書を持つという。これまで軍高官の昇進には、かなりの程度、彭夫人の意見を求める必要があり、このやり方が軍の将官の強い不満を招いたとしている。

2024年5月初め、SNSで広まった写真では、彭夫人は軍服を着て少将の階級章を付けていた。写真の下の説明文には、中央軍事委員会幹部考査評価委員会の専任委員として、軍学校で人材育成体制を視察したと記されていた。

習近平は政権を握った後、軍改革を進め、7大軍区を5大戦区に再編し、軍人の昇進権限を中央軍事委員会政治工作部に集約した。2016年には中央軍事委員会幹部考査評価委員会を設け、軍の昇進を掌握した。彭夫人は専任委員として、軍の人事審査に関与した。当時、この写真は、彭夫人がひそかに軍の権限を握り、さらには習近平の後継者になる準備をしているとのさまざまな臆測を呼んだ。

軍内の実力者である張又侠は、彭夫人がひそかに軍の権限を握るうえでの障害とみられていた。

独立評論家の杜政氏は以前、台湾メディア「上報」への寄稿で、張又侠と中央軍事委員会副主席の何衛東、同委員で政治工作部主任の苗華との間で深刻な内紛が起きたと分析した。何衛東と苗華は実際には彭夫人に近く、彭夫人が軍の人事に介入する際の実務を担っていたという。

中共当局は2025年10月17日、何衛東、苗華ら9人の高級将官を、重大な規律・法律違反を理由に党籍と軍籍から除名したと発表した。この中には、中央軍事委員会幹部考査評価委員会の常務副主任、何宏軍も含まれていた。何宏軍は、人事制度における彭夫人の意向を具体的に実行する人物とみられていた。

苗華と何宏軍の失脚後、人事を担当する中央軍事委員会政治工作部は再編された。ネット上では、彭夫人が当時、軍事委員会の人事関連業務から一時退かざるを得なくなったとの情報が広まった。

袁氏は当時、何衛東と苗華の失脚から半月もたたないうちに、実権を握る中央軍事委員会副主席の張又侠が、同委員会の拡大会議で、高級軍人の昇進に重大な誤りがあったと公言したと明かしていた。張又侠は「権力を1人に集中させるなら、責任もその1人が負わなければならない」と述べ、高級軍人の任命を「鶴の一声」で決めてはならず、ましてや「夫婦経営」にしてはならないと語ったという。

袁氏によると、張又侠と中央軍事委員会連合参謀部参謀長の劉振立は、70人以上の将官の名簿を連名で提出した。名簿は軍人10万人の「意向調査」に基づき、「軍の総意」を表すと説明したという。この行動は、習近平が持つ軍の最高任命権への直接的な挑戦とみられた。

一方、杜氏は、彭夫人が裏で働きかける中、習近平は中央軍事委員会規律検査委員会書記の張升民の助けを借り、1月下旬に張又侠とその盟友である劉振立を失脚させたと述べた。

張又侠と劉振立の失脚後、軍の人事異動が相次ぎ、北京衛戍区、上海警備区、武装警察天津市総隊のトップが交代した。

彭夫人は権力の表舞台に立つのか

ワイルダー氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、彭夫人は江青以来、中国で最も権勢のある女性だと述べた。

彭夫人については近年、政権に関与する意図があるとの指摘がたびたびあり、毛沢東の妻、江青になぞらえられてきた。政治局入りするとの見方が示されたこともある。

独立評論家の蔡慎坤氏は以前、彭夫人が近く政治局入りして重要な役職に就く兆候は見られないものの、山東省出身の彭夫人は人事上の推薦権をすでに持っている可能性があり、多くの山東省出身者の任命や重用と関係していると分析した。彭夫人は私的な訪問や視察の際、幹部と接触し、その人物を見極めてもいるという。山東系の幹部は、中共指導部への「忠誠」で知られている。

李尚福前国防相の解任後、後任に就いた董軍は山東省出身である。董軍は習政権発足当初の3年間に3階級昇進し、彭夫人と同じ山東省出身であることの恩恵を受けたとの情報がある。

杜氏は以前の寄稿で、国内外の危機が同時に深まる中、習近平は退任後、あるいは在任中に死亡した場合でも責任を追及されないよう、すでにひそかに後継者を探している可能性があり、習近平の後に彭夫人が権力を握ることもあり得ると分析した。また、彭夫人が将来権力を握った場合、主な脅威は習近平が登用した軍人たちから生じるとしている。

一方、オーストラリア在住の学者、袁紅冰氏は、彭夫人が表舞台に立つ可能性は低いものの、軍の人事の掌握において、彭夫人は確かに習近平の唯一の腹心だとみている。

唐兵