10月4日に投開票されたブラジル大統領選の第1回投票で、ジャイル・ボルソナロ前大統領の長男で保守派のフラビオ・ボルソナロ上院議員が、現職ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領を上回り首位に立った。多くの世論調査の予測を覆す結果で、両氏は10月25日の決選投票で対決する。
得票率はボルソナロ氏が47.2%、ルーラ氏が44.9%だった。両氏とも当選に必要な過半数に届かず、10月25日の決選投票に進む見通しとなった。
今回の選挙には12人が立候補した。ボルソナロ氏は約5600万票、ルーラ氏は約5370万票を獲得し、両者で大半の票を占めた。
次の大統領は2027年1月5日に就任する予定である。ブラジル議会は、就任式が年始の祝祭期間と重なることを避けるため憲法を改正し、大統領の就任日を1月5日に変更した。
選挙戦では、生活費の上昇、汚職、治安の悪化、連邦最高裁に対する不信感などが主な争点となった。ボルソナロ氏は経済の立て直しと生活費の抑制を掲げた。一方、ルーラ氏はオンライン賭博の取り締まり強化、社会保障の拡充、家計債務の軽減策などを訴えた。
サンパウロなど南東部でボルソナロ氏が優勢
ボルソナロ氏は、ブラジル南東部の主要州で強さを見せた。国内最大の州、サンパウロ州では52%を得票し、ルーラ氏の38%を大きく上回った。
選挙の行方を左右する州とされるミナスジェライス州でも、ボルソナロ氏は48%を得て、ルーラ氏の43%を上回った。自身の地盤であるリオデジャネイロ州では53%を獲得し、39%のルーラ氏に大差をつけた。
一方、ルーラ氏は伝統的な支持基盤である北東部で大きくリードした。バイーア州、ペルナンブコ州、セアラ州などの有力州で大差をつけて勝利した。しかし、北東部で得た票だけでは、ボルソナロ氏が南部と南東部で築いた優位を覆すには至らなかった。

アウグスト・クリ氏、レナン・サントス氏、ロナウド・カイアド氏、ロメウ・ゼマ氏らほかの候補は、合わせて約8%を得票した。これらの候補が今後、どちらの陣営への支持を表明するかは明らかになっていない。
世論調査は保守系候補を過小評価か
投票直前まで接戦が続いていた。Quaest、Datafolha、AtlasIntel、CNT/MDAなど複数の世論調査機関は10月初め、ルーラ氏が第1回投票で1~3ポイント、決選投票でも1~2ポイントリードすると予測していた。
しかし、実際の結果では、ボルソナロ氏が多くの世論調査の予測を上回った。これを受け、同氏の陣営では決選投票に向けて勢いがついた。一方、一部の支持者の間では、調査機関がルーラ氏や労働党に偏っているのではないかという見方も出ている。
シンクタンク「イガラペ研究所」の共同創設者、ロバート・マガ氏はロイター通信に対し、「世論調査機関による第1回投票の予測は大きく外れた。同じ問題は決選投票に関する調査にも当てはまる可能性がある。ボルソナロ氏への支持を同様に過小評価するおそれがある」と指摘した。
ボルソナロ氏は投票日朝、リオデジャネイロで記者団に対し、 本来は別の候補に投票するつもりだった有権者が、ルーラ氏への反対票として自分に投票することを期待していると述べた。
実際、当初はボルソナロ氏を支持するつもりがなかった有権者の中にも、「ルーラ氏と労働党を政権から退かせる」ために同氏に投票した人がいた。ロイター通信には、ブラジル経済の再建を期待してボルソナロ氏に投票したと語る有権者もいた。
一方、ルーラ氏を支持する有権者の一人はAP通信に対し、ボルソナロ氏が勝利してもブラジルは良くならず、米国政府がブラジルへの影響力を強める機会を与えるだけだと懸念を示した。
中南米で続く保守勢力の伸長と米国との関係
選挙期間中、ボルソナロ氏は米トランプ大統領との関係を強調してきた。5月27日にはワシントンで、トランプ氏、J・D・ヴァンス副大統領、マルコ・ルビオ国務長官と会談した。
同氏は、今年の大統領選で勝利した場合、トランプ政権が主導する「米州の盾(The Shield of the Americas)」構想にブラジルも参加する考えをトランプ氏に伝えた。この構想は、麻薬組織や不法移民への対策を進めるとともに、米州地域での中国共産党の影響力を抑えることを目的としている。
同構想には今年3月、ラテンアメリカ・カリブ海地域の17か国が加わったとされる。
ボルソナロ氏が最終的に勝利すれば、チリ、アルゼンチン、ペルー、エクアドル、ボリビアに続く、中南米での保守勢力の伸長を示す動きの一つとなる可能性がある。
一方、ルーラ氏が再選した場合、米国にとっては対ブラジル政策が大きな課題となる。米国とルーラ政権はこれまでにも、貿易や安全保障をめぐって繰り返し摩擦を起こしてきたためだ。
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