国際人権団体が新たに公表した調査報告書は、中国共産党(中共)が海外の華人団体や地域組織を通じて、違法な警察拠点と監視網を拡大していると指摘した。報告書によると、中共は2022年に海外の秘密警察拠点が明るみに出た後も活動をやめず、仕組みを見えにくくしながら拡張しており、世界の約1250の地域組織が、中共中央統一戦線工作部の海外連絡拠点であることを認めているという。
スペインの国際人権NGO「セーフガード・ディフェンダーズ」は最新報告書で、中国共産党が新たな地域団体を通じて「触手を伸ばし」、違法な海外警察拠点のネットワークを大幅に拡大していると指摘した。世界91か国にある約1250の海外華人団体が、警察拠点を隠すための組織として機能している疑いがあるという。
今回の数字は、4年前の調査結果の約12倍に上る。2022年、同団体はカナダを含む50か国以上で、中国共産党の違法な警察拠点100か所が活動していることを確認していた。
CTVニュースの11月6日の報道によると、同団体で中国問題を担当するローラ・ハース氏はインタビューで、「このネットワークは海外の華人社会を監視し、人々が何をし、何を話しているかを把握するために使われている。実際には、人々を警察による管理下に置いている」と述べ、最新報告書『弾圧の公式:中国共産党による世界規模の地域社会管理網(A Formula for Repression– China’s Global Grid for Community Control)』は、中共が「国内の監視・統制体制を、世界各地の海外華人社会に輸出している」と指摘した。現在、海外に居住する中国国民は6千万人を超える。
国際危機グループの上級顧問、マイケル・コブリグ氏は、この報告書が明らかにしたのは、中共による影響力拡大の「初期段階」であり、その目的は世界各国の政治的選択に影響を与えることだと述べた。
元カナダ外交官のコブリグ氏は、2018年に中共によって恣意的に拘束された。同氏は、セーフガード・ディフェンダーズが明らかにした「衝撃的な」仕組みによって、「カナダ国民が自由に意見を表明し、自らの意思で投票する権利が徐々に侵食されている」と指摘した。
中共が「切り札」と見なす手段
セーフガード・ディフェンダーズによると、これらの海外華人団体は、海外にいる中共の党務関係者によって運営され、北京の統一戦線工作部の指揮を受けている。中共党首 習近平は、人々がどこにいようと監視・統制するための「切り札」として、統一戦線工作部に言及したことがある。
同団体は、中国の警察や検察機関のウェブサイト、刊行物で、警察と連絡を取る「連絡拠点」であると認めていた地域拠点1247か所を特定した。中共は、世界に統一戦線工作部と関係する組織が「数万」あると主張している。
報告書の主な調査担当者であるハース氏は、中共は過去の違法活動が発覚しても自制せず、むしろ活動を隠すのが巧妙になったと述べた。
「彼らは教訓を学んだ。公安局は以前、積極的すぎたのかもしれない。海外拠点の壁や扉に、自分たちの標章まで掲げていた。しかし、2022年にセーフガード・ディフェンダーズが、世界各地に設置された『海外秘密警察拠点』による国境を越えた弾圧を初めて明らかにしてからは、より慎重になり、協力する具体的な団体名を公表しなくなった」
ネットワークはどのように拡大するのか
報告書は、中共が世界各地の地域社会のネットワークを通じ、どのように統制を行っているかを詳しく説明しており、調査担当者によると、中国の5省にある十数の公安部門が、海外各地の中国系連合会の拠点を通じて活動し、巨大なネットワークを形成している。これらの拠点は対外的には、海外華人の文化交流や、中国各地との商業・観光交流を促進する場とされている。
セーフガード・ディフェンダーズは2022年に中共の法執行機関と関係する地域団体80組織の名称を挙げ、その中に警察拠点を設ける団体が4組織あり、中共の触手が「日常生活のあらゆる隅々」にまで伸びていると警告している。

在カナダ中国大使館の回答
CTVニュースのコメント要請に対し、オタワの中国大使館は、こうした指摘に断固反対すると表明した。大使館は電子メールで、「中国はこれまで何度も立場を明確にしている。いわゆる『中国の海外警察拠点』など、そもそも存在しない」と述べた。
カナダでは575組織が統一戦線工作部と関係
セーフガード・ディフェンダーズの報告書によると、カナダでは現在、少なくとも18の海外華人団体が、中共による警察監視拠点として機能している。これらの団体は、同じ都市に複数の支部を持っている場合もある。
同団体は2022年、カナダに中共の違法な警察拠点が5か所あると明らかにしていた。
一方、報告書が引用した米シンクタンク、ジェームズタウン財団の追加調査では、カナダに統一戦線工作部と関係する組織が575あることが分かった。
新民主党のジェニー・クワン下院議員は、これらの指摘は懸念すべきものだと述べている。クワン氏はカナダの公共安全相に宛てた公開書簡で、「これらの指摘が事実であれば、政府の現在の対策では、こうした違法活動を抑止するのに不十分だということになる」「カナダは法律の抜け穴を塞ぎ、これらの活動を調査しなければならない。地域の住民が強要、威嚇、恐怖を受けることなく、発言し、活動を組織し、民主的権利を行使できるようにする必要がある」と述べた。
2015年に初当選した、カナダの中国系住民の割合が高いオンタリオ州スカボローの選挙区を代表しているゲーリー・アナンダサンガリー公共安全相は「いかなる形の外国による干渉も受け入れられず、決して容認しないといえる。ただ、これらの具体的な指摘については、現時点ではまだ指摘にとどまり、調査を経ていない」とし、結論を急ぐべきではないと述べている。
2023年、カナダ連邦警察(RCMP)は、モントリオールにある二つの華人サービスセンターに対する捜査を終了した。両センターには、中共の警察拠点として機能していた疑いが持たれていたが、最終的に刑事訴追は行われなかった。現在、関係団体は連邦政府を提訴している。

アナンダサンガリー氏は、法執行機関が責任を持って調査し、報告書の情報を追跡すると述べる一方、調査は「綿密かつ慎重」でなければならないと強調。一部の団体は実際にはスポーツ団体や読書会で、日常的には海外華人社会の住民に地域生活のサービスを提供しているだけだと説明した。
ハース氏は、一部の組織が娯楽や文化活動を推進している一方、別の組織は、例えば中共が好まない祝賀行事に参加するチベット人やウイグル人の集団を積極的に抑圧していると指摘。「正当と認められるべきではない体制に、正当性を与えてはならない。こうした行為は容認されないという明確なメッセージを発し、中共の統一戦線工作部に警告を送る必要がある」と述べた。
外国影響力登録制度は機能するのか
CTVニュースはアナンダサンガリー氏に対し、海外華人団体の調整役に外国代理人としての登録を求めることについて、中国大使館と協議したことがあるか質問した。
カナダの外国影響力透明性登録制度は8月に運用を開始した。関連法により、登録していない外国組織には25万~100万カナダドルの罰金が科される可能性がある。
アナンダサンガリー氏は、関連する周知活動は各国の大使館が担うべきであり、規定の順守を確保する責任は、カナダ初の外国影響力透明性コミッショナーであるアントン・ブーグマン氏にあると述べた。
同相はまた、現時点で確認されていない関係組織の数が、華人社会に困難をもたらすことを懸念していると述べた。
「もちろん、外国による干渉は懸念すべき問題である。しかし一方で、誤ったレッテルによって個人や地域社会を不必要な恐怖に陥れることも、同じく懸念すべきだ」
中国大使館は、海外団体の責任者に対し、カナダが新設した外国影響力透明性登録制度への登録を求めたことがあるかという、CTVニュースの別の具体的な質問には回答しなかった。
恐怖を感じる華人社会
違法な警察拠点をめぐり、最も注目を集めた事件の一つはニューヨーク市で起きた。5月、米国市民でニューヨークの福建省出身者団体の指導者、盧建旺氏(ルー・ジエンワン、別名ハリー・ルー)は、秘密警察拠点を設け、中共政府のために中国の異見を持つ人々に関する情報を収集したとして、有罪判決を受けた。カナダ連邦警察は、トロント、モントリオール、バンクーバーで、中共の警察拠点が疑われた5件を捜査したが、刑事訴追は行わなかったと述べている。
カナダ在住のウイグル人で、東トルキスタン国益センター(CETNI)のルキエ・トゥルドゥシュ事務局長は、中共の海外警察拠点が大幅に増えたことについて、「衝撃的で恐ろしい」が、意外ではないと述べている。
同氏は、新疆での中国共産党による人権侵害を非難する抗議活動を組織した経験があり、統一戦線工作部が異見を持つ人々を抑圧する様子を自ら目撃したという。
トゥルドゥシュ氏によると、中国の親族を訪問するための査証を得た一部のウイグル人活動家は、中国の国家法を支持する文書に署名するよう圧力を受けたとし「戻ってきた人々は皆、恐怖を感じていた。身を隠し、私の団体に来ることを恐れるようになった」と述べた。
同氏は、自身の団体にも中共の関係者が入り込み、指導部への攻撃や会員の監視を行っているのではないかと懸念している。
「これが、中共が地域社会を分断する方法だ。私たちは互いを信頼できなくなり、安全も感じられなくなっている」と述べた。
カナダと中国共産党の警察協力協定
セーフガード・ディフェンダーズの最新データの公表は、カナダのカーニー首相と習近平が新たな警察協力協定に署名してから、わずか11か月後のことだった。今年1月、両者はカナダ連邦警察と中国公安省の協力を強化し、汚職や、電話詐欺、インターネット詐欺、違法な合成薬物の密売などの国際犯罪に共同で対処すると約束した。
カナダの保守党と新民主党は協定内容の公開を求めているが、カーニー首相は全文の公表を拒否している。コブリグ氏は、この協定が発する「政治的メッセージ」は懸念すべきものであり、カナダは署名すべきではなかったと述べた。元外交官の同氏は、中共には恣意的な拘束や処刑、拘束者への精神的・身体的拷問の記録があると指摘した。コブリグ氏自身も、1千日以上拘束された経験がある。
カナダと中国の間に犯罪人引渡条約はない。しかしコブリグ氏は、この協定によって、カナダ連邦警察と中国公安省が対等で、同じような規範や行動基準に従う法執行機関であるかのような印象を与えると述べた。
「実際は全く違う。カナダ連邦警察は、海外でカナダ人の行動に影響を与えるために偽の警察拠点を設けたり、外国でスパイ活動をしたりしない。この協定の公開を求めるべきだ。透明性と説明責任が必要である」と述べた。
(責任編集:李琳)
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