イラン危機 イスラエルのネタニヤフ首相が開戦宣言か

2026/02/12
更新: 2026/02/12

イスラエルのネタニヤフ首相が聖書引用「今は戦いの時」と宣言。トランプ緊急会談、イランミサイル急増、ロシア撤収、テヘラン爆発で中東火蓋切る?最新分析である。

ここ数日前までは、「イラン政権に対する戦いはいつ始まるのか」と多くの関係者が推測していた。ところが2月11日、イスラエルのネタニヤフ首相の一連の行動と発言により、中東地域、さらには世界秩序を根底から変容させかねない「最終局面」において、火蓋を切ろうとしている主体が、すでに忍耐の限界に達していることが浮き彫りになったのである。

本題に入る前に、一つの象徴的な出来事を紹介しておきたい。9日、世界最大級の予測市場「Polymarket」に、突然、不審なアカウントが現れた。ある正体不明の人物が、いきなり10万ドル(約1530万円)の資金を投入して賭けを行ったのである。

その賭けの対象は、「アメリカが2月9日夜にイランへの軍事攻撃を行うかどうか」であった。当時、市場が織り込んでいた確率はわずか2.5%にすぎなかった。言い換えれば、もしこの賭けが的中していれば、10万ドル(が一気に約400万ドル(約6億1千万円)規模へと膨らむ計算である。

賭けは結果的に不成立に終わったものの、この異常な取引は、「嵐の前触れ」を示す不穏な兆候として、市場関係者や安全保障専門家の間で強い警戒感を呼び起こした。

トランプ大統領との緊急非公式会談目的

同じタイミングで、より重大な「政治的シグナル」も発せられた。イスラエルのネタニヤフ首相が、緊急に訪米してトランプ大統領と会談すると発表したのである。トランプ氏が2度目の大統領職に就いて以降、両者はすでに6回会談しているが、それらはいずれも事前に調整された公式会談であった。これに対し、今回は例外的に「非公式かつ緊急の会談」と位置づけられている点が注目される。

さらに国際社会を驚かせたのは、ネタニヤフ首相がその前日に発した発言である。いかなる外交辞令も婉曲な表現も排し、彼は聖書を直接引用して、次のように述べた。

「聖書にこうある――平和の時もあれば、戦いの時もある。今は、戦いの時だ。」

この発言は、単なるレトリックではない。ユダヤ教およびキリスト教の文化的・宗教的文脈において、この種の聖句を公の場で引用することは、最高度の「武力行使宣言」に準ずる意味を持つと解釈されうる。すなわちネタニヤフ首相は、国際社会に向けて「忍耐の段階はすでに終わり、交渉による解決はもはや現実的ではない。次の段階に進む覚悟が固まった」と公然と表明したに等しいのである。

では、なぜ今、このタイミングで、あえて急ぎトランプ大統領との直接会談に踏み切ろうとしているのか。その狙いは何か。

ネタニヤフ首相は、今回の訪米について「ガザ情勢、中東情勢、そして最重要課題であるイラン問題について協議するためだ」と説明している。表向きの表現は「協議」であるが、この極度に緊迫した安全保障環境を踏まえると、その実態は「具体的な行動オプションと役割分担を詰める協議」であると見るのが自然であろう。

イラン弾道ミサイル増産の実態

イスラエル国防軍と情報機関は最近、イランのミサイル生産能力に関する評価報告書の一部を機密解除した。それによれば、厳しい制裁下にもかかわらず、イランの軍需産業は急速に拡大しており、現在では毎月300〜500発の弾道ミサイルを製造しているという。

昨年の「12日戦争」において、イスラエルが集中的な空爆を実施した結果、イランの中距離弾道ミサイル保有数はおよそ1千〜1500発まで減少した。しかし現時点では、その数はすでに2千〜3千発規模にまで回復しているとされる。今年末には6千発、来年半ばには8800発に達する見通しであり、2028年までには1万発を超えるとの推計もある。国土が極めて狭いイスラエルにとって、これは文字通り「国家存亡の危機」に直結する数字であると言ってよい。

したがって、イスラエル側の論理はきわめて明快である。すなわち、「アメリカには、外交的手段によってイランを抑制する時間的猶予を与えてきた。しかし、目に見える成果が得られないのであれば、イスラエルは自国の生存を確保するため、単独であっても行動せざるを得ない」という立場である。

これこそが、今回ネタニヤフ首相がトランプ氏に提示しようとしている「最後通牒」に近いメッセージである。「これ以上は先延ばしにできない。アメリカと協調して行動するのか、それともイスラエルが単独で行動するのか。いずれの選択であっても、決断と実行は避けられない」――そのような含意が読み取れる。

米軍中東防衛網構築の進展

トランプ大統領は、一見すると奔放で予測困難な政治家に見える側面もあるが、一方で「準備なき軍事行動」を避ける現実主義者としての顔も持つ。交渉が続くこの1週間、インターネット上や専門家の間では「なぜアメリカはまだ行動に踏み切らないのか」との疑問が繰り返し提起されている。

この問いに対して、イラン情勢の専門家であり、イラン系アメリカ人でもあるシャーニン・モダレス氏が、注目を集める分析を公表した。モダレス氏は概ね次のように指摘している。「現在、外形的には“遅れ”が生じているように見える。しかしこれは躊躇ではない。確かにイランは時間を稼いでいるが、アメリカもまた時間を活用している。なぜなら、米軍はいま中東全域における防衛網の構築を進めているからだ」と。

現在、中東地域における米軍の主要基地および戦略司令拠点は、少なくとも19か所に上る。カタールのウデイド空軍基地、バーレーンの米第五艦隊司令部、さらにクウェート、シリア、イラク、ヨルダンなどの基地が含まれる。これらの基地は、これまでは主としてテロ組織への対処を主眼として運用されてきたため、本格的なミサイル戦を前提とした防空体制は十分とは言えなかった。準備が不十分なままイラン攻撃に踏み切れば、逆にイランからのミサイル飽和攻撃によって、これらの基地が一斉に標的となる危険性が高い。

このリスクを軽減するため、米軍は近時、中距離弾道ミサイルを迎撃する「サード(THAAD)」防衛システムや、低高度の短距離弾道ミサイルおよび巡航ミサイルを迎撃する「パトリオット」システムの大量輸送と配備を加速させている。

海上に目を転じると、「エイブラハム・リンカーン」空母打撃群がすでにオマーン沿岸付近に展開している。この大規模な海上戦力を防護するため、アラブ首長国連邦(UAE)は独自の防空システムを追加配備したとされる。

航空戦力に関しては、ヨルダンに駐留するF-15戦闘機、およびキプロスに駐留するF-35戦闘機が待機態勢にある。その主たる任務は爆撃ではなく、防空の「要撃部隊」として、イラン側が放つ可能性のある自爆型ドローン等を撃破することに置かれている。

テヘラン各地で相次ぐ爆発 プーチン氏、ロシア核専門家を事前撤収

もし前述のアナリストたちの言説が、あくまで第三者的視点からの情勢分析であるとすれば、当事国の内部関係者が取る具体的な行動は、より直接的かつ決定的なシグナルとなる。最新の情報によれば、ロシアはすでにイランから、ブシェール原子力発電所で勤務する自国のトップ核技術者らの撤収を開始している。過去24時間の間にロシア軍機4機が緊急出動し、数百人規模の技術者とその家族がイランを離脱したという。

昨年の「12日戦争」の際には、戦闘が始まって3日目に、ロシアは技術者の撤収を開始した。ところが今回は、まだ戦闘が公式には開始していない段階で、すでに撤収を実行している。この事実は、プーチン大統領が「今回はトランプ政権とネタニヤフ政権が本格的な軍事行動に踏み切る」と判断している可能性を強く示唆するものである。

ロシアの撤退は、国際社会に向けた「無言のメッセージ」とも読み取れる。すなわち、イラン政権を覆っていたロシアの「安全保障上の庇護」は事実上縮小または消滅し、テヘランは現在、これまで以上に脆弱な状態に置かれている――ということである。

筆者がこの原稿を執筆している最中にも、新たな二つの情報が伝えられた。

一つは、トランプ大統領がイスラエルのテレビ局「チャンネル12」に対し、「もしイランと合意に至らなければ、我々は非常に厳しい措置を取らざるを得ない」と述べたことである。

もう一つは、テヘラン各地で大規模な爆発と火災が相次いで発生したとの報道である。現時点でイラン当局は、「軍用倉庫や工場で火災が発生した」と説明しているが、この極めて敏感なタイミングを考慮すれば、それを単なる「事故」として受け取ることに疑念を抱く観測筋も少なくない。

これらすべての出来事――ネタニヤフ首相の「今は戦いの時だ」との発言、トランプ大統領との緊急会談、米軍による中東全域での防衛網構築、ロシア核専門家の事前撤退、テヘランでの爆発事案、そしてあの不可解な10万ドルの賭け――を総合的に勘案すると、一つの帰結に到達する。

すなわち、「嵐のような戦火が、いままさにペルシャ高原一帯を覆おうとしている」ということである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
金然