中国共産党(中共)公安当局は昨年、台湾の人気YouTuber、八炯(温子渝)氏とラッパーの閩南狼(陳柏源)氏に対し、懸賞金をかけた指名手配を出した。しかし八炯氏が自ら複数の中共領事館を訪れ、出頭した際には受け付けられなかった。その様子を撮影した動画が公開され、注目を集めている。専門家は、これが中共海外での法適用や強硬姿勢の裏にある弱さを浮き彫りにしたと指摘する。
中共は昨年、台湾の沈伯洋立法委員を指名手配した後、さらに高額の懸賞金をかけ、反中共の台湾のインフルエンサーである閩南狼に関する「犯罪情報」の提供を呼びかけていた。
こうした中、八炯氏は滞在中のニューヨークで現地の中共領事館を訪れ、「出頭」を試みたが、職員に拒否された。
動画の中で八炯氏は、ニューヨーク・マンハッタンの中共総領事館の前に立ち、「指名手配されてから3か所目の中共領事館だ。領事館は42番街にあって、『祖国の領土』へ足を踏み入れることに興奮している」と皮肉たっぷりに語った。八炯氏が自ら出頭の手続きを尋ねたが、職員は「すでに閉館した」とするなど、対応を避けた様子だ。
八炯氏はまた、「中共や小粉紅(ネット上の極端な民族主義的グループ)を見返したいと思っている。彼らは当初、この世界的な指名手配によって対象者は威圧され、海外に出られなくなる、結局は台湾にとどまるしかなくなると言っていた。私自身は指名手配後にすでに3か国を訪れているし、いずれの国も中共の言いなりにはなっていない。先進的な民主国家は中共の政治的迫害に応じることはない、ということを伝えたい」と述べた。
台湾中央大学客家語文暨社会科学系の曽建元准教授は、「八炯氏が各国で出頭を試みる行動そのものが一種のパフォーマンスとなり、中共政権の強硬姿勢の裏にある弱さを露呈させている。まさに『裸の王様』の真実を八炯氏が突きつけ、中共にとっては面目を失わせるものだ」と指摘した。
八炯氏はその後、SNSに「祖国は私を指名手配しておきながら、出頭は受け付けない。私のことは重要ではないと言いながら、数百万元の懸賞金をかける。一体何をしたいのか」と投稿した。
曽氏はまた、八炯氏が政府高官ではなく「一般のインフルエンサー」であることを強調した。
曽氏は「彼の発言は中共に対する挑戦となっている。さらに行動に移す度胸があり、過去には中国本土でドキュメンタリーを撮影するなどしてきた。これらはいずれも中共にとって不都合な行動だ。彼の番組は台湾よりも中国本土で影響力を持っている可能性もある。両岸問題を扱い、中共体制の荒唐無稽さを浮き彫りにしている」と語った。
八炯氏は動画の中で、今回がいわゆる「中共の領土」に足を踏み入れた4回目だとし、これまでニュージーランド、大阪、東京、ニューヨークの中共領事館を訪れていると語った。
さらに、「海外の反中共の中国人や華人に伝えたいのは、中共を恐れる必要はないということだ。多くの人が恐れなくなれば、その威嚇力は弱まり、中共の権威も失われる。人々が恐れなくなった時こそ、中共が人々を恐れるようになる。ただし、そのためには十分な人数が必要だ」と指摘した。
昨年以来、中共は台湾の立法委員や民間人を相次いで指名手配し、「長腕管轄」と呼ばれる越境的な法律戦・心理戦を通じて、台湾の世論リーダーに海外渡航への不安を生じさせている。
曽氏は「中共の指名手配リストには、総統、副総統、行政院長といった人物まで含まれているが、実際に実行可能なのか。このような状況で、両岸関係が正常化することはあり得るのか。台湾の民意で選ばれた人物を次々と指名手配犯とするようでは、正常な交流は到底望めない」と指摘した。
八炯氏はまた、「台湾政府は対応を取らなければならないと思う。国内の政治的立場の違いによって中共の宣伝や海外での法適用に同調すべきではない。中共は中華民国を消滅させようとしており、中国本土ではすでにそれが実現されているのは否定できない事実だ」と述べた。
中共の海外での法適用は台湾人や中国本土の住民にとどまらず、外国人にも及ぶ可能性がある。来月、トランプ米大統領の訪中に同行予定のルビオ米国務長官も対象となっている。
曽氏は「中共が海外での法執行を主張すれば、それは国際法秩序の破壊につながり、国連を中心とした国際秩序の崩壊の始まりとなりかねない。最終的に不利益を被るのは中国本土かもしれない。なぜなら、現在、中共は西側諸国による包囲網の対象となっており、集中砲火を浴びる存在だ」と警告した。
今回、八炯氏がユーモアを交えた形で中共の威嚇を逆手に取った行動は、恐怖感を和らげるとともに、海外における法執行の矛盾を浮き彫りにした。
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