高市総理 ベトナムで外交政策スピーチ 進化するFOIPと「自律・強靱」なアジアの未来

2026/05/02
更新: 2026/05/02

2026年5月2日、高市総理大臣はベトナム国家大学ハノイ校において外交政策に関する演説を行った。本演説では、日越両国の長きにわたる交流の歴史を踏まえ、今後の「包括的戦略的パートナーシップ」の未来と、さらなる進化を遂げた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実践について具体的な取り組みが語られた。

日越協力の最先端分野

高市総理は日越協力の未来について、宇宙、半導体、レアアースという最先端かつ戦略的な分野を挙げた。 宇宙分野においては、日本のODAによってハノイに「ベトナム宇宙センター」がオープンし、ベトナム初の自国所有となる地球観測衛星「LOTUSat-1」の製造を日本企業が受注したことが紹介された。衛星データを活用した災害予測や気候変動対策を通じ、安全な生活への貢献が期待されている。 「産業のコメ」と呼ばれる半導体分野では、日越大学に「半導体チップ技術学部」が新設され、ベトナムの産業高度化と日本のサプライチェーン強靱化を支える高度人材の育成が進められている。また、「産業のビタミン」とも呼ばれるレアアースに関しても、日本とベトナムの官民協力を進めていく意向が示された。

進化したFOIPと広がる共鳴の輪

2016年に安倍晋三元総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)」は、今年で10年目を迎える。提唱当初は日本の独自の外交ビジョンであったこの構想は、やがて米国の外交政策にも大きなインパクトを与え、現在では国際社会全体に共鳴の輪を広げている。

その影響はアジアにも確実に波及しており、ASEANは2019年に、FOIPと大切な「こころ」を共有する独自のビジョン「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」を採択した。さらに昨年10月には、日ASEAN首脳間でFOIPとAOIPの相乗効果と更なる協力の促進を確認する共同声明が採択されるなど、確かな連携の道しるべとなっている。

高市総理は、このように米国やASEANなど世界に影響を与えてきたFOIPの妥当性は揺るがないとした上で、この10年で起きた地政学的な競争の激化や技術革新といった国際秩序の構造変化に適応していく必要性を強調した。

複雑に絡み合った相互依存関係にある現代においてFOIPを実現するためには、地域の各国が自らの運命を自らの手で決めるための「自律性」と「強靱性」を、経済、社会、安全保障などあらゆる面で身につけることが欠かせないとしている。日本は各国のこうした力を後押しすべく、FOIPをさらに進化させ、「3つの重点分野」に取り組むことを表明した。

3つの重点分野

AI・データ時代の経済エコシステムの構築

ホルムズ海峡の危機によるエネルギー供給への懸念を踏まえ、アジア地域のサプライチェーンを強化する「パワー・アジア(アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ)」を発表した。JBICやNEXIを通じた金融支援、JICAによる緊急円借款を実施し、中長期的には原油備蓄システムの構築や新エネルギー開発にも取り組む。 さらに、「日ASEAN・AI共創イニシアティブ」を通じた母国語AIや基盤モデルの開発を進めるとともに、海底ケーブルやオープンRANなどの通信インフラ整備を推進する「FOIPデジタル回廊構想」を打ち出した。

官民一体での経済フロンティアの共創とルールの共有

ルールに基づく経済秩序を維持・拡大するため、本年の議長国であるベトナムと共にCPTPPの拡充を推進する。具体的には、フィリピン、インドネシア、UAEといった戦略的に重要なエコノミーの加入プロセス早期開始を目指す。同時に、重要物資の特定国への過度な依存を防ぐため、価格以外の要素も踏まえた「公平な競争条件の確保」などルールのアップデートを行う方針を示した。

安全保障分野での連携拡充

地域の平和と安定、およびシーレーンの安全確保のため、海洋安全保障を重視する。ベトナムに対する新たな船舶の建造や、フィリピンへの巡視船供与など、海上法執行能力の強化支援を継続する。さらに、各国の軍へ直接的な支援を行う政府安全保障能力強化支援(OSA)の対象国や事業規模を拡大し、安全保障分野におけるODAの活用も強化して、同志国のインフラ整備などを支援していくとした。

結語

高市総理は、FOIPは他者に何かを押しつけるものではなく、多様な声を受け入れて時代とともに進化するものであると強調した。自律し強靱な国々が共に手を携えて平和と繁栄の基盤となる「自由で開かれた」インド太平洋を創り上げていくという目標を掲げ、アジアの未来を担う若い世代に向けてビジョンを共有し演説を締めくくった。

大紀元エポックタイムズジャパンの速報記者。主に軍事・防衛、安全保障関係を担当。その他、政治・経済・社会など幅広く執筆。