ウクライナ戦線では激しい消耗戦が続く。プーチン大統領は当初の戦争目標に固執するが、死傷者の増大と国内不満の高まりは、ロシアの先行きが楽観できないことを示す。一方、ウクライナは欧州の支援を着実に拡大している。
過去最大規模の対ウクライナ攻撃
7月1〜2日、ロシア軍は無人機・ミサイル計570機による大規模空襲を実施。キーウ、オデーサ、ザポリージャなど複数地域の20か所以上を攻撃し、キーウでは少なくとも27人が死亡、90人以上が負傷。人道支援倉庫、電力インフラ、医療施設にも甚大な被害が生じた。キーウ市長クリチコ(Vitali Klitschko)氏はこれを「首都への過去最も激しい攻撃」と述べた。
7月2日、ゼレンスキー大統領は損壊した集合住宅を視察し、ウクライナ軍は「必ず」報復すると表明した。
プーチン氏は当初の戦争目標に固執
同日、プーチン氏はロシアのテレビで、和平合意の検討前にドネツク、ルハンシク、ヘルソン、ザポリージャの4州完全掌握まで地上作戦を継続すると述べた。「我々の反撃はより強力で破壊的だ」「ウクライナ軍は深刻な人員不足で戦線凍結を救いと考えているが、キーウ政権を救うことは我々の計画にない」と強調した。
これに先立ちゼレンスキー氏は、40日間の「影響力作戦」でクレムリンに戦争終結を迫る計画を発表。ロシア本土への縦深攻撃を強化し、ロシア社会に戦争の無益さと危険性を認識させる狙いだ。「一時占領地域で、ロシア軍の軍事物流および占領活動は大きく制約されている」とも述べた。過去数週間、ウクライナ軍と治安機関はロシアの軍事・経済・インフラ目標への長距離攻撃を強化し、国境州や内陸部の製油所・軍事施設で爆発が相次いだ。
プーチン氏もインフラ攻撃が深刻な問題を招いていると認めたが、戦況への不安は示さない。「特別軍事作戦」の目標は引き続き遂行されするとし、それはドンバスおよびいわゆるノヴォロシア地域の完全掌握、すなわち2014年以来紛争が続くドンバスとクリミアへの「陸の回廊」を形成するウクライナ南東部の掌握だと強調した。
ロシアは前例のない死傷者の代償を払う
プーチン氏の発言は勝利への自信を示すが、前例のない死傷者の現実を軽視する。米戦略国際問題研究所(CSIS)の研究によれば、双方の死傷者は200万人超、ロシア軍は140万人に達した。これは総人口の約1%に相当し、戦死者は約45万人と推定される。ロシア軍はウクライナ軍1人の損害ごとに約8人を失う計算だ。ウクライナ側の死傷者は約52万5千〜62万5千人、戦死者は12万千〜15万人と推定される。
主因の一つはウクライナ軍の大規模な無人機運用で、前線の全移動目標が攻撃対象となる。ロシア軍はオートバイでの機動突撃で突破を試みるが、徘徊型弾薬や無人機の精密攻撃に晒され続けている。
同報告の主な結論は次の通り。第一に、ロシア軍の戦死者数は、第二次大戦以降のアメリカの全戦争戦死者総数の4倍以上、同期間のソ連・ロシアの全戦争戦死者総数の9倍以上に達する。ソ連のアフガニスタン戦争でさえ死者約1万5千人だが、現在は月3万〜3万4千人の死傷者を出している。
第二に、2026年のロシア軍地上攻勢はほぼ停滞。各戦線の1日平均前進距離は数十メートルで、過去約100年の戦争でも極めて遅い。
第三に、2026年春以降、ロシア支配下のウクライナ領土は縮小に転じ、4〜5月にはロシア軍は新占領面積を上回る領土を失い、2024年8月以来初の純減となった。
プーチン氏の国内信頼は低下
それでもプーチン氏は戦略を見直さない。4年以上続く戦争でロシア軍は消耗するが、より大きな問題は国内にある。燃料不足、インターネット遮断、経済悪化により、支持基盤は弱まり、信頼度は戦争開始以降で最低水準に落ち込んだ。
ロシアの世論調査機関「社会世論基金」(FOM)が6月21日実施の調査(51連邦主体、成人1500人)では、プーチン氏を信頼する割合が前週比5ポイント低下し侵攻開始以来最低となった。不信任は3ポイント上昇、施政支持率も4ポイント低下した。
ギャラップ(Gallup)調査では、ロシア国民の60%が国内経済は悪化していると認識。過半数が経済悪化を実感したのは過去20年で初めてだ。分析によれば、通常は雇用と連動する経済認識が2026年には実態以上に悲観化し、全国的な経済不安が広がっている。
ウクライナは欧州の支持を得ている
一方、ウクライナへの欧州の支持は強まっている。2026年「ウクライナ復興会議」(URC)は6月25〜26日にポーランドのグダニスクで開催した。同地は第二次大戦の発端の地として、侵略と抑圧は最終的に失敗するという象徴的意味を帯びる。
ポーランドのトゥスク首相は「グダニスクは『連帯』が単なるスローガンではないことを示す。戦後は必ず訪れ、しかも遠くない」「ロシアはこの戦争に勝てないと認識し始めている」と述べ、欧州はウクライナと揺るぎなく連帯すると強調した。
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、ウクライナが軍事面で優位に立ちつつある兆しに言及。900億ユーロ(約14兆4千億円)規模の「ウクライナ支援融資」第1弾として32億ユーロ(約5120億円)の拠出を発表した。さらにEU加盟交渉開始を強調し、ウクライナが欧州の一員である証しだと述べた。最初の交渉クラスター完了により、企業・投資家・市民の信頼が高まり、経済成長の基盤が整う。
ポーランドとウクライナ間には歴史問題の摩擦もあるが、欧州全体でウクライナ支援の政治的意思は揺らがない。西側はウクライナの軍事的優位拡大に期待を示し、大規模な共同生産・復興投資を継続する。
7月2日、ゼレンスキー氏は弾道ミサイル防衛計画「FREYJA」を7〜8月に各国首脳と協議すると明らかにした。同システムはウクライナ企業「ファイアポイント」開発のFP-7.x迎撃ミサイルを中核とし、TRML-4Dレーダーと赤外線画像誘導装置(IIR)で弾道ミサイルを検知・追跡する。初の迎撃ミサイル生産は2026年末までの見込みだ。
ウクライナは複数の戦場技術分野でロシアへの優位性を示す。遠距離無人機の能力は向上を続け、戦闘はロシア本土にも拡大。ウクライナはもはや一方的な劣勢にあるとは言えない。
プーチン氏が現実に耳を傾けているならば、戦争は当初の計画通りに進んでいないと認識しているはずだ。

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