トランプ氏の再選以降、ラテンアメリカの5か国で政権が左派から右派へと転換した。
1月の夜明け前、米陸軍特殊部隊デルタフォースの兵士たちは急襲作戦を行い、就寝中だったニコラス・マドゥロ氏のもとへ突入した。そして、米国で麻薬テロ関連の容疑により指名手配されていたベネズエラの指導者を拘束した。
左派政治を象徴する国の一つだったベネズエラで、マドゥロ氏による支配が劇的な形で終わったことは、ラテンアメリカが政治的に右傾化していることを鮮明に示した。
トランプ米大統領が再選されて以降、ラテンアメリカではボリビア、チリ、ホンジュラス、ペルー、コロンビアの5か国で、政権が左派から右派へと転換した。一方、ウルグアイでは逆の動きが起こり、2024年11月に右派から左派へと転換した。
トランプ政権下で保守派への再編が進む中、同政権は米国の南側に位置する近隣諸国を再び重視するようになった。この政策は、米国が西半球における優位性を主張した「モンロー・ドクトリン(モンロー主義)」になぞらえ、「ドンロー・ドクトリン」と呼ばれている。「ドナルド」と「モンロー」を掛け合わせた表現である。
かつての「ピンク・タイド」は姿を消した。これは1990年代後半にラテンアメリカで台頭し、2000年代まで続いた後、2020年代初頭に再び勢いを増した「穏健な」共産主義の潮流を指す。
この時代には、マドゥロ氏の前任者であるベネズエラのウゴ・チャベス氏や、ボリビアのエボ・モラレス氏など、著名な左派指導者が台頭した。モラレス氏による石油・天然ガス生産の掌握は、同国経済を深刻な低迷に陥らせた。
専門家らは、トランプ氏の影響力に加え、経済と治安への懸念が重なったことが、ラテンアメリカの左派政権の退潮を引き起こしたとみている。この二つの分野は、保守派候補が強みを持つとされる政策領域でもある。
トランプ氏は、ラテンアメリカの複数の右派候補を支持した。2025年12月にはチリのホセ・アントニオ・カスト氏への支持を表明し、カスト氏は同月の大統領選で共産党候補ジャネット・ハラ氏に大差をつけて勝利した。同じ月には、トランプ氏の支持を受けた保守派のナスリ・アスフラ氏が、ホンジュラスの社会主義政権から勝利を奪い取った。
トランプ大統領はまた、コロンビアのアベラルド・デ・ラ・エスプリエラ氏も支持した。同氏は今年、退任するグスタボ・ペトロ大統領と足並みをそろえる左派候補イバン・セペダ氏を僅差で破った。ペトロ氏は元マルクス主義ゲリラである。



5か国のうち4か国では、保守派がそれぞれの議会でも議席を伸ばした。左派が実際に議席を増やしたのはコロンビアだけだったが、同国の上下両院では、左派・右派のいずれも過半数を確保していない。
ボリビアでは、単独で過半数を獲得した政党はなかったものの、保守政権の与党勢力が上下両院で最大勢力となった。また、保守系勢力を合わせると、上下両院で圧倒的多数を占めている。一方、かつての左派政権の勢力は、わずか2議席にとどまった。
ホンジュラスでは、アスフラ氏の勝利に伴い、一院制議会でも保守派が議席を伸ばした。チリ議会では、保守連合が下院を掌握する一方、上院は勢力が拮抗している。同様にペルーでも、保守派が下院で最多勢力となっているものの過半数には届かず、上院では勢力が二分されている。
犯罪と経済
ドイツを拠点とする国際政治分析機関コンラート・アデナウアー財団の報告書によると、ラテンアメリカで保守化が進む背景には、左派政権への失望があり、組織犯罪の増加やインフレがその要因となっている。
同報告書とその後の最新情報によると、人口100万人を超える16の民主主義国のうち、10か国が2022年以降に政治的な方向性を転換しており、その多くが左派から右派への転換だった。
調査対象となった国のうち、現在左派政権が続いているのはブラジル、グアテマラ、メキシコ、ウルグアイの4か国だけである。
民主主義国として集計されなかったベネズエラは、マドゥロ氏の排除後も政治的に不透明な状態が続いており、副大統領だったデルシー・ロドリゲス氏が政権を担っている。キューバでは、1950年代に成立した共産主義体制が現在も続いている。
また、調査対象に含まれなかったもう一つの国がニカラグアである。同国では、元左翼ゲリラ指導者のダニエル・オルテガ氏が2007年以降、権力の集中を進めてきた。オルテガ氏は最近、同国で今後選挙を実施しないと発表した。

人口約100万人のガイアナでは民主的な選挙が行われているものの、依然として社会主義勢力が強固に政権を握っている。
マドゥロ氏の失脚が旧来の共産主義勢力の終焉を象徴する一方、チェーンソーを掲げることで知られるアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領のような人物は、保守系ポピュリスト指導者の台頭を象徴している。
同報告書は次のように指摘している。
「アルゼンチンのハビエル・ミレイ氏やエルサルバドルのナジブ・ブケレ氏のような人物は、ポピュリズム的な戦略によって新たな政治潮流を体現している。一方、ドミニカ共和国のルイス・アビナデル氏のような穏健な保守派は、安定と現実主義を重視している」
同報告書によると、米国の政策もラテンアメリカにおける保守化の流れを後押ししており、右派指導者との良好な関係構築につながっている。
同報告書は次のように述べている。
「これは決して驚くべきことではない。ワシントンは最近、西半球において自国と考えを同じくする政治勢力を積極的に支援し、貿易関係を拡大するとともに、自国の利益に沿う形でラテンアメリカ諸国の安定化を図る意向を表明したからである」



「トランプ効果」
テキサス公共政策財団(Texas Public Policy Foundation)の西半球イニシアチブ担当シニアディレクター、ジョシュア・トレビーニョ氏は、ホワイトハウスに保守派の大統領がいることが、ラテンアメリカの変化を後押ししていると述べた。
同氏によると、トランプ氏の影響力と政策は、ラテンアメリカが社会主義や共産主義から距離を置く流れに寄与しているという。
「つまり、私たちが目にしているものの多くには、トランプ政権による効果が表れている」と、同氏はエポックタイムズに語った。「以前と比べて、ラテンアメリカについて、より率直に楽観的な見方を持てるようになった」
米国の「裏庭」であるラテンアメリカに再び重点を置くトランプ氏の外交政策は、2025年の大統領就任直後から動き始めた。トランプ政権は、中国が重要な水路であるパナマ運河の支配権を握ったとの認識を示し、運河を米国の手に取り戻す可能性に言及した。
トランプ政権は、中国がパナマ運河にある二つの重要な港湾を運営していることについて、米国が建設した同運河の管理権を1999年にパナマへ返還する際の合意の一部である「米・パナマ中立条約」に違反する可能性があると指摘した。
法的手続きを経て、パナマは今年春、香港に拠点を置く企業の子会社から、これらの港湾の管理権を接収することが可能となった。

ヘリテージ財団アリソン国家安全保障センターのラテンアメリカ担当上級政策アナリスト、アンドレス・マルティネス=フェルナンデス氏は、トランプ氏がラテンアメリカ地域に積極的に関与する姿勢を示していることに、各国の指導者や人々が反応していると述べた。
「この地域の指導者だけでなく、米国と連携する機会があると考える有権者からも、その姿勢は確実に注目されていると思う」と、マルティネス=フェルナンデス氏はエポックタイムズに語った。
同氏によると、歴史的にも文化的にも、ラテンアメリカは中国のような共産主義国よりも米国との結びつきが強い。しかし長年にわたり米国の関与が不足していたため、その空白に中国が入り込んできたという。
右派が強みを持つ治安政策
現在のラテンアメリカ政治は、国内外のさまざまな要因によって大きく変化している。
マルティネス=フェルナンデス氏によると、左派政権による統治の失敗は、それぞれの国の人々に深刻な影響を及ぼした。
例えば、コロンビアのペトロ前大統領は、軍事力だけに頼るのではなく、さまざまなゲリラ組織や犯罪組織と直接交渉し、条件付きの停戦合意を結んだ。その結果、治安が悪化し、暴力や組織犯罪の活動が増加したと、マルティネス=フェルナンデス氏は述べた。
社会主義政権下での治安政策の失敗は、犯罪に厳しい姿勢を打ち出す保守派の台頭を後押しした。

「これが、(ペルーの)ケイコ・フジモリ大統領が就任するとほぼ同時に非常事態を宣言し、犯罪の取り締まりを強化すると発表した理由の一つである」と、トレビーニョ氏は述べた。
ペルーのケイコ・フジモリ大統領は7月28日の就任演説で、犯罪が深刻な地域では、軍が一時的に治安維持活動を主導すると表明した。選挙期間中には、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領と同様、凶悪犯罪に対して強硬な姿勢で臨むことを公約していた。
同様に、市民も法と秩序を求めている。特にチリ、コロンビア、エクアドルなど、麻薬カルテルが浸透している国々では、その傾向が強いとトレビーニョ氏は付け加えた。
麻薬テロ組織をめぐる共通の安全保障上の課題について、トランプ氏がラテンアメリカ諸国との連携を進めていることは、今後も同地域における米国の影響力を維持することにつながる可能性が高い。
そのための手段の一つが「シールド・オブ・ジ・アメリカズ(Shield of the Americas)」である。これは麻薬テロ組織を阻止することを目的とした安全保障・情報協力の枠組みで、トランプ政権が3月に発足させた。
また同じ3月には、パラグアイが米軍の地位協定を承認し、米軍部隊が初めてパラグアイ国内に展開できるようになった。
「こうした動きには引き続き注目した方がよい。特にラテンアメリカでは、米国の軍事的な基盤が形成されつつあり、それは今後非常に長い間続くことになると私は考えている。そして、それもまた政治的な影響を及ぼすことになるだろう」と、トレビーニョ氏は述べた。

インフレと政治
小麦粉の輸入を麻痺させたインフレと現金不足の中、2025年の選挙を前に、パンはボリビアの経済危機を象徴する存在となった。ボリビア国民が支払う価格は政府が定めたまま変わらなかったが、パン職人が大きさや品質を落としたため、パン1個の大きさは以前の約半分にまで縮んでいた。
そもそもボリビアは生活費が高いことで知られる国ではない。それにもかかわらず、社会主義体制の下で人々は生活に苦しんでいた。
犯罪問題と同様に、ラテンアメリカの有権者は経済問題の改善についても、リベラル派より保守派を信頼し、選挙で支持した。
「現在、世界中で生活費の危機が起きている」とトレビーニョ氏は述べた。「ラテンアメリカもほかの地域と同じように大きな影響を受けている。そして、それを社会主義政策が間違いなく悪化させている」
同様に、社会主義政権下でのアルゼンチンの経済危機も、政治的変化を引き起こすきっかけとなった。同国の「社会福祉」重視の政権は、インフレ率が100%にまで急騰するなど深刻な混乱状態に陥っていた。そのため有権者は新たな人物に賭けてみようと考えるようになり、2023年にミレイ氏を大統領に選出した。
自由市場資本主義を掲げるミレイ氏の当選は、アルゼンチンにとって特に重要な意味を持つものとなった。

2025年、トランプ政権はアルゼンチン中央銀行との間で200億ドル規模の通貨スワップを発表した。この合意に基づき、米財務省はアルゼンチンの通貨安定を支援するため、米ドルと引き換えに200億ドル相当のペソを購入することに合意した。
この合意の発表を受け、ブエノスアイレスの株式市場は15%急騰した。これにより、ミレイ氏の政党が勝利した同国の中間選挙を前に、通貨切り下げを回避できた可能性がある。ミレイ政権はその後、同枠組みから引き出した資金を速やかに全額返済した。
スコット・ベッセント財務長官は、経済力を通じて平和を実現するというトランプ氏の戦略を称賛し、1月にXへ次のように投稿した。トランプ氏は「『アメリカ・ファースト』に沿った形でラテンアメリカを変革し、米国の周囲を安定と繁栄で取り囲んでいる」。
勢いを増す保守派
コンラート・アデナウアー財団は報告書の中で、ソーシャルメディアを利用する若者たちが、ラテンアメリカにおける保守化の流れを加速させていると指摘した。
マルティネス=フェルナンデス氏もこれに同意し、ラテンアメリカの若者たちはこれまでの人生を通じて左派政策の下で暮らし、その政策がうまくいかなくなる様子を目の当たりにしてきたため、今では彼ら自身が変化を推し進める原動力になっていると述べた。しかし、ラテンアメリカにおける保守化の流れは、依然として不安定なものである。

マルティネス=フェルナンデス氏はまた、高齢者の間では、チリのアウグスト・ピノチェト氏のような1980年代の右派独裁者に対する警戒感がより強いと指摘した。
ペルーとコロンビアでの僅差の勝利が何らかの兆候を示しているとすれば、政治の振り子は再び左派へと容易に揺り戻される可能性がある。
しかし、西半球への米国の関与が再び強まっていることは、今後の政治情勢を米国に有利な方向へ傾ける可能性が高い。
「これは地域政治を取り巻く基礎的な環境そのものを変化させることになるだろう。そして、これまでよりも一貫して親米的な姿勢が取られやすい環境になる」と、マルティネス=フェルナンデス氏は述べた。
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