【漫画(MANGA)往来】スタンド・バイ~荒木飛呂彦~①

2007年04月08日 10時47分
 【大紀元日本4月8日】もしあなたがミケランジェロが好きなら、荒木飛呂彦漫画を読むべきである。ゴーギャンがタヒチに行った謎に心がそそられるなら、恐らく主人公たちの奇妙な冒険に没頭することができるだろう。ミケランジェロという名前は、ミカエルというエンジェルの呼び名を指す。ウルトラジャンプ連載中の『スティール・ボール・ラン』を彩る登場人物は、ミケランジェロの人物彫刻の圧倒的な表現力の影響を消化した、荒木飛呂彦の秀逸な人物デッサン力によって描かれている。

 主人公たちが冒険に人生を賭ける経緯(いきさつ)があるように、悪として機能する敵たちの動機が生まれた背景をも、作者は徹底して興味深く執拗に考察する。ゴーギャンがタヒチに行ったのは何故なのか? 敵がテロリストとなった動機は何なのか? この二つの問いの解明は、荒木ワールドでは清々しいほど等価なのである。

 荒木飛呂彦の漫画はその綺想に満ちたアイデアの、酔わせるような連打のスピードが格別に素晴しい。少年が冒険心を一杯に溢れさせる限りないその日の夢を即坐に、ロマネスクなバトルの世界へと、スリリングに一挙に連れ去って叶えてくれるのが魅力だ。

 トリッキーでアクロバティックな超現実世界が、唐突にストーリーにしばしば乱入することがあっても、私たちの精神世界の基底に広がる異様な映像の断片が、さもありそうにフラッシュバックして、たちまち読者の違和感は砕かれ溶かされてしまうのだ。それは少年が巻貝殻の破片を耳に押し当てて、海中王国の夢を心の波紋に広げて描いてみせる精神の超現実に、等しいことだと言えるだろう。

 『スティール・ボール・ラン』においても他の作品と同様に、作者が丹念にイメージコレクションした綺想の断片が、工夫を凝らした手法で蜘蛛の糸のように張り巡らされ、パズルのように意想外に合わさってストーリーの謎が展開されていく。

 神は細部に宿り給うというリアリティーは、スタンド・バイ~荒木ワールド~において、登場人物のキャラクター作りや,背景のデッサン力のディテール(細部)に、手の込んだ具体性を盛り込んで入念に描き込まれた。そして嬉しいことに、荒木漫画は処女作以来一貫して、「人間賛歌」の追究という少年漫画の王道を行くテーマを、身動(じろ)ぎもせずに果敢に選択して歩んで来た。

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