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私が経験したキャンセルカルチャー

2021/04/05
更新: 2021/04/05

キャンセルカルチャー」が流行しているアメリカで、もう一つの気がかりな現象がある。「woke」(社会的正義に敏感な)企業による一般人への制裁だ。私の経験を紹介しよう。

ある日、チェース銀行から一通の知らせが届いた。私の会社「ドゥスーザ・メディア」のクレジットカードを停止するというのである。理由は書かれていない。カードの利用履歴は良好であり、滞納などの問題も心当たりがない。チェース銀行に電話したが、担当者も理由が分からないという。

私は地元のチェース銀行を訪ね、理由を問いただした。その時、私は自分の銀行口座が既に閉鎖されたこと、また本社の上層部から取引停止の指示があったことを知った。

私はかつて選挙資金法違反で有罪になったことがある。しかし、約3年前にトランプ大統領の恩赦を受け、私の記録は完全にクリーンである。銀行が私の口座を解約する理由はどこにもない。徐々に、これは政治的な動機があると思い始めた。

映画ビジネスに携わる者として、私はキャンセルカルチャーをよく知っている。私の映画はハリウッド好みの左翼的な内容ではないため、脅迫や圧力を避けるために、ハリウッドとは距離を取ってきた。しかし、私の幾つかの映画は人気があり、ハリウッドのライオンズゲートやユニバーサル・ピクチャーズなどを通して配給した作品もある。

昨年、私がドキュメンタリー映画『Trump Card』を撮影した後、状況は一変した。まずライオンズゲートが私の映画を断ってきた。ユニバーサルは最初承諾していたが、後に考えを変えた。噂によると、同社のスタッフ数人が、トランプ氏の再選を助ける映画には関わりたくないと言ったそうである。私は昨年、長編映画『Infidel』を発表したが、ユニバーサルはこの作品のDVD販売に同意している。つまり、トランプ氏の再選を助長しない映画であれば受け入れるということだろう。

私は、ハリウッド企業やチェース銀行が顧客を選択する権利を否定しない。しかし、その選択が政治的な動機に基づくのなら、彼らは同じ政治的見解を持たない大勢のアメリカ人を差別することになる。

Woke」な銀行が私のような保守派の口座を解約するなら、我々は独自の銀行を持たなければならなくなる。「Woke」な企業が取引を拒否し、「Woke」な巨大IT企業が言論空間を支配するなら、我々は独立した新たな仕組みを構築しなければならない。

先日、私は妻と一緒に『グリーンブック』という映画を見た。時代はジム・クロウ法の真っただ中、白人と黒人がアメリカ南部を車で旅する話である。この地域の黒人は、基本的に自分たちだけの世界で生活している。銀行、レストラン、理髪店、公共トイレや水飲み場も、白人と黒人は厳しく隔離されている。

これは、まさに我々が向かっている世界である。人種ではなく、政治的な隔離である。「woke」なアメリカに生きる保守派は、大げさな言い方をすれば、前世期前半の黒人のような扱いを受けている。政治的な保守派は嘲笑や軽蔑の対象であり、二流市民である。この新しい差別に反対し、権利の平等を取り戻すには、新しい公民権運動が必要になるのかもしれない。

(文・ディネシュ・ドゥスーザ/翻訳編集・郭丹丹)


執筆者:ディネシュ・ドゥスーザ(Dinesh D’Souza)

著名な執筆家、映画製作者。最新の著作は『United States of Socialism: Who’s Behind It. Why It’s Evil. How to Stop It』
 

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