農業制限の背景に国連SDGs 富の分配や相互依存に繋がる=国際ジャーナリスト

2022/08/08
更新: 2022/09/07

国連は7年前の2015年、持続可能な開発のための行動計画「2030アジェンダ」を採択した。これに合わせて定められた目標が貧困対策などを含む「SDGs(持続可能な開発目標)」だ。しかし、このアジェンダは国家の独立性に反し相互依存度を高めていると批判的に見る声もある。

国連の環境提言をめぐり10年以上も調査を続ける、受賞歴のある国際ジャーナリスト、アレックス・ニューマン氏はEpoch TVの番組「クロスロード」のインタビューに応じた。

2030アジェンダの17の目標のうち2つ目は食糧の変革について記している。国連は2021年9月、食糧システムサミットを開催した。2030年までにSGDsすべてを達成するためには、食糧システム変革が必要であると強調した。

ニューマン氏によると、この持続可能な開発に関するアジェンダの起草は、70年代に定義された「バンクーバー宣言」にあるという。同氏が引用する報告書の一節には「土地は個人によって管理され、市場の圧力と非効率性にさらされる通常の資産として扱うことはできない。私有地は富の蓄積と集中の主要な手段となり、社会的不正義の一因となる」と書かれている。

こうした記述から、国連は私有地を廃止したいと考えているのではないかとニューマン氏は指摘する。農業従事者に対する規制を敷いたオランダの例を挙げつつ「これはオランダのみならず世界中で起きている」という。同国では温室効果ガス削減政策により農業規制がかかり、伝統的な農家が廃業に追い込まれている。

中小規模の農家さえも土地から追い出され、ファシズム的な土地管理が推し進められていると懸念を示した。

「もう終わりだ」オランダの酪農家に廃業の危機 温室効果ガス削減で活路絶たれる

米証券取引委員会(SEC)は今年3月、「上場企業に対し、二酸化炭素排出量や気候関連情報の報告を義務付けるとともに、取引のある企業からも同様の情報を報告させる」といった規制を提案した。その結果、上場企業のビジネス・サプライチェーンに含まれるすべての企業が、CO2排出量と気候関連データを報告しなければならなくなる。

米上院のティム・スコット議員とジョン・ホエヴェン議員(ともに共和党)は30人の議員を率いて、SECに対しこのような提案を「行き過ぎた規制」とし、撤廃するよう要請した。

「過剰な規制は議会が定めたSECの権限を逸脱している。この報告義務は、小規模で家族経営の農場に大きな負担を強いることになる」と、上院議員たちは声明で述べている。

米農業会連合は、「農家は大企業のようにコンプライアンス担当者や弁護士を持たないため、この規則案によって、多大なコストが発生する」と指摘。さらに「中小規模の農家を廃業に追い込み、食品加工会社が米国外の農産物原料を探さざるを得なくなる恐れもある」と主張している。

食料供給の一元化

ニューマン氏は、「食料供給はすべてを支配することになる。共産主義者が好む一つの手段は、欠乏を生み、依存を生むことだ。自立した人間がいる限り、政府による生活や行動の管理は必要ない」と語っている。

「米国において、ESGの指標が、ビジネス部門、個々の企業の支配権を乗っ取り、私が捕食者階級と呼ぶ、世界経済フォーラムや国連の背後にいる人々の目標に奉仕させるために使われている」(訳者注:ESGとは環境・社会・ガバナンスの基準、企業の持続可能性への適合性評価基準)

2021年1月、世界経済フォーラムとオランダ政府は、「フード・イノベーション・ハブ(FUB)」という新しい構想を開始した。これは、「複数の官民パートナーが参加し、食料システム変革のために技術とイノベーションを活用する、重要なプラットフォームであるという。

FUBは、オランダ政府から「複数年の資金」を確保しており、地域のフード・ハブの取り組みを調整し、グローバルな食料プロセスやイニシアチブと連携するためのグローバル・コーディネーション事務局を設立したという。

『インベスト・イン・オランダ』のウェブサイトによると、グローバルフード事務局は、オランダの農業食品エコシステムの中心である同国バーヘニンゲンに置かれ、世界各地でFUBの開発を指揮するらしい。

「活動はすでに始まっており、アフリカ、ASEAN(東南アジア諸国連合)、コロンビア、インド、欧州ハブにて、20以上の組織がイニシアチブをとっている」と、ウェブサイトでは伝えている。

米大手飲料ペプシコのラモン・ラグアルタ最高経営責任者(CEO)は、世界経済フォーラムの声明の中で次のように述べている。「食品は、環境と社会の健全性を向上させるための主要なレバーの一つだ。適切な投資、イノベーション、強固な協力体制があれば、世界で最初にカーボン・ネガティブを達成する部門になるのはおそらく『農業』だ。この可能性を引き出すには、食料システムの変革とそれを実現するための利害関係者による基礎的で野心的な協力が必要である」。

ニューマン氏は、「彼らの食料供給によって自分たちを差配させたくなければ、地元で食料供給源を見つける必要がある。地元の農家と関係を持ち、地元のファーマーズ・マーケットに行き、地元の農家と取引し、何らかの契約を結ぶ必要がある。例えば、地元の農家から新鮮な季節の野菜を週100ドルで配達してもらうなどだ」と、語っている。

リポーター
エポックタイムズのベテラン調査記者。EPOCH TVの番組「クロスロード」で司会を務める。超限戦、非対称戦、ハイブリッド戦、破壊工作の専門家として知られており、中国共産党や破壊工作などに関する10年以上にわたる調査・研究を通して、世界が直面する脅威と政治情勢に対する独自の見識を持つ。
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