地震や山火事など自然災害時…EVでは避難が困難に=米調査

2022/08/17
更新: 2022/08/17
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気候変動対策を積極的に政策に取り入れるバイデン米政権の後押しにより、米国では電気自動車(EV)の普及が徐々に進む。2030年に販売される新車の半分をゼロエミッション車にすると政権が表明したこともあり、EVの販売台数は2030年までに2300万台まで増加する可能性があると言われている。

しかし、EVの大量導入にはガソリン車にはなかった危機管理上のリスクが高まるとの指摘も専門家から聞かれる。そのひとつは、電力を唯一の動力源とするEVが自然災害発生時の避難には脆弱であるという点だ。

科学誌サイエンス・ダイレクト誌に掲載された「ハリケーン時にEVで避難できるのか?」という調査報告によると、ハリケーンの勢力が強いフロリダでは、避難車両の大半がEVである場合、避難の過程で深刻な電力不足に直面するという。プリンストン大学土木環境工学科とアリゾナ州立大学メティスセンターの研究者がこの報告を作成した。

「9つの主要電力局のうち6つに、特にフロリダ州中部の電力局に影響を与え、同州の電力網全体にカスケード障害(編集注:連接する電力網は一か所の停電で他地域の停電を誘発する)が起きる可能性がある」と付け加えている。たとえ政権が充電器網を拡充したとしても、停電が起きれば車両を動かすことができなくなるのだ。

米カリフォルニア州では、地震山火事が2大自然災害とされている。

カリフォルニア・ポリテクニック州立大学ケーススタディでは、地震や山火事の発生時について言及する。「いずれも短時間の出来事だが、警告もなく電力網が破壊される可能性があるため、EVの充電が困難になる事態に陥るだろう」。

国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年、EVの販売台数は過去最高の300万台に達した。EVの普及が進めばすすむほど、自然災害時の避難の問題には注目が高まることが予想される。

「もし道端でバッテリーが切れたら」は未解決のまま

全米の州議会議員からなる「全米州議会議員連盟(NCSL)」が8月に開催した専門家会議では、EVをめぐる課題が議論された。『EVへの期待と挑戦』パネル討論に参加した者は「(緊急避難中に)道端でバッテリーが切れたらどうするのか」という問題を投げかけた。

EVによる避難計画について、パネリストの一人であるジェフ・ブランデス(共和党)州上院議員は「フロリダ州はまだ解決策を見出せていない」と述べた。エネルギー・交通合同庁舎のアレックス・シュローダー臨時事務局長は、この質問に答えようとはしなかった。

前出のサイエンス・ダイレクトに掲載された調査報告は、2017年に米国史上最大規模の避難を引き起こしたハリケーン「イルマ」の避難モデルに採用している。当時、フロリダ州の約650万人に強制避難命令が出されたが、結果的に400万台もの避難車両が巻き込まれた。

2017年記録的な被害をもたらしたハリケーン「イルマ」。フロリダ州では洪水等により停電が続いた  (Photo by Spencer Platt/Getty Images)

交通渋滞のため州全体で深刻な移動遅延が起こり、いくつかの高速道路(時速約120キロ制限)では、通常時の3倍の交通量となり、ピーク時の交通速度が時速25キロ程度にまで落ちた。

研究者たちは、車での移動を想定して、避難する車がEVであった場合の電力需要を調べ、フロリダ州の電力供給会社と比較した。

その結果、電力需要が供給能力を大幅に上回る地域があるいっぽう、自宅で充電するドライバーもいるため、短期的には持ちこたえることができる地域もあるといったシミュレーション結果が得られた。

しかし、シミュレーションでは、緊急避難の最中も「電力は消耗するため、充電が必要になる」といった課題を浮き彫りにした。

「EVによる脱出がフロリダ内陸部までに達し、バッテリーが消耗すれば、そこの電力サービス会社は膨大な電力圧力に直面し、EVの電力需要は急速に安全マージンを超えてしまうだろう」と指摘した。

報告書によると、一部の電力会社では400メガワットから1000メガワットの電力不足が発生する。そのため、EVの35~45%は電力を受け取れるが、55~65%は受け取れないことになるということだ。

さらに、タラハシーやゲインズビルなどの都市の電力会社は、最初は電力を供給することができるが、他の送電網の需要が供給を上回ると、「電力網の大規模な連鎖故障」が最大で3日間続くとされている。

報告書は「将来、大規模なハリケーンがより頻繁に発生するとも言われている。EVの利用が増えると、こうした避難時の安全要件を満たさなくなるかもしれない」と述べている。

「災害が起こりやすい地域でEVの導入が進む中、政策立案者は、避難の問題を考慮する必要がある。解決策として考えられるのは、集中充電戦略の開発、バッテリー技術の向上、EVに加えハイブリッド車の採用などである」。

「EV避難は不適」に対する反論

EVがハリケーン時の避難に適さないという批判に対し、EV支援サイトEVリソースは、「ハリケーンが発生した時やその後の停電が問題になっているが、嵐の前に電力不足になることはない」と書いている。

EVリソースは、「人々はハリケーンの前に充電することができる。その充電量は安全を確保できる程度のものであるべきだ」と述べている。

「EVは燃料を燃やすわけではない。12時間も渋滞に巻き込まれ、ガス欠になるという恐ろしい話は、EVやハイブリッド車には関係がない。渋滞に巻き込まれたとしても、エアコンなどの不要な機能を停止させれば、長時間走ることができる」。

電化連合と電気自動車協会は、避難の解決策に関するエポックタイムズのコメント要請に対して、いずれも返答していない。

EVリソース社のサイトには、上記の主張を裏付けるデータが掲載されていない。また、「緊急避難時におけるEV利用: カリフォルニアの自然災害」についてのケーススタディの中で、「ハリケーンの場合は事前に警報が出ることが多いが、山火事や地震はそうでない」と指摘している。

さらに、ケーススタディの著者であるカリフォルニア・ポリテクニック州立大学生産工学部のローザン・ピーターソン氏とモハメッド・アワド氏は、「山火事や地震などによる緊急避難は、減速や失速につながり、交通量の増加や事故の原因になることがある」と指摘している。

ケーススタディによると、EVの航続距離は160~320キロで、フル充電には3時間から12時間かかるという。急速充電の場合でも最大30分はかかる。

緊急避難の場合、充電の遅れは「避難に深刻な問題を引き起こす可能性がある」とし、EVが車線をふさぐ可能性があるため、交通量の増加や移動の遅れにつながるとしている。

カリフォルニア州では、200万以上の物件が山火事による極端なリスクにさらされており、山火事による極端なリスクのある物件が全体の約半分を占めている。