オピニオン 上岡龍次コラム

日本は米中戦争を覚悟せよ

2023/02/16
更新: 2023/02/18

譲歩がない世界

アメリカ本土に気球が侵入。中国は「気象気球」と公言したが証拠は出さなかった。それに対してアメリカは気球を「偵察気球」と断定。アメリカは2月4日にサウスカロライナ州沖で「偵察気球」を撃墜した。アメリカは残骸回収を進め、アメリカ軍だけでなくFBIも分析に参加している。

アメリカは「偵察気球」に通信傍受の能力があり軍事目的で運用していることを明言した。さらに中国企業5社と中国の1研究機関を貿易ブラックリストに追加。アメリカは中国に対して譲歩せず強気の外交を貫いている。それに対して中国からは明確な報復は行われていない。

ABCD包囲網の再現

アメリカは中国の「偵察気球」を国防の脅威と見なした。同時にアメリカは中国と和解しないことを明確に示しており、中国が譲歩するか対立激化を覚悟している。そうでなければ矢継ぎ早に中国が困る対応をしない。

仮にアメリカが中国の顔色をうかがうなら領土に侵入した気球の国籍を言わない。さらに気球を放置するか撃墜するとしても領土ではなく公海に落ちるような場所で実行する。アメリカは明らかに気球を回収することが目的だった。さらに「偵察気球」は通信傍受が目的だと断定し、五大陸に存在する国の国家主権を否定する行為だと発言した。この発言で“中国は世界の敵”であることを暗に示唆した。

アメリカは「偵察気球」の報復として中国企業5社と中国の1研究機関を貿易ブラックリストに追加。さらにアメリカは日本・イギリスと重要な鉱物資源で貿易協定の締結を模索していることが明らかになった。さらにアメリカはEU・主要7カ国(G7)とも重要な鉱物資源で協議を進めており、中国を除外した「重要鉱物バイヤーズクラブ」を創設したい考えとのこと。

アメリカの動きを見ると戦前の日本に対して行った経済制裁・ABCD包囲網に酷似している。日本を市場から追放し外交でも孤立させる。これが現代では中国に対して実行されている。アメリカによる露骨なABCD包囲網の再現だが、これはアメリカが意図的に中国を怒らせ中国から開戦させることが目的だ。

国際社会の基本

国際社会では軍隊を用いて先に開戦した国が悪と見なされる。先に戦争を始めると今の平和を否定する行為。だから戦前の日本は悪と見なされ、現代ではロシアがウクライナに侵攻したことで悪になった。国際社会では宣戦布告は戦争の始まりを告げる飾り。だから宣戦布告後の開戦は正義ではなく悪になる。

だから戦前のアメリカは意図的に日本を怒らせ日本から戦争を始めるように仕向けた。最後の決め手は日本に付きつけたハル・ノート。これで当時の日本は怒り戦争を開始。今のアメリカは経済制裁・ABCD包囲網の形成で中国が怒るようにしている。だから中国が怒ることを連続させるだけではなく強化されるのは当然。さらに中国に対して現代版ハル・ノート突き付けて爆発させるのだ。

中国が先に開戦すれば今の平和を否定する行為になるから、アメリカは正義として中国を裁く大義名分を得る。この準備として「偵察気球」は各国の国家主権を否定することを明示し、“中国は世界の敵”として孤立化を進めているのだ。さらに経済制裁で中国の利益を奪い弱体化を進めている。中国が放置すれば中国経済は停滞し易姓革命の引き金になる。これは明らかだから中国は5年以内に開戦する決断を迫られる。

何処が選ばれるのか?

中国から開戦するとすれば南シナ海・台湾・東シナ海に限定される。しかも開戦劈頭でアメリカ軍に致命的な損害を与えなければならない。そうなると台湾侵攻は不向き。何故なら台湾軍が戦争の主役になりアメリカ軍は脇役。アメリカは背後から台湾軍を軍事支援するから中国としては都合が悪い。

南シナ海で開戦するならアメリカ海軍の空母打撃群とフィリピンのアメリカ軍基地が攻撃目標。中国としても実行は容易だが勝利できてもアメリカ軍の損害が少ない可能性がある。それにフィリピンのアメリカ軍基地を破壊できてもアメリカ軍には致命的な損害にはならない。

東シナ海であれば沖縄・九州を開戦劈頭で攻撃することが望ましい。当然アメリカ軍の反撃で中国にも損害が出るが成功すれば戦略で有利になれる。沖縄は常に防御を固めているから攻撃は難しいが九州であれば成功の可能性は高くなる。さらに沖縄・九州はアメリカ軍には重要な基地が多いので、中国が開戦劈頭の勝利を求めるなら人命軽視の攻撃を行うだろう。

仮に実行するとなれば中国の民間人を使った破壊活動だけではなく、日本の民間人を巻き込んだ破壊活動を併用すると推測。最悪なら中国の民間航空機を日本の都市に墜落させる策さえ考えられる。実行すれば911テロ以上の悲劇と破壊を生み出すことになる。

燃料を満載した民間航空機の墜落が恐ろしいことは知られている。ならば佐世保に民間航空機を複数突入させたら?
成功すれば佐世保の基地機能は失われる。こうなると中国による開戦劈頭の攻撃は成功になる。想定するなら最悪を考えるべきで、過去の事例を参考にすると見るべきだ。そうなると日本は、気球だけでなく民間航空機を特定エリアに侵入したら撃墜する覚悟と実行が求められる。

日本の覚悟

国際社会では中立はあり得ない。仮に中立を選ぶなら武装中立。しかも日本独自の覇権が必要になるから現実的に不可能。このためいずれかの陣営に参加して生きることになる。そうなると日本はアメリカしか選べない。仮に中国を選べばチベット・東トルキスタン・香港のように人権を失う未来。だから日本はアメリカしか選べない。

それに中国は開戦劈頭で日本を攻撃することになるだろう。何故なら中国が沖縄・九州を占領できれば太平洋に進出する基地を得る。同時にアメリカから、太平洋から南シナ海に抜ける海上交通路を奪うことになる。これが成功すればアメリカから戦略を奪うことになり太平洋での優位性を中国が得る。だから中国には魅力的なのだ。

更に日本の弱腰。日本は中国の気球だけでなく観測船まで弱腰。これで民間航空機が佐世保に突入する情報を得たらどうなる?迷うだけで撃墜命令を出さないはずだ。もしくはアメリカ軍の対応を待つことになり結果的に被害を出すことになるのは明白。これは明らかだから沖縄・九州は開戦劈頭で攻撃に選ばれるだろう。

 

この記事で述べられている見解は、著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの見解を反映するものではありません。

(Viwepoint https://vpoint.jp/ より転載)
 

戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。
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