中国各地で相次ぐ社会への報復事件 「今の中国社会は邪気が充満している」とネット民

2023/04/06
更新: 2023/05/26

中国では近年、「社会への報復」を意図したとみられるような凶悪事件が後を絶たない。中国国内の厳しいネット統制のなか、海外のSNSに流出した映像だけでも、最近の2週間余りで少なくとも4件確認できた。

吉林省吉林市:暴走車が人を次々はねる

中国東北部の吉林省吉林市で4月2日午後1時半ごろ、自動車が市内の昌邑区にある「万達広場」の歩行者天国へ突っ込んで、歩行者を次々とはねる事件が発生した。地元当局によると6人が負傷。事件の原因などに関する当局の発表はまだない。

ネット上に流出した現場映像は事件発生直後と見られ、多くの被害者が地面に倒れていた。

 

河北省邯鄲市:暴走車と立てこもり

3月31日の夜、河北省邯鄲(かんたん)市の市街でも暴走車が歩行者を次々とはねる事件が発生している。

犯人は暴走させた車を乗り捨てて近くの建物に逃げ込み、爆発物を用いて、立てこもったといわれている。しかし、事件はその後当局による検閲が入り、現在でも事件関連の情報は伝えられていない。当局による公式発表もなく、今のところ事件の原因や死傷者などは不明だ。

 

四川省重慶市:中華包丁で無差別切りつけ

重慶市で今月2日、中華包丁を手にした男が街中で無差別に通行人を切りつける事件が起きた。その場にいた市民が屋台の長椅子や棒などを使って犯人の男を取り押さえた。4人が負傷したとされている。

 

黒竜江省ハルビン市:ガス管を壊してマンション爆破

先月25日、黒龍江省ハルビン市でも社会への報復とみられる事件が発生した。地元警察によると、事件の原因は自殺願望をもつ犯人がマンションのガス管を破壊し、ガス爆発させた。これにより1人が死亡、7人が負傷。犯人は仕事をクビになったバスの運転手で、社会へ報復をしようとして7階建て住宅を爆破し、自殺を図ったとされている。犯人のその後の安否は不明。

 

広東省広州市:横断歩道に突っ込む暴走車

今年1月11日、広東省広州市の中心部にある大型商業施設「正佳広場」に暴走車が突っ込み、横断歩道を渡る歩行者を次々とはねる事件が発生している。地元警察によると、死者は5人、負傷者は13人。現場は日本人が多く住む地域でもある。

犯人の車は、人と車で混雑した道路を往復するなどして、700メートル以上にわたって暴走を繰り返した。歩行者をあえて狙っていた、と目撃者が証言している。SNSで拡散されている現場動画には犯人の男(22歳)が、何かを叫びながら、運転席から紙幣のようなものをばらまいている様子も映されている。

 

凶悪事件を「事故扱い」にして隠蔽する当局

中国で「社会への報復事件」と噂される事件のほとんどは、当局によって「事故」や「単発的かつ個人的な原因による事件」として処理されている。

3月31日に河北省邯鄲市で発生した暴走車の事件は現在、厳しい情報封鎖に遭っており、SNSウェイボー(微博)などでは関連情報が一切ない。それはまるで何も起きなかったかのように、中国のネット上にはその痕跡さえ見つけることができないのだ。

この事件について、海外から中国についての情報発信を行う著名なユーチューバー「老灯」は、「官製メディアが当分の間報じないとしても、この事件は隠しきれるものではない。おそらく一段落して、ほとぼりが冷めたころに簡単なニュースレターが公表されるだろう」と述べた。

1989年の六四天安門事件で弾圧された民主化運動に参加したことのある「老灯」はまた、次のように述べた。

「中国共産党は、公表しなければ『なかったことにできる』と考えている。たとえ(当局が)公表するとしても、ほとぼりが冷めたころに、それを以前に起きた事として簡単に報じるだけだ」

「つい先日の、コロナの感染爆発の時もそうだった。当時は数人とか、数千人とか言っていたが、後になってから数万人死亡したと言う。しかし、感染の波はもう過ぎたため、これ以上深く追及することはない」

さらに「老灯」は、「中国の人民には、永遠に『知る権利』は与えられない。なぜなら、もしも人民が真相を知れば、中共の統治が揺らぐからだ。なぜ中国でこれほど社会への報復事件が多発するのか。その原因を人民に知られることを当局は最も恐れている」として、事件を隠蔽しようとする中共当局の意図を説明した。

「邪気」が充満した社会

中国のネット上には「現在的社会戾气很重(今の中国社会は『戾气』が充満している)」というコメントを多く見かける。

「戾气(リーチー)」とは中国の伝統医学の概念で、正気(せいき)の反対の「邪気(じゃき)」に相当する。それは横暴で残虐な、恨みがましい偏った心理であり、極端に走りがちな気風のことを指す。その邪気が、中国社会全体に蔓延しているというのだ。

こうした邪気を発する元凶である中国共産党が存在する限り、中国での社会への報復事件は後を絶たないだろう。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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