「結婚より、離婚するカップルが多い」と動画投稿したユーザー 警察に拘束される=中国

2024/03/04
更新: 2024/03/04

中国においては、今や「口にしてはならない」話題が実に多い。うっかり口にしたことや、何気なく見かけた光景を撮影してネット投稿しただけで、地元警察から「特別な扱い」を受けることもあるのだ。

「民政局(中国で結婚や離婚の届けを出す役所の部門)における離婚申請ブーム」は、2月20日の中国SNSのホットリサーチ入りした。そのきっかけとなったのは、あるユーザーが「結婚するより、離婚するカップルが多い」と動画投稿したことだ。ところが、そのために投稿者が警察に拘束される事態になった。

中共の神経を「逆なで」すれば拘束

中共当局にすれば、深刻化する少子化になんとか歯止めをかけようと、あの手この手で結婚や出産を呼びかけているなかであり、それを逆なでするような「ホットな話題」は望んでいない。

そこで、この「離婚ブーム」トピックスに火を付けるきっかけになった動画の投稿者が、地元警察から「特別な扱い」を受けたことがわかった。なんと警察に拘留されてしまったのである。

旧正月の休みが明けた民政局の業務日の初日(2月18日)。この日に結婚手続きをするため、民政局へやってきた安徽省淮南市の市民・王さん(女性)がいた。ところが、王さんがそこで目にしたのは、離婚手続きをするために来た人々の長蛇の列だった。

そこで彼女は、その様子を動画に撮影し「旧正月明けの業務日の初日。ここにいるのは、みんな離婚手続きをするために来た人。結婚する人より多い」という説明を添えてSNSに投稿した。

この話題がSNSのホットリサーチ入りしたその日(20日)、王さんは「デマを散布した」として現地公安に行政拘留される。そのことが更にニュースとなり、この問題を一層広めた。

「デマを散布した」という問題の動画は、以下のものである。

映像を見る限り、そこは人が多い役所の窓口というだけで、特に反体制的なニュアンスなどはない。ところが当局は「離婚する者が多い」という動画の添え書きに、過敏なほどの「拒絶反応」を見せたようだ。

(「デマを散布した」という問題の動画。人が多い役所の窓口というだけで、特に反体制的なニュアンスなどはない)

「旧正月の業務日の初日、離婚する人は結婚する人より多い」の動画を投稿した市民を警察が行政拘留したことを伝える湖南省の長沙テレビの法律チャンネル。(中国のネットより)

「中共が断定するデマ」は、それが真実だから

「中共当局が『デマ』と断定して、もみ消しに躍起になるのは、それが真実であるからだ」

このことは、すでに中国では常識であると言ってよい。当局が過去に「デマ」呼んだものが真実だったことは、中国人はこれまでの多くの経験から知っている。つまり、中共が「デマだ」と言えば、それは中共が隠蔽したい真実なのだ。

例えば、有名な例としては2019年12月、中国武漢で「ウイルス感染はじまり警鐘者」の1人として警告を発した李文亮医師がいた。

武漢の眼科医・李文亮医師は、中国における新型コロナ発生の最も初期の段階で、中国政府の発表前から「原因不明の肺炎の存在」をいち早く察知し、同僚の医師たちに警告を発した。

しかし、李医師は「デマを散布した」として、武漢の公安当局に呼び出され、訓戒処分を受ける。当局の処分に服する署名をさせられるとともに、国営の中国中央テレビ(CCTV)の報道番組でも、連日のように「デマ散布者」として伝えられた。その後、李医師は自らも中共ウイルス(新型コロナウイルス)に感染し、翌年2月7日に妻子を残したまま死亡する。享年33歳だった。

若く誠実な医師・李文亮氏の死から4年が経つ現在、真実を語って弾圧された李医師の無念を想起するとともに、都合の悪いものは何でも「デマ」と決めつけて、その「もみ消し」に躍起になる中共当局の欺瞞性を改めて感じた人は少なくない。

今回「民政局の離婚登記所にできた長蛇の列」は裏付け動画もあり、何より撮影者が拘留されている。そうすると、この当局が「デマ」だと主張することは、紛れもない真実である可能性が高い。

中国で今、離婚する人が急増している原因には、本当に夫婦間の愛情がなくなった事例だけとは限らず、例えば住宅ローンなど各種の借金の返済義務を回避するため、あえて離婚を選択した結果であるとする見方もある。

しかし、いずれにしても離婚件数の激増は、中共当局が進めようとする「人口増加」に反する動向であるため、中共にとってはまさに「都合の悪いもの」なのだ。

その動画を投稿したことにより地元警察から「特別な扱い」を受けたのは、投稿者にしてみれば、まったく迷惑で、理不尽な災難であったと言うしかない。

武漢の眼科医・李文亮医師(33)の肖像画。写真は2020年2月、武漢市内の病院前の献花台で撮影(Getty Images)

 

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李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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