大阪市内の中学校に通っていた当時3年生の男子生徒が2023年8月に自殺した問題で、市が設置した第三者委員会は2025年5月12日、部活動内のいじめが自殺の最大の要因だったとする調査報告書を公表した。報告書は、男子生徒が水泳部やクラスで繰り返しいじめを受けていた事実を明らかにし、学校側の対応の不十分さを厳しく指摘している。
男子生徒は入学直後から、仲間外れや無視、悪口、SNSでの排除など、合計45件に及ぶいじめを受けていた。特に水泳部では、複数の部員から「うざい」などの言葉を浴びせられ、練習中の排除や打ち上げへの不参加など、集団による排除が続いた。亡くなる直前には、部の打ち上げに誘われず、SNSでその事実を知った男子生徒が「ハブられた」などのメッセージを残して自殺した。遺書には「これ以上傷つきたくなかった」と記されていた。
第三者委員会は、これらの行為を「いじめ」と認定し、「部活動内いじめが自殺の主な要因」と結論づけた。さらに、学校側がいじめを認知し、組織的に対応する体制が不十分だったこと、顧問が多忙で部活動の現場に十分に関与できていなかったこと、また「いじり」と「いじめ」の区別が曖昧であったことなど、学校の組織的な問題を指摘している。
この事件は、「学校は子どもにとって本当に安全な場所なのか」という根本的な問いを社会に突きつけている。従来の「早期発見」や「教職員の意識改革」といった対症療法的な対策だけでは、いじめの根絶や子どもが安心して通える学校づくりは難しいことが、今回の事案からも明らかになった。いじめは個人の問題ではなく、集団の中で生まれる構造的な問題であり、学校や部活動という閉鎖的な空間、同調圧力や排除の論理、そして「いじり」を容認する文化が温存されている限り、根本的な解決には至らない。
また、学校という組織自体が「いじめを隠す」「事なかれ主義で対応する」傾向があることも、過去の多くの事案で指摘されてきた。これらは制度や組織文化の問題であり、個々の教職員の努力だけでは限界がある。今後本当に必要なのは、「いじめが起きない集団づくり」や「子どもの人権を守る学校運営」への抜本的な転換である。
今回の第三者委員会報告書は、学校という場そのものの在り方、組織文化、制度設計を根本から問い直す必要性を社会に突きつけている。いじめで子供が自死するような悲惨な状況を無くすためには、一体この社会に何が欠けているのだろうか? 子どもたちが本当に安心して過ごせる学校を実現するために、今こそ社会全体で抜本的な議論と改革が求められている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。