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中共 米インフルエンサーを無料旅行で招きイメージ戦略強化

2025/06/13
更新: 2025/06/13

中国共産党(中共)は現在、アメリカのインフルエンサーを対象に「本当の中国」を体験させる10日間の無料旅行を企画し、自国のイメージ向上を図っている。各種分析によれば、この取り組みの背後には、中共の長期的かつ戦略的な意図があるとされている。

中共の官製メディアが公開した募集情報によれば、この無料旅行は7月に実施予定であり、30万人以上のフォロワーを持つ若年層のソーシャルメディア・インフルエンサーが対象とされている。彼らは中国のコンテンツクリエイターと協働し、「本当の中国」を発信することが企図されている。

昨年、習近平は5万人のアメリカ人学生を中国に招き、現地で学ばせる計画を打ち出した。

北米の中国語メディア『留学生日報』は関連ポスターを掲示し、中国人留学生に対し、影響力を持つアメリカ人ブロガーを「中米青年ブロガー交流キャンプ」へ推薦するよう呼びかけている。費用は中共側が全額負担するとしている。

主催者は参加者を蘇州、上海、深圳、邯鄲、北京の5都市に案内し、中国のEコマース拠点や小紅書テクノロジー社、BYD本社などの見学を計画している。

インフルエンサーらは太極拳などの文化活動に参加し、故宮や万里の長城の訪問をライブ配信しながら、中国のインフルエンサーと共同でコンテンツを制作する。これらのコンテンツは中共の官製メディアによって広く拡散される。

分析によれば、こうした交流活動の本質は、中共による広範なプロパガンダ工作の一環だ。

アメリカ在住の人権派弁護士・呉紹平氏は次のように述べた。
「このプロパガンダは、国内外の視聴者に向けた中共によるイメージ操作だ。多数のフォロワーを持つアメリカのインフルエンサーを活用し、中共のイメージを美化しようとしている。習近平政権以降、中共の国際的評価は悪化し、人権侵害の実態が世界に広く知られるようになった。そのため、アメリカのインフルエンサーを利用して、イメージの『クリーン化』を狙っているのだ」

習近平は政権発足当初から「中国の物語を巧みに語る」という方針を掲げ、豊富な資金を投入して各国のメディア関係者やインフルエンサーを中国に招き、中共の「代弁者」として取り込んできた。

呉紹平氏は中共がこれまで多くのアメリカインフルエンサーを自前で育成し、その多くが現在も中共の宣伝活動に従事しており、現在は、より広範な人気を持つインフルエンサーを直接起用し、その影響力を中共のプロパガンダに活用する方針へと転換していると語った。中共の拡張と浸透は米政界によって厳しく制限されており、そのため別の戦略を模索する必要が生じている。

「中共はアメリカの市民社会に影響を及ぼすことで、『中共のナラティブ』を発信し、最終的にはアメリカ国民の意見を通じて政治に影響を与えようとしている。これが中共の長期的戦略であり、欧州に対しても同様の宣伝攻勢を強化するだろう」

最近数か月間、米中間ではテクノロジー、貿易、地政学的分野での対立が激化しており、中共がこの交流プロジェクトを立ち上げた背景には、アメリカ政府と国民の間に楔を打ち込む狙いがあるとの見方もある。

アメリカでセルフメディアを運営する黄子茵氏は「中共の目的は明白であり、アメリカ国民を欺くことにある」と延べ、アメリカは民主主義国家であり、国民の意見が政府の政策に大きな影響を与える。これらのインフルエンサーは中共の歴史を十分に理解しておらず、中共は世界中の若者、とりわけアメリカ人を長期的な影響の対象にしている。

オーストラリア戦略政策研究所の報告によれば、2023年時点で120人以上の外国人インフルエンサーが中共の支援を受け、「中共のナラティブ」を称賛する発信を行ってきた。

『留学生日報』は、中国・蘇州で開催されたインフルエンサー向けイベントにて、「世界青年発展フォーラム」の現場を訪問し、500人以上の国際的な若手リーダーが一堂に会したと報じている。

黄子茵氏は「この訪中プロジェクトの全過程は中共の統制下にあり、訪問先や面会相手、視察内容、受けるインタビューに至るまで、すべて中共が管理している」と述べた。

その結果、参加者が目にするのは『中共が見せたい中国』であり、実際の中国とは大きく異なっているという。

米国でセルフメディアを運営する黄子茵氏はさらに、このような無料旅行は事実上の「賄賂」に相当すると批判している。

「若いインフルエンサーに対して、どの国が10日間の無料旅行を提供するだろうか。そんな国は存在しない。この行為は本質的に買収にほかならず、アメリカでは企業が顧客に無料旅行を提供すれば賄賂と見なされる。中共が同様のことを行う場合も、明確な賄賂だ」

一方で、黄子茵氏は中共のこの手法が逆効果を招く可能性にも言及している。つまり、これまで中国に関心のなかった海外インフルエンサーが、中国社会の実態に目を向けるきっかけとなる恐れがあるということだ。アメリカのインフルエンサー、レレ・ファリ氏はその代表例であり、かつて「共産党の奨学金」を受けて中国に渡ったものの、中共の本質を見抜き、最終的に反中共の立場に転じた。