ロサンゼルス暴動を受け、トランプ大統領の州兵派遣を巡り州知事と連邦政府が激しく対立。第九巡回区控訴裁判所は大統領の派遣を暫定許可し、法的・政治的緊張が続いている。

ロサンゼルス市内で続発

ロサンゼルス暴動を受け、トランプ大統領の州兵派遣を巡り州知事と連邦政府が激しく対立。第九巡回区控訴裁判所は大統領の派遣を暫定許可し、法的・政治的緊張が続いている。

ロサンゼルス市内で続発する暴動を受け、トランプ大統領とカリフォルニア州政府の間で州兵の指揮権を巡る対立が激しさを増している。6月12日、米国第九巡回区控訴裁判所はトランプ大統領の決定を支持し、カリフォルニア州兵のロサンゼルス派遣を一時的に認め、下級審による派遣差し止め命令の効力を凍結した。この決定により、現時点で州兵の指揮権は依然として大統領の手にある。

州知事の同意を欠いた州兵動員を巡る法的対立

発端となったのは、カリフォルニア州ギャビン・ニューサム知事が「州知事の同意を欠いた違法な連邦介入」と断じ、裁判所に差し止めを申し立てたことである。ニューサム知事は、憲法および連邦法に違反していると主張し、州の主権と自治の原則を強調した。

この主張に対し、サンフランシスコ連邦地裁のチャールズ・ブレイヤー判事は同日午前、トランプ大統領による派兵を違法と判断し、州兵の指揮権を州に戻すよう命じた。判事は、ロサンゼルスでの抗議活動の激化を認めつつも、「叛乱」とは認定できず、連邦法が規定する動員要件を満たしていないと指摘した。

控訴裁判所が緊急介入、指揮権は大統領に残る

しかし、ブレイヤー判事の命令はわずか数時間で失効した。第九巡回区控訴裁判所は同日夜、緊急の行政暫定命令を発し、下級審の判断の執行を停止した。これにより、最終判断までの間、州兵の指揮権は大統領側に残ることとなった。控訴審には3人の裁判官が出席し、うち2人はトランプ政権下、1人はバイデン政権下で任命されている。

控訴裁判所は来週火曜日に本審理を予定しており、その判断に注目が集まる。

ロサンゼルスに展開する軍部隊とその任務

カリフォルニア州政府が提出した資料によれば、24時間以内に約140名の米海兵隊員がロサンゼルスに到着し、州兵の一部任務を引き継ぐ計画が進行中である。海兵隊員は現在、オレンジ郡のシールビーチ海軍兵器基地で「都市暴動対応訓練」に参加しており、訓練には総勢約700名が加わっている。現時点では、彼らの具体的な任務範囲についての情報は公表されていない。

第51特遣隊を率いるスコット・シャーマン少将によれば、すでに約500名の州兵員が移民・関税執行局（ICE）の逮捕活動支援に向けた訓練を終えている。これに対し、海兵隊員は移民関連の突入作戦に関する訓練を受けておらず、第一線での実動投入の可否は未定である。

軍当局の見通しによれば、今週末までに最大4千名の州兵員と約700名の海兵隊員がロサンゼルス市内に展開する予定だ。

法律論争の核心　大統領の動員権限

本件の最大の争点は、大統領が州知事の同意を得ずに、連邦法第10編（Title 10）に基づいて州の州兵を動員できるかどうかにある。連邦政府は、大統領が必要な通知を軍上層部に行っており、手続きに問題はないと主張している。また司法省は、「アイゼンハワーやニクソン政権下でも裁判所が軍派遣に介入した例は存在しない」として、本件も司法判断の対象とすべきでないと訴えている。

一方、カリフォルニア州の代理人ニコラス・グリーン弁護士は、連邦法第12406条が州兵の動員に州知事の命令を必要としているとし、「州の主導権を連邦が奪うことは認められない」と強く反論した。

軍展開の社会的影響と政界の反応

ロサンゼルスでは、移民取り締まり強化を背景に暴力的な抗議活動が連日続いており、トランプ大統領はこれを「叛乱」と断定し、「軍の展開がなければ都市は壊滅していた」と主張している。これに対し、ブレイヤー判事は「軍の存在が抗議者との緊張を高め、州が州兵を山火事や麻薬対策など本来の任務に使う能力を損なっている」と警告した。

この問題は、移民政策を巡る民主党と共和党の対立をさらに鮮明にしている。12日、国土安全保障省のクリスティ・ノーム長官が「ロサンゼルスを救う」と発言した記者会見の直後、民主党のアレックス・パディラ上院議員が連邦捜査官により会場から退去させられる事態が発生した。この出来事は両党の間で激しい議論を引き起こしている。

控訴裁判所による今回の暫定判断は、トランプ大統領に州兵の指揮権を一時的に保持させるにとどまっている。来週の本審理において最終判断が下される見込みであるが、州と連邦の権限を巡る法的・政治的な対立は今後も続く見通しである。ロサンゼルスの治安と移民政策を巡る緊張は、引き続き全米の注目を集めている。