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台湾有事はすでに始まっている? 台湾全土に広がる国会議員リコール運動 中共の浸透工作に市民が反発

2025/07/16
更新: 2025/07/16

台湾では、かつてない規模の「大罷免潮(国会議員大量リコール運動)」が展開されている。その背後には、中国共産党(中共)による台湾への新たな浸透戦争が潜んでいる。

このリコール運動を理解するには、まず2024年の選挙後に形成された政治構造を確認する必要がある。選挙後、台湾の政界は「与党少数・野党多数」という構図となり、与党は立法院における主導権を失った。

これを受けて野党の国民党・民衆党連盟は、「国会職権法」「公職人員選挙罷免法」「憲法訴訟法」などの論争を呼ぶ法案を次々と提出し、さらに国防予算を大幅に削減した。この動きに対し、市民の間に強い反発が生まれ、「青い鳥運動(青鳥運動)」やリコール運動へと発展した。

とりわけ注目に値するのは、2024年4月に国民党の傅崐萁立法委員が、国民党陣営の立法委員16人を率いて北京を訪問し、中共全国政治協商会議主席の王滬寧と会談した件である。彼らは帰国後、台湾立法院で中共寄りの法案を積極的に推進し始めた。この行動は市民団体から「赤い代理人」との疑いを招き、多くの市民が中共の影響力が立法院にまで及んでいると認識した。これにより、政界から「赤い勢力」を排除しようとする動きが強まり、民間主導のリコール運動が始まった。

ドイツの国際放送「ドイチェ・ヴェレ」は、市民の声を報じている。あるリコールボランティアは、「今回のリコールは、中共による政治的浸透と台湾の抵抗力低下を防ぐためである」と語った。新北市のボランティア、サラ氏は「共産主義への抵抗を怠れば、台湾の民主と自由は再び失われる」と警告した。このような発言は、中共の脅威が単なる予兆ではなく、台湾の目前に迫る現実であることを示している。

アメリカのシンクタンク ランド研究所に所属する政治学者、王宏恩氏は、国民党陣営による国防予算削減と、中共の軍事的挑発が頻発になったことで、「反中共・台湾防衛」というスローガンがリコール運動の中核となり、中間層の有権者の支持を得て全国に拡大したと分析している。

中共による「灰色の陰謀」と三戦とは何か

より深刻なのは、中共の「グレーな戦術」が台湾政治に及ぼす影響である。雲林にある雲科大財金学科の鄭政秉教授は、メディア「上報(アップメディア)」に寄稿し、中共が軍事的威嚇にとどまらず、非伝統的な手段を駆使して台湾政府の機能を麻痺させ、「戦わずして屈服させる」戦略を遂行していると指摘した。

具体的には、親中派政治家による立法院掌握に加え、中共は言論戦・心理戦・法律戦という「三戦」を展開し、大規模な認知戦を通じて台湾市民の思考と意志に揺さぶりをかけている。

鄭教授は、今回のリコール運動の成否が、台湾の将来を大きく左右すると警鐘を鳴らしている。運動が成功すれば、中共による立法院工作と「グレーな戦術」は深刻な打撃を受け、その浸透工作は頓挫する。だが、運動が失敗すれば、中共は次の段階として「半封鎖戦」あるいは「全面攻撃戦」に移行する可能性が高まり、台湾の安全保障は一層不安定化する。

もう一つの問題は、台湾社会に蔓延する「降伏主義」や「敗北主義」である。多くの市民が現実から目を背け、抵抗を放棄する姿勢を見せており、それこそが中共が付け込もうとしている抜け穴なのだ。

このような状況において、今回の民間発のリコール運動は、単なる政党間の対立を超え、全国民が覚醒し、中共のさらなる侵略を阻止するための決戦となっている。

中共の対応も注視すべき要素である。中共国務院台湾事務弁公室はリコール運動を即座に批判し、「民進党による政治的操作」だと非難、「断固反対」を呼びかけ、「緑色独裁」と決めつけた。多くのメディア分析では、中共はリコール運動の成否そのものよりも、台湾内部の分裂の深刻化を歓迎しており、それを自らの戦略的利益に転化しようとしていると指摘している。

結論として、今回の「リコール運動」は、単なる政治的対立ではなく、台湾国民と中共との間における全面的な対決である。台湾の未来と自由をかけた戦いは、すでに始まっている。

唐青