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中国不動産市場 販売 投資 利益の三重苦 政府の「回復論」に広がる疑念

2025/08/05
更新: 2025/08/05

中国の不動産市場が依然として厳しい状況にある。販売、投資、利益の各指標が軒並み落ち込み、政府系メディアが繰り返す「段階的な回復」という公式見解に対して、市場関係者や市民の間から再び疑問の声が上がっている。

中国最大級の民間不動産市場調査機関である中国指数研究院が7月31日に発表したデータによると、2025年1~7月、不動産開発業者上位100社による販売総額は2兆700億元(約42兆4350億円)となり、前年同期比で13.3%減少した。この減少幅は、今年上半期(1〜6月)の11.8%からさらに1.5ポイント拡大しており、低迷傾向が一段と強まっている。特に7月単月では18.2%の大幅減となった。

一方、調査会社イーハウス中国研究開発研究所の調査によると、A株上場の不動産企業65社のうち、60%を超える41社が2025年上半期の赤字を見込んでいる。

不動産デベロッパー大手の万科企業股份有限公司は、今期の損失額を100億〜120億元と予測しており、前年同期の赤字(98.5億元)をさらに上回る見通しだ。官製メディアは、万科は同業他社の中で最大の損失を計上する可能性があると伝えた。

統計と現実の乖離 SNSで広がる不信感

かつて業界をけん引してきた華夏幸福基業股分有限公司と金地集団も業績不振に陥っており、前者は55億〜75億元(約1128億〜1538億円)、後者は34億〜42億元(約697億〜861億円)の損失をそれぞれ見込んでいる。

万科の経営状況はとりわけ深刻だ。今年の旧正月以降、経営陣の刷新を行い、従来の専門経営者による運営モデルから国有企業による直接管理体制へと転換した。加えて、深セン地鉄をはじめとする国有資本から210億元(約4305億円)超の支援を受けたにもかかわらず、2025年上半期の契約販売額は前年同期の1273億元(約2兆6097億円)から691億元(約1兆4156億円)へと約50%の減少となった。キャッシュフローの逼迫も依然として続いている。

公式統計と実態の乖離にSNSで批判も

こうした市場の悪化に対し、SNSなどインターネット上では、政府が公表する統計の信頼性に疑問を呈する声が強まっている。

中国の不動産ブロガーや一般のネットユーザーの中には、「政府の統計は政治的意図を帯びており、実際の市場を正しく反映していない」と指摘する声も多い。

たとえば、中国指数研究院のデータでは、2025年7月時点で上位100社による新築住宅の平均販売価格は前年同月比で2.6%上昇したとされている。一方で、中古住宅の価格は同じ期間に7.3%も下落しており、新築と中古の価格差が大きく広がっている。

SNS上では、「この価格差が、政府統計と現場の実態との乖離を物語っている」との声が広がっている。中古住宅の実際の取引価格は政府が発表する水準よりもはるかに低く、実需や住宅の手の届きやすさを反映しているのは中古市場の価格だとする意見も多い。

仮にこうした現場の報告が正しければ、価格が下がっているにもかかわらず販売件数が13.3%も減少していることは、「値下げしても買い手の関心を取り戻せない」という深刻な需要不振を示している。

不動産投資も急減 2025年の市場縮小が鮮明に

投資の面でも、市場は大幅な縮小を見せている。中国国家統計局によると、2025年上半期の不動産投資総額は4兆6600億元(約95兆6300億円)で、前年同期比11.2%の減少となった。このうち住宅関連投資は10.4%減の3兆5700億元(約73兆2850億円)にとどまった。

これは、2023年通年の不動産投資総額と比較しても、市場全体の大幅な縮小が進んでいることを明確に示している。

企業業績、新築および中古住宅の価格、販売件数、固定資産投資といったほぼすべての主要指標において、業界全体が深刻な下落傾向にある。これは、「不動産市場は回復基調にある」とする政府の公式見解と大きく食い違っている。

資産価値の下落が消費意欲と家計を直撃

中国の著名な経済学者である向松祚氏は、SNS上で広く拡散されたインタビューの中で、これまでの不動産ブームは「実需」と「投機的投資」の二つの要因によって支えられていたと説明した。

しかし、投機的な購入者の多くはすでに大きな損失を被っており、所有物件の価格が購入時より下落しているケースも少なくない。その結果、投資家の関心はほぼ消え、今や実需だけでは市場価格を支えるには不十分だという。

「住宅価格の下落は避けられない。そのコストは、国民全体が負担せざるを得ない」と警鐘を鳴らした。

さらに向氏は、「住宅の価値が下がり、株式市場も振るわず、給与も増えない状況で、一般の人々に積極的な消費を求めるのは難しい」と述べ、住宅資産の下落が国民の購買意欲に直結していると指摘した。

同様の見解は、中国社会科学院金融研究所の張曉晶所長も示している。張氏は中国メディアの取材に対し、「労働者階級の多くにとって、住宅は総資産の60〜70%を占める重要な資産であり、価格の下落は家計資産に直接的な損失をもたらす」と語った。一方で、富裕層はより多様な資産を保有しており、不動産市場の影響を比較的受けにくいと分析した。