8月22日未明、青海省で建設中だった川青鉄道の「尖扎(せんさつ)黄河特大橋」が完成目前に突如崩落した。12人が死亡、4人が行方不明となる大惨事の直後、施工を担った国有大手・中国鉄道集団(中鉄集団)が発したのは「業績に重大な影響はない」という冷酷な一文。人命より利益を優先する姿勢に、中国国民の怒りが爆発している。
崩落の直接原因は、橋を支えるワイヤーロープと本体を結ぶビームアンカーの切断とされる。浙江工業大学土木工学教授・彭衛兵氏と、米国の橋梁設計専門家・竹学葉氏はいずれも「ロープの材質不良か施工の不備が主因」と一致して指摘。
さらに工期遅れを取り戻すため、夜間を含む突貫作業が続いていたことも判明しており、無理な施工と安全管理の甘さが事故を招いたとの見方が強まっている。粗悪な資材、手抜き施工、強引な日程。いずれも人命を軽視した結果であり、崩壊は“必然”だったと感じざるを得ない。
「中国速度」と称して短期間で巨大建設を完成させる手法は、国家の威信(体制の実績)を誇示する象徴とされてきた。しかしその裏では粗悪な資材、手抜き施工、無理な日程が常態化していた。
(崩れ落ちた「中国速度」、建設中に崩落した尖扎黄河特大橋)
米国在住の人権派弁護士・呉紹平氏は、中国の建設現場では不合格資材の使用や形式的な検査が横行し、監督者まで賄賂に加担していると証言する。2008年の四川大地震でも粗悪工事が多数の死者を招いたが、その教訓は生かされず、官民癒着による腐敗がいまも続いているという。

昨年7月には陝西省で、高速道路橋が開通からわずか6年で崩落し、38人が死亡した。原因は公表されず、過去の同様の事故もすべて曖昧なままにされてきた。今回もまた、責任追及が行われないまま幕引きされるのではないかとの懸念が広がっている。
事故から2日後、中国鉄道集団は公告を発表した。文中では「哀悼」や「家族への謝罪」に触れたものの、結びで「今回の事故は、会社全体の生産経営および業績に重大な影響を及ぼすことはない」と強調。この冷酷な一文が、国民の怒りに火をつけた。
SNS上では「命より利益か」「民営企業なら責任者はとっくに拘束されている」といった声が相次ぎ、「血も涙もない」「数字しか見ていない」と非難が飛び交った。国営企業への不信と憤りが、さらに強く渦巻いている。
「中国速度」の裏で犠牲になったのは人間の命だった。命より数字を優先する国営企業、そしてそれを容認する体制。崩れ落ちたのは橋だけではない。国民の信頼そのものが音を立てて瓦解している。


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