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米国 インド製品に50%関税発動

2025/08/27
更新: 2025/08/27

アメリカのトランプ政権は、インド製品に対する関税を50%に引き上げた。この措置は、年間2000億ドル規模の米印貿易やインド経済に大きな影響を及ぼしている。今回の追加関税の背景には、インドによるロシアからの原油輸入がある。

トランプ米大統領が発表していたインドからの輸入品に対する追加関税は、8月27日午前0時(米東部時間)に発効した。すでに課していた25%の関税に加え、さらに25%が上乗せされ、対象品目の税率は合計50%に達する。

トランプ大統領は今年4月、世界的な関税方針を示し、当初はインド製品に26%の関税を課す方針を示していた。その後25%に修正されたが、8月6日には新たな大統領令を出し、インドが「ロシア産原油を直接・間接的に輸入している」として追加課税を決定した。

インドは2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、同国との主要な貿易相手国となっており、両国間の年間貿易額は約690億ドルに上る。昨年はロシアから520億ドル以上の原油を輸入し、ロシアの輸出総額の約3分の1を占めた。アメリカ政府は、こうしたロシア産エネルギーの調達がモスクワの軍事活動を下支えしていると警告している。

これに対しインド政府は「14億人近い国民に安定的で手頃なエネルギーを供給する必要がある」と説明し、アメリカ側の批判を退けている。

アメリカ通商代表部の統計によれば、2024年の対インド貿易赤字は460億ドルと、前年比5.9%増加した。ホワイトハウス通商顧問のピーター・ナバロ氏は、関税政策は「不均衡な取引を正す一環だ」と強調している。

経済・通商への影響

今回の追加関税は、年間2000億ドル規模にのぼる米印貿易に影響を及ぼす見通しだ。アメリカ経済分析局によると、6月のインドからの輸入額は前月比3%減少したものの、前年同月比では29%増加した。

サプライチェーン分析企業ディスカーテス(Descartes)は、7月のアメリカ全体のコンテナ輸入が前月比18%増加し、そのうちインドからの輸入も14%拡大したと指摘。「関税発効を前に企業が調達の前倒しをした」と分析している。

一方、予定していたアメリカ通商代表団の訪印は中止され、今後の交渉の行方は不透明だ。インドのジャイシャンカル外相は「農民や中小企業に関わる政策で譲歩はできない」と述べ、交渉における一線を明確にした。

経済面では、2025年4〜6月期のインドの実質GDP成長率は6.6%と、前期(7.4%)から減速が見込まれており、エコノミストは追加関税や通商政策の不透明感が下振れリスクになり得ると警戒している。

国内では商品・サービス税(GST)の調整など制度改革の機運が強まり、外交面では中国との関係深化を模索する。モディ首相は今週開催される上海協力機構(SCO)首脳会議で習近平国家主席と会談する予定で、訪中は7年ぶりとなる。

イギリス調査会社キャピタル・エコノミクスの試算では、50%の関税が継続した場合、インドの対米輸出は大幅に縮小し、2025年と2026年のGDP成長率をそれぞれ0.8ポイント押し下げる可能性があるとしている。

アンドリュー・モランは10年以上にわたり、ビジネス、経済、金融について執筆。「The War on Cash.」の著者。