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「異例の措置」で中国共産党の市場操作を阻止 アメリカ内務長官

2025/10/14
更新: 2025/10/14

米国のダグ・バーガム内務省長官によると、この春、中国共産党(中共)が自動車からF-35戦闘機に至るまであらゆる製品に用いられる磁石の製造に不可欠な7種類の重希土類元素の輸出制限を課したため、西側諸国の主要産業は数週間以内に操業停止に追い込まれる危険があったという。

「我々はやられたらやり返す応酬をしていた」と、バーガム氏は10月7日のエポックタイムズの番組「米国思想リーダ」(番組ホスト:ヤン・エキレック)でのインタビューで述べた。

バーガム氏は、4月2日に米国のドナルド・トランプ大統領が中国からの輸入品への関税を145%に引き上げる大統領令を発したことに対し、中共が4月4日に取った措置を振り返った。

「彼らは特定の種類の磁石の出荷を米国だけでなく西側諸国すべてに対して差し止めた。我々は数週間以内に世界中の自動車工場がすべて停止する状況に直面していた」と述べた。

トランプ政権は電子機器を関税引き上げの対象外とし、中共も制限を解除したが、この一件は米国とその貿易相手国が、重要鉱物資源における中国の世界的支配にいかに脆弱であるかを浮き彫りにした。

米国地質調査所の2024年「鉱物商品概要」によれば、米国は50種類の最重要鉱物のうち12種類で輸入依存率100%、さらに29種類で輸入依存率50%以上である。

エキレック氏はこれをさらに踏み込んで説明し、「世界市場で販売される最も重要なレアアース20種類のうち85%を中国の加工業者が生産している」と指摘した。

バーガム氏は、中共の輸出制限は「西側諸国すべてにとって『我々は安全なサプライチェーンを確保しなければならない』と警鐘を鳴らすものだ」と述べた。

トランプ大統領は就任初日にエネルギー緊急事態を宣言し、重要鉱物および資材の供給をより安全かつ予測可能で手頃な価格にするために国内エネルギー生産を拡大する大統領令を発令していた。さらに3月には、行政機関に対し許認可手続きを簡素化して鉱業を促進し、より多くの公有地を採掘に開放し、国防生産法の対象に重要鉱物開発を含めることを求める大統領令を発表した。

「トランプ大統領は、国家のエネルギー緊急事態の一環として、あらゆる権限を駆使してサプライチェーンを国内に回帰させようとしている。鉱山採掘に復帰するだけでなく、それら鉱物の精錬にも取り組まなければならない」とバーガム氏は述べた。

2025年4月、連邦許可評議会は3月の大統領令に基づき、迅速化対象となる鉱物プロジェクト10件を特定した。その中には、アリゾナ州のレゾリューション・カッパー社による銅鉱山や、アーカンソー州南西部におけるスマックオーバー・リチウム社のプロジェクトが含まれている。

ドナルド・トランプ大統領は、2025年4月8日にホワイトハウスで、米国の石炭採掘と生産を促進する大統領令に署名した後、ダグ・バーグム内務長官(左)とクリス・ライト・エネルギー長官と会話している。Saul Loeb/AFP via Getty Images

しかし、中国は今後数年にわたり世界の鉱物市場を支配し続ける見通しである。市場シェアが脅かされると、中共は加工業者に補助金を与えて生産を拡大させ、価格を暴落させることで競合他社を採算割れに追い込む。

バーガム氏は、中国がカリフォルニア州のマウンテンパス鉱山(MPマテリアルズ社が所有・運営。この夏まで国内唯一のレアアース鉱山であった。)を廃業に追いやろうと露骨に試みたことを指摘した。これは、国防総省が10年以上前に同鉱山の再開を補助する基金を設立していたにもかかわらずのことだった。

「彼ら(企業)が数億ドルを稼ぎ、IPO(新規株式公開)の準備が整い、資本市場や商業ローン、社債へのアクセスも潤沢だったにもかかわらず、翌年には中国の市場投げ売りにより2億ドルの損失を出す羽目になった」と述べた。「これは、中国が市場競争ではなく、国家戦略として特定産業を補助して支配権を握る際に使う常套手段である」とも述べた。

元ソフトウェア起業家で2期にわたりノースダコタ州知事を務めたバーガム氏は、中共の鉱物市場操作に対抗するために政権が「異例の一手」を打ったと説明した。

「政府は本来、企業の株主になるべきではない。我々は勝者と敗者を選ぶ立場ではない。しかし今回は少数株主として参画し、市場にパートナーシップの存在を示すことができる」と述べた。

政府が重要鉱物関連企業の少数株主となることは、中共による市場操作に耐える市場環境を作り出し、特定の関税と組み合わせることで民間投資を促し、米国の鉱業を再び立ち上げるための安全措置となる可能性がある。

最近の事例として、国防総省によるMPマテリアルズ株15%(4億ドル相当)の取得、エネルギー省によるリチウム・アメリカズおよび同社のネバダ州プロジェクトへの5%出資、カナダのトリロジー・メタルズによるアラスカ鉱山開発への10%出資が挙げられる。

ドナルド・トランプ大統領は、2025年10月6日に大統領執務室で、アラスカ州のアンブラー・ロード鉱山プロジェクトを認可する大統領令に署名した後、ダグ・バーガム内務長官(右)がアラスカの地図を指さし、クリス・ライト・エネルギー長官(左)が見守る中、その話を聞いている。Jim Watson/AFP via Getty Images

バーガム氏は、こうした「複数の鉱物企業への持分投資」により、民間企業にとって機能不全に陥っていた資本市場が活性化されるとしつつも、中共が何十年も続けてきたサプライチェーン操作を克服するには時間とさらなる投資が必要だと述べた。

春に西側産業が直面した「脆弱性」は依然脅威であるとも指摘した。

バーガム氏は、「中国は『この輸出フォームに記入すれば出荷を再開する』と言ったが、そのフォームは、自動車メーカーから防衛関連企業に至るまで、どの磁石をどの製品にどう使い、寸法はどうか、商業用か軍事用かまで答えることを要求する。事実上の巨大な情報収集手段だ」と述べた。

そして、「我々はこのような依存状態を続けるわけにはいかない。だからこそ、トランプ政権下では我々はエネルギー緊急事態にある」と強調した。

さらにバーガム氏は、中共が優位性を過信し、結果として自身の弱点をさらけ出したと指摘した。「私の見解では、中国は手札を切るのが早すぎた。いかなる軍事衝突もない時期、つまり事実上の冷戦・貿易戦争の最中に切ってしまった。その結果、米国が目を覚まし、特にこの政権が目を覚ますこととなった」と述べた。

バーガム氏は、中国が抱える問題として、過大評価された株式市場、不動産過剰、人口高齢化とそれに伴う経済成長鈍化、そして経済の多額債務などを挙げた。

最も重要なのは、中国が「世界で最もエネルギー依存度の高い国」であるという点だとバーガム氏は指摘した。「彼らは電力を維持するためだけに、1日あたり1150万バレルの原油を輸入している」と述べ、「従って中国には多くの依存要因があり、経済安全保障上の問題も抱えている」と分析した。

そして、トランプ政権は貿易交渉を通じて、中国共産党(中共)に「アメリカ市場がどれほど重要であり、アメリカが市場を閉ざせば中国経済に大きな打撃を与えることができる」と強く認識させている。「米国は中国からの輸入品がなくても代替先を探せるが、中国はアメリカ市場を失うと内部経済が大混乱するだろう。そのため中国側もアメリカの強硬姿勢を理解し始め、譲歩する意思を持って交渉の席に着くと考えている」と述べた。

2025年7月21日、中国江蘇省揚州市儀徴にある招商産業金陵造船所で船舶の建造が行われている。STR /AFP via Getty Images
受賞歴を持つエポックタイムズ記者。米国選挙、米国議会、エネルギー、防衛、インフラ分野を専門に担当。 45年以上にわたる豊富なメディア経験を活かし、深い洞察と正確な情報を読者に提供し続けている。