オバマ時代の二酸化炭素排出に関する「危惧判定」を撤回へ =米環境保護庁

2026/02/12
更新: 2026/02/12

トランプ米政権は、2025年夏に掲げた公約を履行し、長らく待ち望まれていた決定を下した。それは、アメリカの産業界に温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出規制を課すために利用されてきた、オバマ政権制定の政策を撤回するというものだ。

ホワイトハウスのレビット報道官は2月10日、記者団に対し、「これはアメリカ史上最大の規制緩和措置となり、国民を苦しめてきた規制を排除することで、1.3兆ドルの節約につながるだろう」と語った。

EPA(環境保護庁:Environmental Protection Agency)の「危惧判定(Endangerment Finding)」は、地球温暖化を阻止する試みの一環として、米国内で販売される乗用車やトラックに課された排出規制の法的根拠となってきた。この危惧判定を撤回することは、車両からの温室効果ガス排出に対する連邦政府の規制を終わらせるだけでなく、最終的には発電所に対する二酸化炭素(CO2)排出規制の撤廃にもつながる可能性がある。

多くの保守派は、議会から与えられた権限を逸脱していると批判してきた連邦規制当局を抑止する動きとして、この決定を喝采した。

エネルギー調査研究所(IER)の政策・広報担当マネージャー、アレックス・スティーブンス氏はエポックタイムズに対し、「我々は、2009年の危惧判定を撤回するというEPAの提案を強く支持する」と述べた。

「このような大規模な権限の主張は、まさに最高裁が『ウェストバージニア州対EPA事件』において、議会からの明確な付与がなければ行使できないと判断した『重大な問題(Major Question)』に該当する。議会はそのような明確な表明を行っていない」

2025年7月にこの撤回方針を初めて示した際、EPAは次のように説明している。

「もし『危惧判定』がなくなれば、EPAは大気浄化法(第202条)に基づいて温室効果ガスのルールを決める権利を失うことになる。そうなれば、自動車メーカーは、今後製造する車はもちろん、すでに売られている古いモデルについても、温室効果ガスを測ったり、抑えたり、国に報告したりする義務が一切なくなるのだ」

2025年3月、EPAのリー・ゼルディン長官は、危惧判定を撤回することで、トランプ政権は「気候変動教の心臓部に短剣を突き立てようとしている」とし、「これによりアメリカ家庭の生活費を下げ、アメリカのエネルギーを解き放ち、自動車産業の雇用を国内に取り戻す」と述べた。

危惧判定の起源

危惧判定は2009年にオバマ政権によって出され、大気浄化法に基づきEPAにCO2排出を規制する権限を与えた。

当時、EPAはCO2、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄の6種類の温室効果ガスが、地球温暖化を引き起こすことで「現在および将来の世代の公衆衛生と福祉を脅かしている」と断定した。この措置は、温室効果ガスは大気浄化法の対象となる大気汚染物質であると判示した2007年の最高裁判決(マサチューセッツ州対EPA事件)を受けたものだった。

一部のアナリストは、危惧判定は大気浄化法にそぐわないものだったと指摘している。同法は本来、水銀、アスベスト、鉛、一酸化炭素といった毒性のある空中浮遊汚染物質を規制することを目的としていたからだ。対照的に温室効果ガスは、主に地球温暖化に関する「科学的証拠の重みを慎重に検討した結果」に基づいて危険であると判断された。

「法における『汚染物質』という用語は、温室効果ガスによる間接的な気候への影響ではなく、直接的な毒性被害をもたらす物質に適用されるべきだ」とスティーブンス氏は言う。「さもなければ、この法律が水蒸気やその他の自然な副産物の規制にまで及ぶという、不条理な事態になりかねない」

さらに、温室効果ガスが惑星を温暖化させる役割については、依然として議論の余地がある。

CO2連合のエグゼクティブ・ディレクター、グレッグ・ライトストーン氏はエポックタイムズに対し、「危惧判定の科学的根拠は以前信じられていたよりも弱く、2009年の制定以来、経験的データや査読済み研究、科学的進展によって否定されている」と語った。

「EPAは誤ったコンピュータモデルと疑似科学に依拠し、二酸化炭素やその他のいわゆる温室効果ガスが地球を過熱させる恐れがあると誤って主張した。同局は、太陽周期から雲、海流に至る気候ダイナミクスの複雑さや、危惧判定を覆す数十年から数百年にわたる膨大な現実世界のデータを無視している」

続くであろう法廷闘争

トランプ政権による判定撤回の決定には、2つの大きな壁が立ちはだかっている。気候変動活動家による法廷での争いと、将来の民主党政権による再度の覆しだ。

「この決定は法廷で争われることになり、そのプロセスはおそらくトランプ大統領の任期を超えて続くだろう。そうなれば、将来の政権がこの決定に異議を唱え、遅らせる機会を十分に与えることになる」とスティーブンス氏は指摘する。「短期的には、多くの産業界はリスクを軽減するために、危惧判定が維持されるという前提で行動し続ける可能性が高い」

しかし、法廷闘争が解決すれば状況は変わる可能性があると同氏は付け加えた。

化石燃料の使用削減を目指す団体「環境防衛基金(EDF)」は、EPAの決定を法廷で争うことを誓っている団体の一つだ。同基金のフレッド・クラップ会長によれば、EPAが温室効果ガスの規制を停止すれば、経済的および環境的な危機が到来するという。

「資産価値は下落し、洪水や火災の保険料は上昇するだろう。……作物の収穫量や水の供給も脅かされる」とクラップ氏は述べた。「1980年以来、米国に3兆ドル以上の損失をもたらした気候災害によって、すでに多くの人が愛する人を失い、家や事業を破壊されている。汚染が進めば、それらは激化する一方だ」

一方で、温室効果ガスが悪天候や自然災害の原因であるという説に異を唱え、CO2レベルの増加は有益であるとする見解もある。

「地球が人間活動による気候危機に陥っているという主張とは裏腹に、事実は、地球の生態系が繁栄し、人類が適度な温暖化とCO2の増加から恩恵を受けていることを示している」とライトストーン氏は言う。「森林は拡大し、砂漠は縮小し、農業生産性は向上し、干ばつは減少している」

相反する判例

過去の裁判で出されたいくつかの判断が、互いに食い違っているように見える。そのため、今回のEPAの決定が裁判で訴えられた場合、最終的にどちらが勝つのかを予想するのは非常に難しい状況だ。

トランプ政権の元EPA移行チームアドバイザーで、エネルギー・環境法研究所のシニアフェローを務めるスティーブ・ミロイ氏は、エポックタイムズへのメールで次のように述べた。「危惧判定の撤回は素晴らしいことだが、それだけでは勝負は決まらない。撤回が法廷で維持されるだけでなく、議会の明示的な許可がないにもかかわらずEPAによる温室効果ガスの規制を認めてしまった2007年のマサチューセッツ州対EPA判決が覆されなければならない」

2022年の「ウェストバージニア州対EPA事件」で、最高裁は新しいルールを示した。それは「国民の生活に大きな影響を与える大事なことは、役所(EPAなど)が勝手に決めてはいけない。必ず議会が法律でハッキリと許可したことだけをやれ」というものだ。

これは、かつての「シェブロン判決(1984年)」が認めていた「法律の解釈があいまいな時は、役所の判断を広く尊重する」というやり方を真っ向から否定し、役所の勝手な行動にブレーキをかけるものだった。

法務アナリストらによれば、近年の判決はEPAなどの機関の権限範囲を制限しているものの、温室効果ガスを有害な汚染物質と指定した「マサチューセッツ州対EPA判決」が存在する限り、気候変動活動家が危惧判定の撤回を覆す道筋は残されているという。

ミロイ氏は、「たとえトランプ政権のEPAが危惧判定の撤回に関して勝訴したとしても、マサチューセッツ州対EPA判決を覆さない限り、次の民主党政権下のEPAが単に危惧判定を再発行するだけで、トランプEPAの偉大な功績はすべて消し去られてしまうだろう」と結んだ。

経済記者、映画プロデューサー。ウォール街出身の銀行家としての経歴を持つ。2008年に、米国の住宅ローン金融システムの崩壊を描いたドキュメンタリー『We All Fall Down: The American Mortgage Crisis』の脚本・製作を担当。ESG業界を調査した最新作『影の政府(The Shadow State)』では、メインパーソナリティーを務めた。