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激変する中国 当局は道路封鎖と情報規制 中国SNSで怒りの波を呼んだ「孟村事件」とは?

夫の家庭内暴力で命を落とした妊婦 なぜ数千人もの市民が葬列に加わったのか【動画あり】

2025/09/03
更新: 2025/09/04

河北省滄州市で、妊娠中の女性・劉銘瑤(りゅう めいよう)さんが、「優秀党員」と表彰された検察院職員の夫から暴行を受け、命を奪われた。葬儀が営まれた8月29日には、面識のない数千人の市民が集まり棺を見送った。

人々が列に加わり街を埋め尽くす光景となったのは、単なる弔いではない。権力に守られた加害者が罪を逃れるのではないか、そんな不信と怒りが広がっていたからだ。現場となったのは、八極拳の発祥地として知られる河北省滄州の孟村、少数民族・回族が暮らす地域である。

 

(葬列に加わる市民たち)

 

事件はすでにネット上では連日大きな話題となり、各地で同情や抗議の声が広がっていたことから、当局は葬儀が抗議集会に発展することを強く警戒した。

そのため当局は早朝から多くの私服警察を現場に配置し、道路を封鎖して撮影を阻止。SNSに投稿された映像も次々と削除され、徹底した情報統制が敷かれた。

劉さんは8月21日夜、酒に酔った夫・金昊(きん こう)から激しい暴行を受け、翌朝搬送された時にはすでに死亡していた。当初、金家は「心筋梗塞死」との診断書を持ち出したが、劉家の要求で行われた再検査では、頭部への鈍器による打撃が死因とされ、遺体は全身に打撲があり、多くの骨折と肺の損傷まで確認された。

金は「優秀(中国共産)党員」として表彰歴のある検察院職員で、父は地方政府の役人、母は地元病院の関係者であり、一家そろって公的機関に関わる「特権層」として知られていた。

結婚直後から家庭内暴力は続いていた。死の直前、夫の金は同僚と不倫し、その妊娠を理由に離婚を迫ったが、劉さんは3歳の子供とお腹の新しい命のために拒んだ。妻が不倫相手と直接話し合ったことを知った金は逆上し、暴力を振るって彼女を死に追いやった。

 

(左)搬送される劉銘瑤さん。(右)劉さんと夫・金昊、子供と一緒の家族写真 (映像よりスクリーンショット)

 

妊娠3か月の若い母親が無残に殺された。しかも加害者は検察院に籍を置き、父は役所、母は病院という、行政と医療の両方に太い人脈を持つ家族だった。事件直後には母親が「心筋梗塞による死亡」とする虚偽の診断書を取り付け、警察の現場検証も遅らせた。その間に監視カメラ映像の消去など証拠隠しが行われたと指摘している。司法と行政の庇護を受けて真相をもみ消そうとした構図こそが、市民の怒りをさらに燃え上がらせた。

世論の声を受けて当局はようやく金と母親を拘束したものの、市民の間では「結局はうやむやに終わるのでは」との疑念が拭えない。過去にも同様の事件が繰り返され、そのたびに隠蔽が重ねられてきた。国民が注視するのは司法の公正さであり、それが守られなければ怒りはさらに広がるだろう。当局への信頼はすでに地に落ちている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!