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日米が造船で協力覚書を締結へ 中国依存脱却で連携強化

2025/10/26
更新: 2025/10/26

日米両政府は、トランプ米大統領の来日に合わせ、造船能力の拡充に関する協力覚書を締結する方向で調整を進めている。政府の強いイニシアチブと国際的な戦略連携によって、かつて世界シェア1位を占めていた日本の造船業が長い衰退期から一転、再び成長する可能性も出てきた。

覚書の枠組みとしては「日米造船作業部会」を設置し、造船所への共同投資による効率性向上、船舶の設計や部品の仕様共通化(互換性の確保と修理・部品供給での融通)、そしてAIなどの先進技術導入と人材育成の強化 を通じて、両国の造船能力を増強することに焦点を当てている。

今回の協議が順調に進めば、日本にとっても、中国への造船依存を減らすことで、近年高まっている台湾有事のリスクを低減し、アメリカ市場への進出によって産業基盤を強化し、1970年代から低迷し続けた造船市場を拡大させ、経済安全保障の確保が期待される。

日米造船協力覚書は、アメリカの造船業再生を国際連携で支えるとともに、インド太平洋における同盟の新たな基盤を築く試みとなる。

トランプ大統領は海軍力の復活を早くから提唱しており、大統領に選出された翌日の2024年11月7日には早くも尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と電話会談をし「アメリカの造船業が韓国の助けと協力を必要としている」と語っていた。

「世界最強」とされたアメリカの海軍力が揺らいでいる背景には、造船業の衰退により艦艇の建造・修理能力が著しく低下した現実がある。

遠因はレーガン大統領が造船業への連邦補助金を撤廃したことにある。これにより1983年から2013年の間に約300の造船所が閉鎖され、現在、大型商業船舶を建造できる造船所はわずか4か所に減少した。造船インフラの衰退はアメリカ海軍に深刻な影響を及ぼし、新造艦の建造が滞るだけでなく、老朽艦の修理や整備の遅れによって艦艇の稼働率が低下した。

一方、中国は2000年代初頭、当時の総理だった朱鎔基のもとで「2015年までに世界最大の造船国となる」との国家戦略を掲げ、政府主導による包括的支援を進めた。その結果、造船完工量の世界シェアは2000年の6%未満から2010年には42%にまで拡大している。

こうした圧倒的な生産能力を背景に、中国は低価格・短納期を強みに競争優位を確立し、2024年には中国の年間造船能力は、推定2325万トンに達し、アメリカの10万トン未満と比べて少なくとも232倍もの差が開いているとされ、完工量・新規受注量・保有受注量のすべてで世界一を記録した。

アメリカ海軍の優位性が揺らぐ中、トランプ政権は2025年3月、造船業の再興を国家課題に位置付けた。2025年3月、トランプ大統領は議会演説で国防産業基盤の強化を掲げ、商船と艦艇を含むアメリカ造船業の復活を宣言した。

こうした背景のもと、10月27日、トランプ大統領の来日に合わせ、日米両政府は造船協力覚書の締結に向けた最終調整に入った。今回の覚書は、海事産業への投資促進、中国の非市場的行為への対抗、同盟国との連携という多角的戦略の一環として位置付けられる。アメリカの生産能力や人材面での制約を踏まえ、同盟国との協力が不可欠との認識が共有されている。

造船は、日米関税交渉の合意に基づく5500億ドル(約80兆円)の対米投資に盛り込まれた協力分野の一つである。覚書案では、「強力かつ革新的な造船産業が、両国の経済安全保障、 強靱性、競争力に極めて重要だ」とする目的が明記されている。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます