米司法省は11月20日、先端NVIDIA製GPUを中国に不正輸出したとして、アメリカに住む4人を起訴したと発表した。起訴されたのはアメリカ籍2人と中国籍2人で、いずれもAI向けGPUの輸出規制を回避する目的で共謀したとされる。
プレスリリースによると、逮捕されたのは以下の4人だ。
- ホンニン・ホー(Hon Ning Ho/Mathew Ho)34歳、米国籍、香港出身、フロリダ州タンパ在住
- ブライアン・カーティス・レイモンド(Brian Curtis Raymond)46歳、米国籍、アラバマ州ハンツビル在住
- チャム・リー(Cham Li/Tony Li)38歳、中国籍、カリフォルニア州サンリーアンドロ在住
- ジン・チェン(Jing Chen/Harry Chen)45歳、中国籍、F-1学生ビザ保持、フロリダ州タンパ在住
ホーとチェンは19日にフロリダ州中部の連邦地裁で逮捕・初出廷し、レイモンドはアラバマ州北部地区の連邦地裁で初出廷した。リーも同日に逮捕され、翌日、カリフォルニア州北部地区の連邦地裁で出廷予定となっている。
ペーパーカンパニーで NVIDIA GPUを密輸
起訴状によると、中国は2030年までにAI分野で世界を主導することを目指しており、軍の近代化や大量破壊兵器の設計・試験、AI監視システムの整備にAI技術を活用する計画を進めている。そのため、アメリカの先端技術、とりわけNVIDIA製GPUの取得を求めてきた。米商務省は国家安全保障上の理由から、2022年10月以降、こうした技術を中国へ輸出する際の許可要件を強化している。
4人は2023年9月から2025年11月にかけて第三者の指示を受け、マレーシアやタイを経由して中国へ先端GPUを不正輸出し、アメリカの輸出管理規制に違反したとされる。ホーとリーは、フロリダ州タンパに設立した「Janford Realtor LLC」という会社を隠れみのにして、規制対象のGPUを購入し、中国へ不正に輸出していた。同社は不動産会社の名称を冠しているものの、実際の不動産取引実績は一切なかった。レイモンド被告はアラバマ州の自社電子機器会社を通じてNVIDIA GPUを供給し、違法輸出に関与したという。
起訴状は、この共謀が4件の対中輸出に関わると指摘する。最初の2件では、NVIDIA A100 GPU計400枚が2024年10月から2025年1月にかけて中国に輸出された。残る2件は捜査当局の介入により未遂に終わり、これにはNVIDIA H100 GPUを搭載したヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)製スーパーコンピュータ10台と、NVIDIA H200 GPU 50枚が含まれていた。
司法省によると、被告らはこれらの物品を中国に輸出するには許可が必要だと知りながら、許可申請を一切行わず、輸出目的地を偽って規制の回避を図った。また、計画の資金として中国側から389万ドル以上の送金を受け取っていたという。
アメリカ政府は、違法輸出の対象となったNVIDIA H200 GPU 50枚の没収を求める方針だ。
アイゼンバーグ司法次官補は「今回の起訴状は、被告らが書類を偽造し、虚偽の契約書を作成し、米当局を欺いて規制対象のNVIDIA GPUを中国へ送ろうとしたことを示している」と述べた。さらに「国家安全部門は、アメリカの重要技術をめぐる闇市場取引に断固として対処し、関与者を法の裁きにかける」と強調した。
キーオー検査も「この起訴状が示す通り、当局はアメリカの国家安全保障を守るため全力を尽くしている。捜査当局の尽力により、敏感技術を違法に輸出した被告らは司法手続きに付される」と述べた。
各被告の容疑と想定される刑罰
米司法省によると、4人がそれぞれ問われている罪名は次の通り。
ホンニン・ホー
- 輸出管理改革法違反の共謀4件
- 密輸3件
- マネーロンダリング共謀9件
ブライアン・レイモンド
- 輸出管理改革法違反の共謀2件
- 密輸1件
- マネーロンダリング7件
チャム・リー
- 輸出管理改革法違反の共謀1件
- 密輸1件
- マネーロンダリング1件
ジン・チェン
- 輸出管理改革法違反の共謀2件
- 密輸1件
- マネーロンダリング1件
各輸出管理改革法違反は最長20年の禁錮、密輸罪は最長10年、マネーロンダリング罪は最長20年の禁錮が科される可能性がある。
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