中国当局が国民に対して日本への旅行を控えるよう呼びかけるなか、中国の警察がライブ配信で「日本は危険だ」と訴えた動画が物議を醸している。
しかし、こうした政府の警告とは裏腹に、中国人の日本旅行は減っておらず、当局の宣伝は以前ほど効果を持たなくなっているとみられる。
問題の動画には、新疆ウイグル自治区のウス市(乌苏市)の公安制服を着た男女が登場し、「日本行きの航空券やホテルの予約をやめてほしい」と呼びかけていた。2人は日本旅行を「お金を払って苦労を買うようなもの」であり、「日本旅行は救助されることが前提の旅だ」とまで言い切り、「電信詐欺は中国人を狙っている」「線路で写真を撮るのは命を懸けた運試しだ」と語った。
しかし動画が公開されるや否や、中国のネット上では批判や嘲笑が相次ぎ、現在は削除されている。
ネット上では、この動画に対して現実を知る人々から皮肉と批判が相次いだ。まず多かったのは、「そもそも新疆の住民はパスポートすら持たせてもらえないのに、日本旅行の危険を説いてどうするのか」という指摘である。新疆では海外渡航が厳しく制限され、パスポートの取得や所持が事実上難しい。そのため、「日本に行くな」と訴えること自体が矛盾しているとして、多くのユーザーが嘲笑した。
次に広がったのが「警察が列挙した日本の危険は、むしろ中国国内の現実そのものだ」という批判である。電信詐欺や観光地でのぼったくり、無謀な撮影行為による事故は、中国国内で日常的に発生している。こうした背景から、動画の内容は「日本の危険」を語っているというより、「中国の日常」をそのまま読み上げているように聞こえた。
具体的なコメントは辛辣である。
「役に入り込みすぎて、新疆の人がパスポートを持てないことを忘れているようだ」
「北朝鮮が北朝鮮人に韓国へ行くなと言っているようだ」
「動画で言っている内容は全部『外国人が中国に来た時に起こること』じゃないか」
さらに、国内事情を踏まえた批判も続く。
「国内の観光地がぼったくりなのは誰でも知っている」「ロシアで襲われる、カンボジアで臓器を取られる、アフガニスタンで戦場に迷い込む……どれも日本旅行より刺激的だ」「国内で子どもが危険にさらされる事件は山ほどあるのに、親に注意喚起もない。他国の治安ばかり心配してどうする」
そして極めつけに、次のような厳しい声も見られた。「共産党の言うことは句読点一つ信用できない」
(日本旅行の危険を訴える中国警察のライブ配信動画)
こうした一連の反応は、中国当局の宣伝がほとんど説得力を失い、国民の実体験や事実と乖離していることを浮き彫りにしている。
今回の「反日本宣伝」の背景には、高市早苗首相が台湾有事について「存立危機事態になり得る」と答弁したことがあり、この発言をきっかけに日中関係の緊張が一段と高まった。
専門家は、こうした中国当局の対日姿勢はかえって逆効果になっていると指摘する。中国が日本への渡航自粛を呼びかけ、日本を強く批判すればするほど、日本国内では高市首相への支持が一層高まり、むしろ世論を結束させる結果につながっているという。

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