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于朦朧事件 中国版ティックトックで「反習反共」の声急増

検閲の「ほころび」か「罠か」 中国SNSでタブー解禁?

2025/12/10
更新: 2025/12/10

中国版TikTok「抖音」で、長年タブー扱いされてきた言葉が相次いで表示される異例の現象が起きている。

不可解な死で封じられてきた俳優「于朦朧」の名前だけでなく、「六四(天安門事件)」「趙紫陽(天安門事件で学生への強硬措置に反対し、失脚した当時の最高指導部メンバー)」といった政治的禁句までもが削除されずに残っている。

通常であれば、抖音や小紅書、微博といった中国の大手SNSは、中共の言論統制が最も厳しい場所である。ニュースの検索ワードや投稿はもちろん、一般ユーザーのコメントに至るまで、敏感な内容は「秒で削除」「即アカウント封鎖」が当たり前だった。

 

「天安門事件35周年」に際し、2024年6月4日、台湾・台北で事件の追悼集会が開催された。画像は追悼集会の様子(大紀元)

 

それがいま、突然、変わった。

ある動画のコメント欄には、数百人が一斉に「于朦朧」と書き込んだ様子が録画されていた。

数日前まで完全封鎖されていた言葉が、いまは普通に表示される事態に、ネット上には「これはいったい、どういうことだ?」「一時的な緩和なのか、それとも罠なのか」という戸惑いが広がった。

中には「最近の抖音は X 並みに言いたいことが書けるようになっている」という声すらある。

 

抖音のコメント欄に「于朦胧」の名前が連続して投稿され、削除されず表示された様子。網友からは「もう彼の名前を打てるようになったのか」と驚く声が相次いだ。2025年12月、中国。(映像よりスクリーンショット)

(以前は検閲で表示できなかった「于朦胧」の名前が、次々と投稿され表示されるようになった抖音のコメント欄)

 

以前なら即座に削除されていたはずの、習近平を名指しせずに皮肉る投稿やコメントでさえ、そのまま残る異例の状態になっている。さらに、検閲や権力にあえて挑む「衝塔(チョンター/もとはゲーム用語で、高確率でやられる無謀な突撃のこと)」と呼ばれる危険な発言までいまは検閲をすり抜けている。

この異常事態に、ユーザーの間では「いったい何が起きているのか」と戸惑いが広がり「政権内部の争いが影響しているのではないか」「いまは自由に話させておいて、後でまとめて取り締まる罠ではないか」と警戒する声も出ている。

ネット上の「妙な緩さ」に疑念が広がる一方で、現実の街頭では当局の過剰な警戒ぶりがむしろ際立っていた。

江西省南昌市では、「12月8日、八一広場に行こう」「封印制度のことを話そう」という数行の軽い投稿に当局が過剰反応し、大学の外出禁止や広場封鎖まで行った。

 

八一広場に「12月8日に集まろう」と呼びかけるSNS投稿。当局はこの数行の投稿に過剰反応し、広場封鎖を行った(姉妹メディアNTD新唐人テレビの報道番組画面)

 

実際には何も起きなかったため、ネット民からは「大反乱でも起きると早とちりしたのか」「政府だけが勝手に怯えている」と皮肉る声があがった。

今回の過剰反応について「当局は、どんな小さな兆しにも怯えるほど追い詰められている」と指摘する専門家も多い。とくに白紙運動のような、大規模な学生抗議を抑えきれなかった経験が、いまだ強いトラウマとして当局に残っているという見方だ。

また、今回のように大きな動きがない段階で大学を封鎖し、街全体を監視下に置いた対応については、当局が社会の空気の変化に過敏になっている証拠だとする分析もある。外よりも、国内で高まる不満のほうを強く警戒しているという指摘だ。

 

白紙を掲げて当局に抗議する若者、2022年11月27日、中国・北京(Kevin Frayer/Getty Images)

 

さらに、費用がかさむ強硬な「維穏(社会安定)」を長期に続けること自体が難しくなっており、ネット上でも検閲の取りこぼしが目立ち始めている。こうした「ほころび」が現実の抗議行動につながり、維穏そのものが立ち行かなくなるおそれも指摘されている。

いっぽう対外的には、中国軍機が日本のF15戦闘機にミサイル発射に使う火器管制レーダーを照射し、これが日本側の「攻撃の意思表示に等しい極めて危険な行為」との強い抗議を招いた。

 

F15(出典:防衛省総合幕僚監部 資料画像)

 

海外には強硬姿勢を示す一方で、国内のごく軽い投稿には極端に神経質に反応する。外には牙を見せ、内では影に身を縮める。

その姿を見れば、当局が何より恐れているものが何かは明らかだ。
結局のところ、その恐れの矛先は文明社会ではなく、反抗の意思を持った「自分たちの国民」である。

 

画像は1989年6月4日午前5時頃、天安門広場周辺の様子。民主化を求めて集まった学生や市民に対し、中国共産党の軍隊が武力で広場を封鎖した直後の光景である。数日間続いた抗議は多数の死傷者を出し、中国当局が最も触れたがらない事件として封じ込められている。(「天安門事件」の真相を伝えるウェブサイト「六四檔案(https://www.64memo.com/)」より)


【特報連載】于朦朧事件 第2回「地上の沈黙~国家総動員の封殺~」

「于朦朧事件」連載第2回。沈黙を強いられる地上で何が起きているのか。世界では「Justice for Alan Yu(アラン・ユーに正義を)」の声が響いている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!